精神障害のある社員に対する企業在籍型ジョブコーチの支援
データの読み方・考え方
- ここでご紹介するのは、2019年に障害者職業総合センターが実施した『企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)による支援の効果及び支援事例に関する調査研究(調査研究報告書No.152)』の一部です。
- 調査では、企業在籍型ジョブコーチ(※脚注1)の養成研修を2013~2017年度に修了した社員が在籍する事業所に対して調査協力を打診し、協力可能だった355社へ調査票を送付し、570人(248社)の企業在籍型ジョブコーチから有効回答がありました。
- この調査において、企業在籍型ジョブコーチ570人に「ジョブコーチ支援をしたことのある障害者の障害の種類は何ですか」と問い、「視覚障害」、「聴覚・言語障害」、「視覚・聴覚以外の身体障害」、「知的障害」、「精神障害」、「発達障害」、「難病に起因する障害」、「高次脳機能障害」、「その他の障害」からあてはまるもの全てに回答を求めたところ、350人(570人の61.4%)が「精神障害」を選択しました。
- 図1と図2は、これらの350人の企業在籍型ジョブコーチに対し、「精神障害者に対して実施した支援の内容」と「精神障害者以外に対して実施した支援内容」の支援頻度を尋ね、「多い」と回答した者の割合です。


- 障害者社員への支援のうち「職務遂行」以外の支援内容では、精神障害者に対する支援頻度が高いと回答した企業在籍型ジョブコーチの人数が、精神障害者以外に対するそれより多い傾向がみられました。(図1)
- 支援頻度が高いと答えた企業在籍型ジョブコーチの人数が最も多かったのは、精神障害者については「人間関係・職場内コミュニケーション」、精神障害者以外については「職務遂行(作業手順・正確性・意欲・態度等)」でした。(図1)
- また、精神障害者に関する調整業務の頻度が高いと回答した企業在籍型ジョブコーチの人数も、精神障害者以外に関するそれと比べ、多い傾向がみられました。(図2)
障害者雇用への示唆
- ジョブコーチ支援に関する調査は、この調査研究のほかにも多く実施されています。今回は、精神障害者に対する、企業在籍型ジョブコーチによる支援内容に焦点を当て、人間関係・職場内コミュニケーションの支援の重要性を示唆する調査結果をご紹介しました。
2008年 7~10月 の間に就労継続支援A型事業所又は福祉工場以外の企業にハローワークの紹介で就職した精神障害者の職場定着状況を、3年後の2012年 の4月時点で追跡調査した先行研究の結果によると、ジョブコーチ支援(※脚注2)を受けた場合の方が、受けていない場合よりも、有意に多くの精神障害者が在職していました( 障害者職業総合センター調査研究報告書№117 )。- 今後、障害の重度化や多様化に対応し、円滑な職場定着を進めていくためには、企業在籍型ジョブコーチと配置型や訪問型のジョブコーチ、その他の専門職・専門機関等との連携が必須になると考えられます。
※脚注
※1 企業在籍型ジョブコーチ
本調査では、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構又は厚生労働大臣が指定した研修機関(調査当時は5機関)において実施する、企業在籍型ジョブコーチ養成研修の全課程を修了した上で、調査対象事業所に配置されている社員を企業在籍型ジョブコーチと呼んでいます。
ジョブコーチ(職場適応援助者)には企業在籍型ジョブコーチのほか、障害者の就労支援を行う社会福祉法人等に所属し、支援先の企業に出向いて活動する訪問型ジョブコーチや、地域障害者職業センターの職員である配置型ジョブコーチがあります。また、自治体の条例等に基づくジョブコーチ支援が実施されている地域があります。
※2 ジョブコーチ支援
ここでは、企業在籍型ジョブコーチ等、障害者の雇用の促進等に関する法律の規定に基づく職場適応援助者によるジョブコーチ支援のほか、自治体等が独自に実施しているジョブコーチ支援までを広く含んでいます。
調査結果の引用元
- 障害者職業総合センター調査研究報告書No.152 企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)による支援の効果及び支援事例に関する調査研究
- 44ページ 図2-33 精神障害者に実施している支援内容
- 45ページ 図2-34 精神障害者以外に実施している支援内容
※調査研究報告書№152では、頻度の程度を「高い」「低い」ではなく「多い」「少ない」と表記しています。