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-共生社会に向けた障害者就労支援の共通基盤-

調査研究報告書 No.134
保健医療、福祉、教育分野における障害者の職業準備と就労移行等を促進する地域支援のあり方に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
春名 由一郎 (障害者職業総合センター 主任研究員) 全般
清野 絵 (障害者職業総合センター 研究員) 第3章 第2節、第4章 第2節1
野元 葵 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第3章 第2節
榎並 公平 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第3章、第4章 第2節2

研究の目的

障害や疾病があっても職業をとおして社会参加できる共生社会の理念は、保健医療、福祉、教育分野にも広がり、就労支援はこれら関係分野と共通認識をもって取り組むことが重要となっています。本研究では、このような関係機関・職種を対象とした障害者就労支援の取組と課題等に関する調査・分析を行い、これらの関係機関・職種が、なぜ、どうやって、何に取り組めばよいのかを明らかにすることを目的としました。

活用のポイントと知見

本研究では、障害者の職業準備と就労移行等を促進する支援を効果的に実施するに当たって、最も基本的な内容であるにもかかわらず、保健医療、福祉、教育分野を含む地域機関・職種の関係者の多くに共有されていない分野横断的な「障害者就労支援の共通基盤」があること、またそれは「①障害者就労支援の基本的枠組み」と「②多分野間の障害者就労支援の共通理解のポイント」の2点であることを新たに明らかにしました。今後、関係者が地域で就労支援の役割分担や連携を検討する際、これら関係者が共有できる共通目標、就労支援のポイント、それぞれの専門性を活かした具体的取組のヒントを確認するために活用していただくことが望まれます。

共通基盤①「障害者就労支援の基本的な枠組み」図について。(1)分野・機関・職種によらない効果的な障害者就労支援の基本的枠組みがあり、その下(矢印)には、(2)障害者の職業生活での課題がある。(1)の職業準備・就労移行の支援では、本人と企業・職場側の双方に対し、就職活動・採用と、職業場面での障害理解・対処の準備を総合的に行うため、就労支援機関との連携が必要である。(2)では、4つの要因がある。①地域関係機関・職種の連携による支援、?企業ニーズの把握、職場相談対応、フォローアップ、③就職後も継続する職場と本人の支援、④就職前・就職後からの職業場面を踏まえた支援である。(2)①では、就労情報提供、強み・興味の把握、就労・生活の一体的相談がある。④では、職業評価、障害理解・対処・家族支援、就職後では、自己管理支援が必要である。①から④の4つの要因を受けて(2)障害者の職業生活での課題を明らかにしている。(2)の一連の流れについては、以下の通りである。(あ)就職活動を行い、企業等に(い)採用される。その後、(う)就職後の障害管理・対処をする。(う)と同時に(え)障害理解・対処の準備が行われる。(あ)から(え)のプロセスを通して、(お)就業継続となる。
共通基盤?「多分野間の障害者就労支援の共通理解のポイント」(円と外側の図)について。円では、主に4つの因子から構成されている。(1)WHAT?、(2)HOW?、(3)WHY?、(4)共生社会に向けた就労支援である。(1)WHAT?の3要素は、ケースマネジメント、本人の対処スキル支援、本人と職場の継続支援である。(2)HOW?の6要素については、職場環境・配慮、強み・興味、予防・早期対応、多分野の統合的支援、仕事の個別性、継続的支援である。(3)WHY?に関する4要素は、人間らしい仕事、障害・疫病管理、キャリア発達、生活・経済自立である。(1)から(3)の中心には、(4)共生社会に向けた就労支援がある。外側の図は、「共生社会に向けた就労支援に必要な確認事項」である。ここでは、今後、関係者が地域等で就労支援の役割分担や連携のあり方を効果的に検討できるように、これら関係者が共有できる共通目標(Why?)、就労支援のポイント(How?)、それぞれの専門性を活かした具体的取組のヒント(What?)を、実態調査の分析を踏まえて整理している。

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