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調査研究報告書 No.39
知的障害者の非言語的コミュニケーション・スキルに関する研究─F&T感情識別検査及び感情識別訓練プログラムの開発─

執筆者(執筆順)

執筆者
向後礼子 (障害者職業総合センター 研究員)
越川房子 (早稲田大学文学部助教授)

(目的・方法)

日常生活で行うコミュニケーション活動では、言語によるものだけでなく、非言語的なチャネル(情報の送受信経路:例えば、表情・音声・姿勢・態度など)を通しての情報のやりとりも重要な役割を果たしている。特に好悪などの感情の伝達に関する限り、非言語的なコミュニケーションが果たす役割は大きい。したがって、コミュニケーションスキルの向上のためには、言語的なスキルだけでなく、非言語的なスキルをも向上させる必要がある。特に、言語的な情報の受信に困難がある知的障害者にとって、話し手が言語的な情報につけ加えて送る、あるいは単独で用いるさまざまな非言語的なメッセージを正確に読みとれることは、状況の理解を助けるという点において有効であろう。

そこで、知的障害者の非言語的なコミュニケーションの特徴を評価・検討可能な検査方法(『F&T感情識別検査』)の開発を行った。また、検査の結果、特に、表情から他者の感情を識別することが困難であることが明らかとなった者のうち、訓練可能性が示唆される者を対象として、非言語的なコミュニケーションスキルの向上を目的とした『表情識別訓練プログラム』を開発し、その効果について検討した。

(結果の概要)

第Ⅰ部

『F&T感情識別検査』の開発の経過並びに、知的障害者のコミュニケーション上の特徴についてまとめた。特に、知的障害者では、【快-不快】の感情間の混同(例えば、相手が「幸福」の感情を表現しているにも関わらず、「怒り」や「嫌悪」の感情として誤って受け取ってしまうこと、など)が、健常者の場合と比較して多く生起することが明らかとなった。

第Ⅱ部

『表情識別訓練プログラム』の開発の経過並びに、訓練プログラムを実施した効果についてまとめた。また、訓練効果が得られるための条件(20語程度の単語を記銘することができる、など)についても検討した。なお、巻末にF&T感情識別検査の実施手引き並びに表情識別訓練プログラムのマニュアルを資料として添付した。

なお、巻末にF&T感情識別検査の実施手引き並びに表情識別訓練プログラムのマニュアルを資料として添付した。

目次

  • 序論 「非言語的コミュニケーション・スキルの評価並びに訓練の必要性について
  • 第Ⅰ部 知的障害者と非言語的コミュニケーション・スキル -F&T感情識別検査の開発-
    • 第1章 F&T感情識別検査 -開発と改訂の過程-
    • 第2章 F&T感情識別検査の概要
    • 第3章 F&T感情識別検査から明らかとなった知的障害者の特性
  • 第Ⅱ部 表情識別訓練プログラム -作成の過程と訓練の効果-
    • 第1章 表情識別訓練プログラムの作成
    • 第2章 表情識別訓練プログラムの効果について(その1):障害者職業総合センターにおける試行
    • 第3章 表情識別訓練プログラムの効果について(その2):他施設における試行
    • 第4章  表情識別訓練プログラムの補説 -対象者への多様な対応のために-
  • 資料1 F&T感情識別検査実施手引き
  • 資料2 表情識別訓練マニュアル

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