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-障害者のキャリア形成支援の現状と課題を探る-

調査研究報告書 No.115
障害の多様化に応じたキャリア形成支援のあり方に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
白兼 俊貴 (障害者職業総合センター 統括研究員) 第1分冊~第3分冊(概要、総括)
森 誠一 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1分冊(序章) 第2分冊(序章、第2章、第4章) 第3分冊(序章、第1章~第4章)
若林 功 (障害者職業総合センター 研究員) 第1分冊(第1章) 第2分冊(第1章、第3章~第5章 第3分冊(第3章)
中村 梨辺果 (障害者職業総合センター 研究員) 第1分冊(第1章)
内田 典子 (障害者職業総合センター 研究員) 第1分冊(第2章~第4章) 第2分冊(第2章~第4章) 第3分冊(第3章)
下條 今日子 (障害者職業総合センター 研究員) 第2分冊(第1章、第2章、第4章) 第3分冊(第3章)
鈴木 幹子 (障害者職業総合センター 研究員) 第2分冊(第2章、第3章)
望月 葉子 (障害者職業総合センター 特別研究員) 第2分冊(第3章)
藤原 敏 (株式会社 日立製作所 人材統括本部グループ主任) 第3分冊(第1章)
小林 英夫 (株式会社JALサンライト 総務部次長) 第3分冊(第1章)
  (株式会社かんでんエルハート 業務部業務課 (社内担当部署にて作成)) 第3分冊(第1章)
石川 誠 (株式会社 いなげやウイング 管理運営部長) 第3分冊(第1章)
長谷川 浩志 (株式会社 メディアベース 専務取締役) 第3分冊(第1章、第2章)
松見 和樹 (千葉県立特別支援学校 流山高等学園 教諭) 第3分冊(第2章)
石井 和子 (医療法人社団宙麦会 ひだクリニック 就労支援部長) 第3分冊(第2章)
阿部 百合子 (長崎能力開発センター 専務理事) 第3分冊(第2章)
中田 貴晃 (キューブ・インテグレーション株式会社 パートナー) 第3分冊(第2章)

活用のポイント

企業及び福祉、保健・医療、教育、訓練等の関係機関に対して、障害者のキャリア形成を促進するための取り組みや関係機関との連携を効果的に行うための情報を提供する資料として活用が期待される。
※報告書は、「第1分冊(アンケート調査編)」、「第2分冊(ヒアリング調査編)」、「第3分冊(キャリア形成支援モデル編)」の3分冊から構成されている。

研究の目的と方法

精神障害、発達障害、高次脳機能障害等を含む多様な障害者におけるキャリア形成の現状と課題を把握し、障害者が意欲や能力に即して就労継続、能力開発、職業生活の安定を達成できるようにするための支援のあり方を検討する。

①企業及び障害のある従業員に対するアンケート調査、②障害のある従業員に対するヒアリング調査、③障害者雇用における先進的な企業及び教育、能力開発機関等でのキャリア形成支援の取り組み事例等の把握を行う。

研究の結果得られた知見

○「アンケート調査」からは、
・企業における障害のない一般従業員のキャリア形成支援活動は、①能力開発・成長促進活動(職業能・成長に関するもの)、②職務・役割調整活動(担当職務の調整に関連するもの)、③支援環境整備活動(支援・配慮に関連するもの)の3つの要素(因子)から構成されている(下表参照)。
・一方、企業における障害のある従業員のキャリア形成支援活動は、上記①の要素(能力開発・成長)に加え、本人の障害種別や受障時期等を踏まえ、②、③の要素(職務役割調整・支援環境整備)を多様に付加、組み合わせる必要がある。
企業のキャリア形成支援活動に関する3つの因子のうち「能力開発・成長」は集合教育、昇進昇格、個別教育、組織の理念・目標等の伝達、自己啓発支援、配置転換、目標管理制度という下位要素から構成されています。同様に「職務・役割調整」という因子は、職務上の役割を固定する、職務上の役割を減らす、職務上の役割を増やす、能力・適性に合わせた職務の再設計と創出、負担軽減のための降格から構成されています。「支援環境整備」という因子は、社内の相談体制、健康管理上の特別休暇、外部機関を交えた連携、柔軟な勤務形態、職場適応の推進を目的とする人材配置、入社前のインターンシップから構成されています。
○「ヒアリング調査」からは、
・障害者の受障時期や特別支援教育・職業リハビリテーション支援の活用の有無に着目すると、障害者のキャリアパターンは、①生来性の障害があり通常教育を受けてきた場合のキャリアパターン、②生来性の障害があり特別支援教育を受けてきた場合のキャリアパターン、③中途障害の場合のキャリアパターン(企業のキャリア形成支援との関係では、入社前受障と入社後受障の場合との違いが重要)の3つに整理できる。
・各キャリアパターンに共通する特徴としては、障害・疾患の管理等職業準備性の獲得・維持の必要性が高い場合は、企業の関わりとしては支援環境の提供が中心となり、障害のある従業員においては、現状維持で働くことを意識していた。一方、職業準備性がある程度確立されているほど、職務の拡大や配置転換等による能力開発が行われている事例も見られた。
○「障害者雇用における先進的企業の取り組みの特徴」としては、
・障害による社会経験の不足や受障を契機とした適応問題に対処するため、コミュニケーションスキルの向上や個別相談等の職業準備性の獲得・維持を含めた能力開発、定着支援を重視して取り組んでいる。その際、組織内に人事・労務担当とは別の第三者的位置づけとしての相談窓口の設置や障害に関する専門的人材を配した支援体制を整備することが効果的であること、更に、企業としての対応が難しい生活面や体調面の課題に対する支援としては、医療機関を含む「地域の関係機関とのネットワーク」の活用が有効であることが示唆された。
○「就労移行・職場適応の支援ツール(トータルパッケージ)の活用」については、
・障害者のキャリア形成支援のさまざまな過程において、活用可能性と効果が期待できる支援ツールであることが示唆された。

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