調査研究報告書 No.166
発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援の現状と課題に関する調査研究
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発行年月
2023年03月
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キーワード
発達障害学生 大学等と就労支援機関との連携 発達障害学生の就労支援 発達障害の診断がある学生 発達障害が推察される学生
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職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目
執筆者(執筆順)
執筆者 | 執筆箇所 |
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知名 青子 (障害者職業総合センター 研究員) | 序章、第1章、第3章 |
井口 修一 (障害者職業総合センター 主任研究員) | 概要、第2章、第4章、第5章 |
研究の目的
発達障害のある学生に対する就労支援においては、大学等と就労支援機関との連携の必要性が一層高まっています。本調査研究は、就労支援の必要性から発達障害の診断の有無に関わらず発達障害のある学生を広く捉え、発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援に関する実態の把握と今後の課題を検討することを目的として実施しました。
活用のポイントと知見
- 大学等及び就労支援機関を対象にした調査結果に基づき、発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援の現状と課題について検討しています。
- 発達障害のある学生の就労支援関係者にとって、発達障害のある学生への就労支援の現状と今後の課題を理解するうえでご活用いただけます。
- 大学等の調査結果から、発達障害のある学生の対応部署(障害学生支援部署及びキャリア支援部署)の状況を以下に示します。
発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援の現状と課題
大学等に対するアンケート調査及びヒアリング調査を実施するとともに、就労支援機関に対するアンケート調査及びヒアリング調査を実施することにより、発達障害のある学生に対する大学等と就労支援機関との連携による就労支援の現状と課題を検討しましたので、総合考察の概要を以下に紹介します。
(1)発達障害学生の多様な状態像に応じた就労支援の必要性
ひとくちに発達障害学生といっても、発達障害の診断の有無、障害の自己理解の状態、働くことの理解や職業準備性の状態などによって、個別性が高く極めて多様な状態像を示している。そのため、大学等では発達障害学生個々の状態に応じた効果的な就労支援を実施することが重要な課題となっている。特に、未診断の発達障害が推察される学生への対応は、さらに複雑であり就労支援の困難さが指摘されている。
(2)発達障害に配慮した就労支援の早期開始
発達障害学生の支援体制は、大学等の属性、組織、規模等により様々な状況があることが確認され、それぞれの状況に応じた就労支援の早期開始に向けて学内関係部署の連携体制を如何に整備するかが課題となっている。
(3)大学等と就労支援機関との連携の拡大
大学等と就労支援機関の連携関係をさらに拡大していくためには、大学等に発達障害学生に対する就労支援機関等の情報提供を行うことで就労支援の理解を深めること、就労支援機関の実施する支援サービスの対象を発達障害学生にも拡大していくことが期待されている。
(4)就職後の職場適応を視野に入れた効果的な就労支援の実施
大学等では在学中の就労支援が基本になるため、就職できたかどうかを重視する傾向がうかがえるが、もともと就労支援は就職するだけでなく、職場で能力を十分発揮し、安定した職業生活を送れることを目標にして実施するものである。就職後の職場適応を視野に入れた効果的な就労支援を実施するためには、発達障害学生個々の状態に応じて、大学等と就労支援機関との連携による早期からの段階的継続的な支援が必要であると考える。
また、本調査研究では、大学等や就労支援機関の関係者から、発達障害に対する就労支援の様々な取組事例や参考情報を収集することができました。こうした取組事例や参考情報を発達障害学生の就労支援関係者に分かりやすいかたちで提供するため、調査研究報告書とは別に、「発達障害のある学生の就労支援に向けて-大学等と就労支援機関との連携による支援の取組事例集-」を作成していますので、下記の「関連する研究成果物」よりご確認ください。
※発表資料は、研修に参加された方向けの補助資料として作成したものです。
※本資料のご利用にあたっては、研究企画部企画調整室へご連絡いただくとともに引用元の明記をお願いいたします。
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