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-精神障害者の職場定着状況と職場定着支援の方策について-

調査研究報告書 No.117
精神障害者の職場定着及び支援の状況に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
相澤 欽一 (障害者職業総合センター 主任研究員
(現福島障害者職業センター 所長))
概要、序文、第1章、第2章、第3章
加賀 信寛 (障害者職業総合センター 主任研究員) 概要、序文、第4章、おわりに
武澤 友広 (障害者職業総合センター 研究員) 第1章、第2章、第3章、第4章
大石 甲 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第1章、第2章、第3章、第4章

活用のポイント

ハローワーク等就労支援機関及び精神科医療機関支援担当者、受け入れ先企業雇用管理担当者が、精神障害者の職場定着支援に関する具体的な方策や留意事項等を確認する際の基礎資料として活用できる。

研究の目的と方法

目的

精神障害者の職場定着要因及びハローワーク障害者窓口からの紹介就職要因を明らかにする。

方法

全国のハローワークに対し、障害者窓口から紹介就職した精神障害者の職場定着状況及び障害者窓口に新規求職登録した精神障害者の紹介就職状況等を把握・分析するためのアンケート調査を実施した。また、精神障害者に対する職場定着支援の具体的な方策について把握・分析するため、3年以上職場定着している精神障害者と、その就労支援担当者、雇用先企業の雇用管理担当者に対してヒアリング調査を実施した。

研究の結果得られた知見

(量的研究)

① 紹介就職した精神障害者の職場定着状況
ハローワーク障害者窓口から紹介就職した精神障害者の職場定着状況は下図の通りであった。
定着3か月未満が341件(38.7%)、定着3か月以上1年未満が141件(16.0%)、定着1年以上3年未満が90件(10.2%)、定着3年以上が165件(18.7%)、離職時期不明が48件(5.4%)、在職離職不明が98件(10.9%)
② 紹介就職した精神障害者の職場定着要因
「適切なマッチングやフォローアップがある程度行われていること」(「適応指導」の変数)、「企業側の配慮がある程度あること」(「求人種類」の変数)などと定着との関連が見いだされが、調査対象のうち、7割が就職後に「適応指導」を受けておらず、また3割が「一般求人障害非開示」で就職していた。
③ 求職登録した精神障害者の就職等に関連する要因
窓口紹介の要因分析では、「窓口相談回数」「ハローワーク職員の職場開拓」「精神障害者保健福祉手帳の所持」等がハローワーク障害者窓口での求人紹介に関連していた。窓口就職の要因分析では、「ハローワーク職員の面接同行」「ハローワーク職員の職場開拓」が窓口紹介就職に関連していたが、いずれも1割未満の実施に留まっていた。窓口以外就職の要因分析では、「窓口紹介」を受ける以前に窓口以外就職をしており、「手帳なし」の者はハローワーク以外のルートでも求職活動を行うことが多いと推測された。

(質的研究)

分析対象事例(3年以上職場定着)に共通する職場定着要因を以下の6点に集約した。
① 定着者に対し、後遺障害及び残遺症状のセルフマネジメントスキルの習得支援がなされていること。
② 無理をさせない雇用管理方針を継続させている企業が少なくないこと。
③ 定着者の現状維持志向の労働観を雇用管理の基本方針として承認している企業が少なくないこと。
④ 中長期的なキャリアアップを指向する企業においては、職場定着プロセスにおいて紆余曲折のエピソードに直面する機会が多く、これらの課題に企業担当者が丁寧に対処していること。
⑤ 定着者に対するポジティブフィードバックが実践されていること。
⑥ 職務とのマッチングを図るため、就労支援担当者と企業担当者が定着者の職務適応過程に関する情報交換を、特に就職後の初期段階において集中的に行っていること。

本研究によって得られた知見は、精神障害者の就労問題に関する従来知見を追認するものではあるが、精神障害者の職場定着を促進していくための基本的要件について分析的な整理ができた。

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