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調査研究報告書 No.18
中途視覚障害者の雇用継続と支援機器等の活用

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
岡田 伸一 (障害者職業総合センター) 第1章・第7章
中村 哲夫 (東京都失明者更生館) 第2章
渡辺 文治 (神奈川県総合リハビリテーションセンター七沢ライトホーム) 第3章
北林 裕 (日本盲人職能開発センター東京ワークショップ) 第4章、第5章第1・2節
青木 成美 (宮城教育大学教育学部) 第5章第3・4節
渡辺 哲也 (障害者職業総合センター) 第6章

(概要)

「中途視覚障害者の雇用継続における支援機器等の利用に関する研究」は、視覚障害リハビリテーションの専門家を外部委員とする「視覚障害者就労支援技術研究会」を設置して、中途視覚障害者の雇用継続の問題について、就労支援機器の利用に重きを置きながら、1994年度より調査研究を進めてきた。本報告書は、同研究の最終報告であり、各委員がその専門領域について、執筆を担当している。 なお、本研究でいう「雇用継続」とは、元の職種で元の職場に復帰する場合(原職復帰)に加えて、職種や職場(勤務地)が変わった場合も含めている。また、再就職も雇用が維持され、広い意味では雇用の継続とも考えられるが、ここでは「雇用継続」には含めていない。

第1章では、首都圏の視覚障害リハビリテーション3施設の1991年度から5年間のデータと、1995年度の全国72施設のデータに基づいて、中途視覚障害者の雇用継続の状況や、生活訓練、とりわけ支援機器。ソフトの訓練の状況などについて、整理・分析している。

第2章では、中途視覚障害者に対する医療機関における眼科リハビリテーションの問題を取り上げる。ほとんど全ての中途視覚障害者が、地域の医療機関に入院あるいは受診する。これら医療機関の中には、その眼科リハビリテーションサービスの中に、歩行や点字の導入訓練、あるいは身辺管理の指導などを組み込むケースが見受けられるようになってきた。早期のリハビリテーション段階から、生活訓練の要素が取り入れられることは、中途視覚障害者のリハビリテーションのゴールの明確化や、リハビリテーションの時間短縮など、雇用継続との関わりでも、その意義は大きいと考えられる。本章では、それらの新しい取り組みの状況と、今後の課題が論じられる。今後の課題として、医療における保険点数の問題や、一般の障害観やリハビリテーション観などの問題にも言及される。

第3章では、全国の生活訓練実施72施設の状況を調査した結果である。これまで、このような調査はなく、この調査結果は、興味深いものとなっている。

生活訓練は視覚障害者が社会に参加するための前提となるものであり、必ずしも職業に結びつくことを目標とはしていない。そのため、復職や就職する際に必要なサービスを提供している施設は多くはない。しかも、担当スタッフが他の訓練と兼務であったり、地域的には偏って存在しているなど、中途視覚障害者の雇用継続を図る上からは、今後施設数の増加や体制の充実が望まれるところではある。

第4章では、雇用継続にあたっての職業能力開発(職業訓練)の現状を検討する。最終の職場復帰に向けて、視覚リハビリテーション、職業リハビリテーションとリハ過程を踏んでいくと、2年あるいはそれ以上の期間を要することも珍しくない。その結果、休職期間が切れてしまい、雇用継続が不調に終わってしまうケースもあるという。その対策として、能力開発に携わる立場からは、企業側の休職期間延長に対する柔軟な対応と、リハビリテーション機関側の行政の枠を越えた連携による効率的なサービス提供によるリハ期間の短縮が、強く望まれる。

第5章では、中途視覚障害者の就労を支援する機器・ソフトについて、聴覚、触覚、及び残存視覚(拡大)と、使用する感覚器官によって分類して、その現象や、障害特性との関連から論じられる。本章によって、一応の視覚障害者用の就労支援機器等の現状が把捉できよう。

そして、第6章では、視覚障害者のための支援機器等の研究開発動向が紹介される。中でも、情報機器の分野では、ここ数年、視覚障害者に危機感を抱かせてきたパソコンのグラフィカル・ユーザ・インタフェースに対応したスクリーンリーダーを中心に述べられる。また、近年研究および開発が盛んな視覚障害者用位置案内システムとナビゲーションシステムについても概説される。

目次

  • 概要
  • 第1章 雇用継続の重要性
  • 第2章 中途視覚障害者の眼科リハビリテーションの現状と課題
  • 第3章 中途視覚障害者の生活訓練の現状と課題
  • 第4章 中途視覚障害者の職業能力開発(職業訓練)の現状と課題
  • 第5章 視覚障害者の支援機器の現状と課題
  • 第6章 視覚障害者の支援機器の研究開発動向
  • 第7章 結語
  • 資料

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