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-高次脳機能障害者の支援の現状と働き方の実態-

調査研究報告書 No.129
高次脳機能障害者の働き方の現状と今後の支援のあり方に関する研究Ⅱ

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
田谷 勝夫 (障害者職業総合センター 特別研究員) 第1章、第3章2節、第4章、第5章
土屋 知子 (障害者職業総合センター 研究員) 第3章2節
緒方 淳 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第2章

活用のポイント

高次脳機能障害者の支援に関係する様々な機関(医療、福祉、就労)への実態調査により就労支援の現状を明らかにした。また支援機関を利用した後に就労が可能となった高次脳機能障害者の“働き方”や“配慮事項”を整理した。高次脳機能障害支援普及事業の進展が職業リハに及ぼした影響を、リハ医療機関と地域障害者職業センターの両者への調査により明らかにし、今後の支援のあり方について提言した。高次脳機能障害者の支援に関係する支援者が就労支援を行う際に活用が期待される。

研究の目的と方法

目的

医療・福祉・就労支援機関における高次脳機能障害者支援の現状を把握するとともに、働き方の実態を明らかにし、今後の支援のあり方について検討することを目的とする。

方法

その1(調査研究報告書No.121)で行った4つの調査(①地域障害者職業センター利用実態調査、②就労移行支援事業所利用実態調査、③家族会所属の本人の働き方の実態調査、④高次脳機能障害に特化した支援施設ヒアリング調査)に加え、その2では3つの調査(⑤障害者就業・生活支援センター利用実態調査、⑥医療機関における高次脳機能障害者支援実態調査、⑦地域障害者職業センターと医療機関との連携に関する調査)を実施した。

研究の結果得られた知見

(1)支援の現状

医療から就労支援までの切れ目のない一貫した支援を行うに際し、各種調査のエビデンスを総合すると、リハ医療機関においては「評価・訓練」まではほぼ対応が可能となったが、独自の「就労支援」には限界がみられる。これを補うための就労支援機関との連携は、“支援拠点機関”は73.0%が連携支援を行っているが、“一般のリハ医療機関”では23.7%と少ない。福祉機関(ここでは就労移行支援事業所)においては、「受け入れ」実績のある施設が35.9%と少ないが、一部の先進的な施設(就労継続支援B型施設等)において、多数の高次脳機能障害者を受け入れ就労支援を含む先進的な支援への取り組みもみられる。就労支援機関(障害者就業・生活支援センターと地域障害者職業センター)では、利用後就労可能者が6割以上(ジョブコーチ支援では9割)と支援策のノウハウの蓄積が窺える。

(2)働き方

職務内容は「清掃・洗浄・洗車」「データ入力」「仕分け・伝票整理」など、簡易な作業が主であり、作業遂行上の問題として「手順の定着」「作業・入力ミス」「作業速度」「指示の理解」「コミュニケーション」「感情コントロール」などがあるため、『指示の出し方(視覚的提示、手順書、見取り図の作成など)』『メモの活用』『スケジュール管理』『業務内容の調整』『チェックリスト作成』『こまめな休憩』などで対応している。

(3)今後の支援のあり方

医療リハ終了後の受け皿として、生活リハ領域における支援を充足させるとともに、リハ医療機関と福祉機関や就労支援機関との連携支援の進展・強化の促進が望まれる。

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