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-非定型うつで休業する若年者の復職を進める-

資料シリーズ No.90
非メランコリー親和型の気分障害を有する若年者の休業と復職支援の動向に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
石川 球子 (障害者職業総合センター 特別研究員) 第1章~第2章
野中 由彦 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第3章

活用のポイント

近年、非メランコリー親和型気分障害により休業する若年者が急増していると言われる。この研究では、こうした若年者の休業と復職支援の動向について、文献調査とともに、専門家および企業を対象に復職支援の取組みに係るヒアリングを実施した結果をまとめた。うつ状態を呈した若年者向けの復職支援プログラムを展開しようとする支援機関や、雇用継続および復職支援に取り組む企業において活用されることが期待される。

研究の目的と方法

目的

この研究では、うつ病等と診断されていながら従来型うつ病の概念が当てはまらない休職者等の状態像を整理し、職場適応上の課題と効果的な支援方法や企業側の対応状況について具体的な事例情報を収集することとした。

方法

文献調査、専門家ヒアリングおよび企業ヒアリングを行った。専門家ヒアリングでは、6機関7名の専門家を招聘して行った。企業ヒアリングでは、延べ25社を対象に行い、掲載承諾を得られた15社の取組みをまとめた。

研究の結果得られた知見

数年前から20代から30代の若年者の間で、従来型のうつ病(メランコリー親和型)とは異なった病状のうつ病が増加しており、こうしたうつ病は医療や労働の場面で従来のうつ病とは異なった対応を必要とする。うつ病による外来利用は精神障害者外来利用総数中最多である。また15歳から44歳の女性の第1位疾患はうつ病であり、非定型うつ病は若い女性に多い。さらに15歳~34歳の若者の死因のトップが自殺であるという深刻な現状にも直面している。

こうしたうつ病を有する若年労働者に対する理解の推進と各分野の専門機関の連携による若年発症のうつ病に特化した支援の充実が、労働、医療、教育の分野で急務である。将来を担う若者が貴重な労働力として活躍し続けられるには、職業リハビリテーション機関と事業主、家族、各関係機関との連携によるこうしたうつ病に特化した2次予防(主としてラインケア)と3次予防(休職・復職支援、再発の予防等)の推進が重要である。こうした予防のための利用者、事業主、家族への支援の詳細を非定型うつ病、不安障害等の併存症を伴う場合、双極性Ⅱ型や適応障害との関連を中心に第1章にまとめた。

さらに、こうしたうつ病像の変化に対応すべく効果のみられた1)女性に特化した支援方法、2)レジリエンスを引き出し復職へと導く模擬的会社と心と体に働きかける療法、3)休職中の外来利用者の復職と再発をくり返し引きこもりがちな利用者への支援方法、4)入院を必要とした人への中集団と個別による復職支援方法、5)若者のアンビバレントな気持ちに働きかける動機づけ面接法について第2章にまとめた。

また、企業では、病気の呼称についても、対応法についても未だ混乱している状況が見られた。第一にルールに則った労務管理上の対応をすることは共通していたが、それにとどまらず、それぞれの企業で、予防のための取組み、社内教育の見直し、リワーク等の活用等、職場復帰に向けたさまざまな工夫が為されていた。こうした企業の、うつ病を有する若年者の復職に向けた取組みおよび外部機関への期待等について、第3章にまとめた。

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