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調査研究報告書 No.188
諸外国における障害者雇用施策の現状と課題に関する研究

  • 発行年月

    2026年03月

  • キーワード

    諸外国  障害者雇用施策  障害者雇用  障害者 雇用 施策  アメリカ  イギリス  ドイツ  フランス  雇用率制度  合理的配慮  援助付き就業  助成金

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    社会政策・制度に関する状況等の把握

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
下條 今日子 (障害者職業総合センター 上席研究員) 概要、第1部、第2部第5章
武澤 友広 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1部第2章第2節・第3節、第1部第6章第3節
藤本 優 (障害者職業総合センター 研究員) 第1部第2章第2節・第3節
春名 由一郎 (Next Being ラボ 創設者) 第2部第1章第1~3節・第5節、第2部第2章(コラム除く)
清野 絵 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部 心理実験研究室長) 第2部第1章第2~4節
浜島 恭子 (明治学院大学社会学部 非常勤講師) 第2部第2章コラム
石﨑 由希子 (横浜国立大学大学院国際社会科学研究院 教授) 第2部第3章
佐々木 達也 (名古屋学院大学法学部 准教授) 第2部第3章第1~4節
永野 仁美 (上智大学法学部 教授) 第2部第4章第1~3節
小澤 真 (大阪公立大学国際基幹教育推進機構 講師) 第2部第4章

研究の目的

本調査研究は、労働政策審議会の答申を踏まえ、日本における今後の障害者雇用施策の在り方の検討を進める上で、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの4か国の就労支援の対象となる障害者、包摂的な働く場の確保、多様で個別的な支援ニーズに対応する専門支援制度・サービスなどの具体的な施策とその成果を明らかにするとともに、日本と諸外国を比較することで、日本の障害者雇用施策の特徴や成果・強みを整理することを目的としました。

概要

本調査研究では、日本と諸外国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)の障害者雇用施策について、2部構成で比較・整理しています。第1部では、障害者雇用施策の基礎的状況や雇用に関する支援の対象となる障害者、包摂的な働く場の確保などに関する諸外国の状況等を概観した上で、日本の施策の強みについて考察しています。また、第2部では、研究委員会委員の執筆により、各国毎に歴史的な変遷等も含めて詳細に整理しました。

活用のポイントと知見

  • 現状における日本と諸外国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)における障害者雇用施策の比較する場合の基礎的な資料として活用できます。
  • 歴史的な変遷等も含めた障害者雇用施策の詳細について、国毎に確認することができます。

表 比較共通枠組み
枠組み 観点
  • 雇用に関する支援の対象となる軽度から重度までの障害者
  •  障害種類・程度別の生産年齢人口
  •  障害者雇用支援の対象となる障害者の範囲
  •  重点的な雇用支援を必要とする障害者の範囲
  •  障害者の就労可能性と配慮・支援の相互作用の認識
多様な障害者が活躍できる包摂的な働く場の確保
  •  多様な働き方での障害者の就労状況
  •  障害者雇用率制度等の数値目標と雇用促進策
  •  障害者雇用の質の向上とその評価指標等
  •  障害者の雇用促進と福祉制度との連携(福祉的就労から一般就労の移行等)
多様で個別的な支援ニーズに対応できる専門支援制度・サービス
  •  障害者と事業主に対する支援の制度・サービス
  •  専門知識の蓄積を踏まえた障害者と事業主への支援
  •  医療、福祉、教育、就労等の総合的支援の実現方法
  •  職業リハビリテーションの人材育成と体制整備

諸外国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)の障害者雇用施策の変遷と特徴の概要

障害者雇用は、戦後の傷痍軍人対策から始まり、1981年の国際障害者年以降は対象が広がり、現在は精神障害への対応が共通の課題となっています。2001年にWHOが示した国際生活機能分類(ICF)により、障害は健康状態と環境の相互作用による包括的な概念へ転換し、各国はこれを踏まえ合理的配慮を基盤とした施策を進めています。

