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-精神疾患等による休職者のキャリア形成-

調査研究報告書 No.183
職場復帰支援におけるキャリア再形成に関する調査研究

  • 発行年月

    2026年03月

  • キーワード

    職場復帰支援 キャリア再形成 企業 支援機関 精神疾患 発達障害 高次脳機能障害             

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    キャリア形成に関する状況等の把握

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
堂井 康宏 (障害者職業総合センター 統括研究員) 概要
近藤 光徳 (障害者職業総合センター 主任研究員) 序文、第2章、第4章
浅賀 英彦 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1章
宮澤 史穂 (障害者職業総合センター 上席研究員) 第1章
知名 青子 (障害者職業総合センター 上席研究員) 第1章、第2章
八木 繁美 (障害者職業総合センター 上席研究員) 第3章

研究の目的

本調査研究は、精神疾患(発達障害による二次障害も含む)や高次脳機能障害により休職し、復職した社員に対する職場復帰支援機関(医療機関、地域障害者職業センター、リハビリテーションセンター、EAP機関)による支援体制構築に資するため、①職場復帰支援機関による支援が当該社員のキャリア形成に与える影響、②当該社員に対する企業のキャリア形成支援、③支援機関の支援や企業のキャリア形成支援に対する当該復職した社員の受け止め及び、当該復職した社員のキャリア観の変化について把握することを目的としています。

概要

精神疾患や高次脳機能障害により休職し、復職した社員に対する職場復帰支援実施機関による支援が社員のキャリア形成に与える影響や、企業・職場復帰支援実施機関の支援内容、支援に対する復職した社員の受け止めやキャリア観の変化を明らかにすることにより、障害者職業総合センター職業センターにおける支援技法の開発・改良に役立てることを目的としています。

活用のポイントと知見

  • 精神疾患や高次脳機能障害により休職し、復職した社員に対する職場復帰支援実施機関による支援が社員のキャリア形成に与える影響や、企業・職場復帰支援実施機関の支援内容、支援に対する復職した社員の受け止めやキャリア観の変化を明らかにすることにより、障害者職業総合センター職業センターにおける支援技法の開発・改良に役立てることを目的としています。
図医療機関および地域障害者職業センターによる支援のうち、利用者のキャリアの見つめ直しに影響を与えた支援についての回答結果です。医療機関では、自己洞察、症状自己管理、モチベーション、コミュニケーションの回答割合が高くなっています。地域障害者職業センターでは、キャリア支援、障害特性支援の回答割合が高くなっています。
図1 利用者のキャリアの見つめ直しに影響を与えた支援
企業におけるキャリア形成支援の取組の実施についての回答結果になります。一般社員と当該事例における復職した社員に対する実施割合をみると、実施割合の高い項目は、スキルアップ研修、定期面談・1on1ミーティング、目標管理制度など共通していますが、いずれも一般社員への実施率が復職した社員への実施率を上回っています。
図2 企業におけるキャリア形成支援の取組の実施割合(%)

職場復帰支援機関調査からの知見

「キャリアの見つめ直し」に影響を与えた支援として、医療機関においては、「自己洞察」、「症状自己管理」が高い割合で見られ、自己理解、疾病理解を進めることがキャリアの見つめ直しにつながると示唆されました。また「コミュニケーション」もキャリアの見つめ直しに影響を与えていることがわかりました。

地域センターでは、「キャリア支援」、「障害特性支援」が高い割合で挙げられました。キャリアの見つめ直しに対する、疾病理解や自己洞察を深めることの影響が示唆されました。他にも、一見、キャリアと直接関係しないように見える「基礎体力支援」が挙げられましたが、復職後の職業生活では、睡眠や食生活など生活リズムの安定が重要であり、長時間の残業等による生活リズムの乱れがメンタル不調の要因となる場合があります。キャリアを見直す上では今までの働き方(生活リズムを含む)の見直しが必要であることから、基礎体力支援が影響を与えたとして挙げられたと推測されます。

企業におけるキャリア形成の取組

・復職支援に関して

復職支援(地域センターのリワーク支援や、リハビリテーションセンターによるもの)を利用して復職した社員に対する働きかけとして実施率が高かったのは「産業保健スタッフ、管理部門、従業員所属部署等」による連携しての対応、休職に至るまでの働きかけとしての「取得可能な休職期間や休業補償、復職に関する情報(傷病手当金などの経済的な保障・休業の最長期間)等について説明、休職期間中の働きかけとしての「上司、産業保健スタッフ、人事担当者等の会社の担当者と休職期間中も定期的に接触する機会を設けた」等でした。

また、働きかけの中でも特段効果的とされたのは、休職に至るまでの期間における「産業医相談を勧める、受診を促す」こと、復職準備期間中での「ご本人にリワーク支援や復職デイケア等外部の支援の活用を勧めた」が多く挙げられました。復職後の配慮では、「上司、産業保健スタッフ、人事担当者等との定期的な話し合いの場の設定」が実施率、特段効果的とされた割合のいずれも高い結果でした。

・キャリア形成体制について

インタビュー調査に協力した全ての企業において、人材育成を図る視点で、各種研修制度や目標管理制度が整備されていました。また、一般社員と復職した社員に対するキャリア形成の仕組みに制度上の差異はなく、同様の研修制度や目標管理制度が適用されていました。

復職した社員に対するキャリア形成支援の取組としては、休職・復職に際して、人事、直属の上司、産業保健スタッフが連携し、復職前後に面談や情報共有を行っていたことが挙げられます。具体的には、健康相談室が社員と人事の間の「ワンクッション」として機能し、キャリアコンサルタント資格を持つ人事担当者が本人の考えを丁寧に聞き取り、業務への反映を図っている事例が見られました。また、復職後には定期面談やキャリアミーティングが比較的密に行われていました。企業が外部支援機関の活用としてリワーク支援を利用する目的は、休職に至った要因を整理することや自身を客観視して整理すること等を通じて、キャリアの見直しを促進することを期待してのものでした。

復職した社員のキャリア形成に対する考え

・キャリア観の変化と、その変化に影響を与えたこと

(精神疾患による休職者)

全体で9名のうち30歳代以上の8名と20歳代の1名では、キャリア観の変化の方向性と、その方向性に影響を与えたことが異なっていました。

30歳代以上の8名は、地域センターのリワーク支援の影響等により、健康や人間関係、コミュニケーションを重視する働き方や生き方、仕事での成功よりも生活の充実や心の安定を優先する考え方への変化に言及していました。具体的に影響を受けた支援内容を挙げていたのは8名中4名であり、うち、キャリア講習が3名、アサーションが2名だった。また、40歳代以上の7名は、キャリアに対する考え方について変わらない思いもあることが明らかとなりました。

20歳代の1名は、部署異動と上司の存在により、お金を稼ぐためには仕方がないというやらされ感から、仕事に関する知識や技術を身に着けたいというお金以外の価値を見出しつつありました。

(高次脳機能障害による休職者)

3名全員が病気をきっかけに自身が考えたことや家族の言葉が影響し、休職期間を経て仕事を中心とした生き方から、健康や家族を優先する価値観へと変化していました。1名はリハビリを通じて、他社の考え方や制度などを知ったことも影響を与えていました。人生における仕事の優先度が低くなった一方で、3名それぞれが会社に貢献したい、役に立ちたいという思いを語っていました。

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