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-視覚障害者の事務系職種での職域拡大-

調査研究報告書 No.116
視覚障害者の事務系職種での企業内における職域拡大の取り組みに関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
野中 由彦 (障害者職業総合センター 主任研究員) 序章、第2章
指田 忠司 (障害者職業総合センター 研究員) 第1章、第2章、第4章
杉田 史子 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第3章

活用のポイント

IT技術の革新や支援機器の発展、職業訓練や助成金の充実により、視覚障害者が事務系職種で働く可能性が高まっている。本研究では、事務系職種で働く視覚障害者の事例を、国内及び海外から収集・整理するとともに、事例検討をとおして、視覚障害者が企業で事務系職種に就職し、雇用を継続するための条件を提示。パンフレット『視覚障害者の事務系職種での職域拡大のために』とともに、視覚障害者の雇用に取り組む企業、支援機関等において活用が期待される。

研究の目的と方法

目的

支援機器の発展や支援制度の整備など、視覚障害者雇用を巡る国内外の状況変化を踏まえつつ、事務系職種での企業内における職域拡大の取り組みの課題を明らかにし、視覚障害者の雇用機会の拡大をさらに進める上での課題について検討。

方法

・支援機器の発展、就職支援の状況等について、関連情報を収集、分析。
・視覚障害者の事務系職種での就労状況について10事例のヒアリングを実施、分析。
・イギリス、オーストラリアの支援制度と事例情報を収集、分析。

研究の結果得られた知見

① 支援機器の開発と新たな技術の応用が進み、画面読み上げソフトなどについても複数のオプションが認められる。
② 企業内では、電子メール、電子文書のやりとりが主流になってきたことから、視覚障害者が担当可能な業務が増加した。
③ メルマガ、ホームページのコンテンツ作成業務は、一部他者による支援も必要であるが、視覚障害者は各種支援機器を活用して効率よく業務遂行可能。
④ インターネットを活用した情報収集業務は、視覚障害者にも十分遂行可能で、在宅雇用で雇用機会を提供する方策として重要。
⑤ 効率よく業務を遂行するには、タイピングの他、各種ソフトの使い方など、事務処理に関する基本的な技能習得が重要。
⑥ 企業連携訓練、ジョブコーチの活用などが、新たな取り組みとして注目される。後者については、ハローワークや障害者職業センターとの連携を通じて、事務系職種での職域拡大に寄与する事例の蓄積が見られる。 イギリス、オーストラリアの事例をみると、両国ともさまざまな取り組みを行っているが、支援機器など障害補償機器に関する能力の重視が共通している。
⑦ 今後、職域拡大を進める上で、以下のような取り組みが必要。
・資格試験のアクセシビリティの改善について、障害者の権利保障の観点からの検討が必要。
・視覚障害者の支援機器の活用について、技能向上を目指す個別研修に対する企業による支援が必要。
・組織改編等の変化、障害の重度化や健康状態の悪化などの変化に対しては、柔軟な対応とともに、医療、福祉機関と連携した取り組みが必要。

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