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-ネットワークで活かす発達障害者就労支援-

調査研究報告書 No.135
発達障害者に係る地域の就労支援ネットワークの現状把握に関する調査研究 -発達障害者支援法施行後10年を迎えて-

  • 発行年月

    2017年03月

  • キーワード

    発達障害 就労支援ネットワーク 連携

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    関係機関の連携に関する状況等の把握

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
遠藤 雅仁 (障害者職業総合センター 統括研究員) 概要、第1章、第2章 第1節・2節、第3章、終章
望月 葉子 (障害者職業総合センター 特別研究員) 序章、第2章 第3節2・3
榎本 容子 (障害者職業総合センター 研究員) 第2章 第1節・2節(図表)・3節1
浅賀 英彦 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第3章

研究の目的

平成17年に発達障害者支援法が施行され10年余が経過したことを踏まえ、発達障害者の就労支援のための支援機関のネットワーク形成の状況を探るとともに、その課題を抽出することを目的として、全国の発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターへのアンケート調査及びヒアリング調査を実施しました。

活用のポイントと知見

<利用者の状況>
・知的障害を伴わない広汎性発達障害の利用者が特に増加しました(図1)。増加の背景として、インターネット等で情報を得て自ら発達障害の疑いを持った者、企業から発達障害が疑われて相談に来る社員やその上司の相談の増加があります。
<支援体制>
・連携できる機関がない、他機関の支援体制・ノウハウが不足しているという課題が認識されていました(図2)。ネットワーク機能が実態として手詰まりであることが把握されました。

地域の就労支援機関において、発達障害者の就労支援ネットワークの現状と課題を共有し、地域におけるより効果的な支援を考える際の資料としてご活用いただけます。

平成20年調査と27年調査で把握した、発達障害者支援センターにおける発達障害者の利用状況を障害特性別の利用者の構成比を算出し比較した図。調査間で最も大きい差が認められたのは、知的障害を伴わない広汎性発達障害者の割合であり、平成20年が33.7%に対して平成27年は41.6%であった。
平成20年調査と27年調査で把握した、障害者就業・生活支援センターにおける発達障害者の利用状況を障害特性別の利用者の構成比を算出し比較した図。調査間で最も大きい差が認められたのは、知的障害を伴わない広汎性発達障害者の割合であり、平成20年が20.8%に対して平成27年は55.0%であった。
ヒアリング調査により利用者増加の背景を調べた。首都圏の発達障害者支援センターの回答によると、センター開設当初から比べ、発達障害という言葉が普及し福祉分野に限らず、一般社会の中で浸透してきた社会的背景もあるためか「上司に発達障害かもしれないと言われた」「自分が発達障害かもしれない」と疑う未受診・未診断の就業している方(20~50代)の相談は増加傾向にある。また、本人には認識がなく、対応に苦慮していると本人に関わる周囲の方(上司や同僚、パートナー)の相談も多い。首都圏以外の地域障害者職業センターの回答によると、発達障害者支援法の施行当時は、本人、家族、社会全体でも発達障害に対する理解は十分でなく、診断医も非常に少ない時代であった。そこから10年経過して、診断できる医師が増えてきた。インターネット情報も増え、もしかしたら自分は発達障害かなとか、家族も情報収集する中で自分の子供は発達障害かもしれない、ということに気付くことが多くなっている。
知的障害のない広汎性発達障害の利用者への支援体制の課題を尋ねたところ、発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターの3機関が共通して指摘することが高かった(いずれの機関も課題として選択した割合が3割を超えていた)課題は「連携できる適当な機関がない、他機関の体制やノウハウが不足」「職場や家族など周囲の理解や協力を得ることが難しい」という課題であった。

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