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-就労の困難さの正しい理解と共有-

資料シリーズ No.81
就労の困難さの判断の精度を高めるための連携についての調査研究

執筆者(執筆順)

執筆者
野中 由彦 (障害者職業総合センター 主任研究員)

活用のポイント

精神障害者・発達障害者・高次脳機能障害者の「目に見えない障害」を有する者の就労支援では、就労の困難さの判断の精度が重要である。長期にわたる職業生活上の相当の制限を正しく理解し、その理解を関係者の間で共有し、障害者の安定した職業生活につなげていくためには、どのような就労の困難さの判断が必要か、また、連携はどのようにすればよいかが問われる。この研究では、先駆的な支援機関、地域障害者職業センターではどのような工夫をしているかヒアリングした結果をまとめた。精神障害者・発達障害者・高次脳機能障害者の就労支援に不慣れな支援機関や企業において活用されることが期待される。

研究の目的と方法

精神障害者・発達障害者・高次脳機能障害者の就職支援に際して、就労の困難さを精度高く判断している先進的な事例を幅広く収集することにより、障害者の就労の困難さの判断の精度を高め、障害者の就職促進に資することを目的とした。専門家ヒアリング、支援機関ヒアリング、地域障害者職業センターヒアリングを実施した。

研究の結果得られた知見

精神障害者・発達障害者・高次脳機能障害者の就労の困難さは、面談だけではわからない部分が多い。就労の困難さは、さまざまな活動を通して、特に働く場面を通して表れる。したがって、精度の高い就労の困難さの判断のためには、さまざまな作業等をしたり、実際に企業等で働いてみたりする機会を作ることが重要である。さらには、企業等で働き始めて、ある程度の期間が経過してから、予想できなかった就労の困難さが表れることがあることに注意しなければならない。

また、1人の人に見えているのは、利用者の一面でしかなく、役割の異なるほかの支援者等には別の側面が見えているものであることをよく理解し、単独で就労の困難さを判断ことなく、合議によって、必ず複数の人の判断を確認し合成していくことが必須である。また、 就労の困難さの判断に、企業が加わることが必要であり課題である。働き続ける中で表出する就労の困難さに対応できるように、企業をいかに支援できるかが課題である。

就労支援における連携には、実際問題として、2つの段階がある。一つは、お互いの機能やノウハウ等を知り合う段階であり、もう一つは、具体的に支援を展開する段階であるが、2つとも欠かせないものである。

現実問題として、直接の就労支援においては、意思疎通の取れた者同士での実効性のある連携が必要である。それには、十分に知識を共有し、互いの機関の支援の進め方等を理解していて、ラポールが取れている状況を作ることが必要である。特に精神障害者・発達障害者・高次脳機能障害者を支援する場合には、言い方一つで理解がずれてしまうことも珍しくない状況もあるので、混乱を避けるためにも、連携は濃密な連携を取って進めることが必要である。

就労の困難さに係る情報の共有と管理もまた重要な課題である。支援者は、本人、企業の不利益にならないよう利用者に係る情報を管理する責任がある。

2014年6月に配付した上記資料シリーズの印刷物の目次ページに誤りがありました。お手数ですが目次につきましては下記の目次修正版を印刷してご利用ください。

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