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-正しく読めていますか? 他者の感情-

調査研究報告書 No.136
発達障害者のコミュニケーション・スキルの特性評価に関する研究(その2)-新版F&T感情識別検査の試行に基づく検討-

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
望月 葉子 (障害者職業総合センター 特別研究員) 概要、序章、第Ⅰ部はじめに・要旨とまとめ、第Ⅱ部はじめに・要旨とまとめ、第Ⅲ部はじめに・第3章・要旨とまとめ、総括
武澤 友広 (障害者職業総合センター 研究員) 第Ⅰ部第1章・第2章・第3章、第Ⅱ部第1章
向後 礼子 (近畿大学教職教育部 准教授) 第Ⅱ部第2章・第3章、第Ⅲ部第1章
知名 青子 (障害者職業総合センター 研究員) 第Ⅲ部第2章

研究の目的

この研究は、音声や表情による曖昧な感情表現から他者の感情を読み取る際の特性を評価する検査用ソフトウェア「新版F&T感情識別検査 快‐不快評定版」の基準値を整備して完成させること、また、発達障害者の感情の読み取りに関する特性を明らかにすることを目的としています。

活用のポイントと知見

・発達障害者への検査実施とヒアリングから、①検査結果が対象者や支援者の予測と一致しない場合等があること、②対象者の職業経験やストレス体験等の情報が、検査結果の理解、コミュニケーションの課題の整理などの手がかりとなる可能性が高いこと、③表情識別の正確性の向上を目指すか、補完手動の獲得を目指すかは、評価結果を踏まえて検討する必要があることなどが明らかとなりました。
・快-不快評定版の検査得点から、音声のみの呈示では、発達障害者は定型発達者よりも不快に評定する(図1)傾向が明らかとなりました。
・この報告書及び検査の利用により、発達障害者のコミュニケーション上の課題整理やその向上に向けた取組に活用することができます(図2、3)。
定型発達者295人と発達障害者124人の快-不快評定版の検査得点を比較すると、音声のみ条件について発達障害者群が定型発達者群よりも統計的に有意に得点が低い(不快に評定した)ことがわかりました。他の条件では統計的に有意な差は認めませんでした。
図1 定型発達者と発達障害者の快-不快評定版の得点(*p<.05)
4感情評定版の検査結果のフィードバック資料では、「うれしい」「かなしい」「おこっている」「いやだなあ」の4種類のいずれかの感情を表した全32の検査刺激(つまり各感情につき8種類の刺激)に対して、被検者がどの感情を選んだかを刺激の種類を行、回答の種類を列としたクロス集計表で示します。クロス集計表は刺激の提示条件(音声のみ、表情のみ、音声+表情の3種類)別に表示します。また、条件別の正答率も表示します。
図2 4感情評定版結果(イメージ)
快‐不快評定版の検査結果のフィードバック資料では、検査得点に基づいて算出されたパーセンタイル順位を刺激の提示条件別に表示します。また、ポジティブな感情を表現している刺激に対して不快な感情を読み取った回数、反対にネガティブな感情を表現している刺激に対して快の感情を読み取った回数も表示します。
図3 快-不快評定版結果(イメージ)

令和4年度地方研究発表会資料

【テーマ】

発達障害者のコミュニケーション・スキルの特性評価に関する研究(その2)-新版F&T感情識別検査の試行に基づく検討-

※発表資料は、研修に参加された方向けの補助資料として作成したものです。
※本資料のご利用にあたっては、研究企画部企画調整室へご連絡いただくとともに引用元の明記をお願いいたします。

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