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-医療機関との連携支援の現状と課題-

調査研究報告書 No.104
失語症のある高次脳機能障害者に対する就労支援のあり方に関する基礎的研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
田谷 勝夫 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1章、2章、5章
青林 唯 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第3章、4章

活用のポイント

本研究では、医療と連携して失語症者の就労支援を行うに際し、①情報共有のための基礎知識を整理し、②医療機関・就労支援機関調査を通して、失語症者支援の現状と課題を把握するとともに、それぞれの機関が相手側に求める情報や役割などを明らかにした。両機関が連携支援を行う際の資料としての活用が期待される。

研究の目的と方法

失語症者の社会復帰に関し、医療機関等が実施した調査研究により、本人の特性(年齢、原因疾患、失語症のタイプと重症度、身体機能、知的能力など)や医療機関での言語訓練(訓練開始時期、訓練期間等)との関連を検討したものは散見されるが、就労支援機関との連携に言及した調査研究は少ない。

本研究では、就労支援機関(地域障害者職業センター)と医療機関(病院、リハセンター等)の両者を対象に、アンケート調査およびヒアリング調査により各機関における失語症者の就労支援の現状と課題を把握するとともに、両機関の連携のあり方を検討のための意識調査を実施することを目的とする。

研究の結果得られた知見

医療機関単独利用の失語症者の復職率は2~3割程度(現職復帰は1割程度)であり、失語症者の復職が難しく、また、受傷前の職業を同じレベルで維持することが非常に困難であるが、「職場との折衝」「職リハ機関への橋渡し」「職業前訓練」など就労支援への取り組みを行っている医療機関は1割以下と極めて少ない。一方、就労支援機関(総合センター職業センター)利用後の失語症者の復職率は約6割で、医療機関単独支援の約2倍となっていることから、医療機関と就労支援機関の連携支援の重要性が示唆されるが、就労支援機関と連携した支援を行っている医療機関は3割程度にとどまっているのが現状である。

支援内容に関しては、地域センター利用の失語症者のうち、ジョブコーチ支援利用者の9割強が就労可能であったのに対し、ジョブコーチ支援利用なし者では就労可能者が3割弱にとどまることから、ジョブコーチ支援が失語症者の就労支援に効果的であることが示された。

就労継続(職場定着)に重要視される要因として、就労支援機関からは「本人の就労意欲」「企業・職場の理解促進」「企業・事業所の取り組み」「ジョブコーチ支援・職場内での支援」等が、医療機関からは「本人の意欲」「失語症の重症度」「企業の取り組み」等があげられ、就労支援機関、医療機関ともに『本人の意欲』『企業の取り組み』が重視されている。連携支援の観点からも就労支援機関の事業所に対する直接的支援が重要となる。

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