障害者の定義は国により異なり、アメリカは生活制約、イギリスは長期影響、ドイツ・フランスは社会参加への制約を重視し、日本は手帳制度を中心にしています。

働き方は一般雇用に加え、社会的雇用や福祉的就労があり、援助付き就業の普及によって一般雇用への移行が進展しています。各国では差別禁止や合理的配慮を法制度に位置づけ、納付金制度、助成金、税制優遇などにより企業負担の軽減や職場調整支援を行っています。

幅広い障害のある方々への雇用支援に係る障害概念の変遷と各国の取組

障害者権利条約は障害を社会や環境との相互作用による発展的概念と位置づけ、近年は「就業が困難だから支援する」から「活躍のために配慮が必要」とする考え方に転換しています。

そのような状況を背景に、軽度障害も合理的配慮や差別禁止の対象となり、各国では企業負担を軽減する助成制度が整備されており、アメリカは税制優遇を、イギリスは助成金による費用補填を実施しています。ドイツは障害度に応じた助成や雇用率加算、フランスは支援ニーズを踏まえた認定と福祉的就労との連携が特徴です。重度障害者には個別就労支援や賃金補填など手厚い支援が用意され、各国では医学的確認と支援ニーズ評価の組み合わせ、自己申告の促進、差別防止の仕組みが共通しています。

多様な障害のある方々が活躍できる包摂的な働く場の確保に関する諸外国の取組

欧州では障害者雇用を社会的投資と位置づけ、フランスやドイツが高い法定雇用率と納付金制度で職場の包摂を促しています。一方、アメリカやイギリスは法定雇用率を設けず、合理的配慮や雇用機会均等の確保を重視し、企業へのインセンティブや認証制度によって取組を後押ししています。

日本では雇用者数の拡大に取り組んできましたが、近年は差別禁止や合理的配慮の提供、雇用の質向上が重要になっています。各国に共通するのは、合理的配慮を生産性向上につながる低コストで実現可能な取組として普及させ、自己申告やデジタルアクセシビリティの向上を進めている点です。また、重度障害者の一般雇用促進には、福祉施策と雇用施策の連携が不可欠であり、援助付き就業が国際的に有力な支援手法となっています。

多様で個別的な支援ニーズに対応する専門支援制度やサービスの特徴

近年、障害者の就労支援は就職前の支援だけでなく、就職後も企業と本人の双方に対して合理的配慮の確保や生活・医療面の継続的支援を行う方向に進んでいます。日本では雇用率制度を軸に、納付金制度やハローワーク、地域障害者職業センターなどによる総合的支援が整備されています。諸外国では、合理的配慮を企業の責務としつつ、過重な負担を超える部分を公的助成で補う仕組みが一般的です。アメリカは障害のあるアメリカ人法(ADA)に基づく義務化とジョブ・アコモデーション・ネットワーク(JAN)による情報提供、ドイツはREHADATでの情報整理と専門家による助成判断、イギリスはアクセス・トゥ・ワーク(AtW)助成金による費用補助などが特徴です。

また、医療・福祉・教育・雇用が連携した総合支援が進み、精神障害や慢性疾患への支援でも地域資源の活用が重視されています。共通する課題は、企業負担の適正化、合理的配慮の普及、そして分野横断的な支援体制の充実です。

参考資料:イギリス障害者雇用施策の現行枠組み

調査研究報告書第2部第2章のイギリス【コラム】においては、現行の枠組みに至るまでの施策の沿革、特に雇用割当(雇用率)制度の導入と廃止、保護雇用制度の導入と「開かれた雇用」への移行、さらに障害給付過程における労働能力評価(Work Capability Assessment: WCA)の導入と廃止(予定)について概観しています。
 本資料では、その補稿として現行の枠組みを紹介いたします。なお、本稿は研究委員会委員である浜島委員にご寄稿いただいたものです。

参考資料:今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書

調査研究報告書第2部第5章(282頁)の脚注4で言及した「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」は、障害者雇用の「質」の向上や障害者雇用率制度の在り方を主な検討事項として、2024(令和6)年12月に設置され、その後、議論が進められてきました。
 本研究会の報告書は2026(令和8)年2月6日に取りまとめられ、厚生労働省のホームページで公表されています。
 なお、調査研究報告書第2部第5章(282頁)の脚注4で引用した2025(令和7)年12月24日の研究会資料の該当箇所は、上記本研究会の報告書においても変更はありません。

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