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-障害者雇用に当たって事業主の提供する合理的配慮の実態-

資料シリーズ No.78
事業所における障害者雇用に関する配慮や支援の状況

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
苅部 隆 (障害者職業総合センター 特別研究員) 概要、第1章、第2章
廣田 久美子 (宮崎産業経営大学法学部 専任講師) 第3章
永野 仁美 (上智大学法学部 准教授) 第4章
中島 克彦 (障害者職業総合センター 研究協力員) 調査結果の集計・分析、巻末資料
佐久間 直人 (障害者職業総合センター 研究協力員) 調査結果の集計・分析

活用のポイント

本書は、障害者を雇用するに当たって、我が国の事業主が提供しているさまざまな配慮や支援の実態をアンケート調査を通じて明らかにするとともに、雇用率制度を持つドイツ及びフランスにおいて、「合理的配慮」に関する施策がどのように運用されているのかを紹介している。巻末資料には、付属統計表、自由記述回答、障害者差別解消法、改正障害者雇用促進法、障害者権利条約、EC雇用均等一般枠組み指令を掲載。

研究の目的と方法

障害者権利条約の批准に伴う国内法制の整備が進められ、改正障害者雇用促進法において差別の禁止及び障害者が働くに当たっての支障を改善するための措置(いわゆる合理的配慮)を講ずることが事業主の義務となったが、現在施行に向けて合理的配慮に関する指針の検討が進められている。こうした背景から、企業における障害者雇用に当たって提供されている配慮の実態把握及び分析を行うとともに、雇用率制度を持つドイツとフランスにおける合理的配慮に関する施策の動向を取りまとめ、検討のための基礎資料を整備することを目的として研究を実施した。

方法としては、アンケート調査を行って事業主の提供している各種の配慮の実態を明らかにするとともに、ドイツとフランスの労働法制に詳しい研究者から、合理的配慮及び障害者雇用施策、判例等の最新動向について聴き取りを行って内容を整理した。

研究の結果得られた知見

調査対象企業のうち障害者を雇用する企業の割合は89.0%と、3年前の調査での85.2%に比べて障害者雇用が進んでいるが、特に大きく増加したのは精神障害者雇用企業で19.8%から31.4%になっている。精神障害者の雇用促進のための法改正や制度の充実強化が効果を上げたとみられる。

事業主の提供している配慮には、①障害者募集・採用時の対応、②雇用管理に関する配慮、③職場環境の整備、の3領域があるが、①については、企業規模が大きくなるほど障害を考慮した対応の実施率が高かった。②については、職務に直結する業務遂行上の配慮と健康に関わる福利厚生上の配慮が障害の種類にかかわらず実施率が高く、規模別に見ると、①と同様大規模企業での実施率が高かった。③については、特に肢体不自由者を対象とする整備が進んでおり、前者同様大規模企業での実施率が高かった。また、全ての配慮、整備について、特例子会社では高い実施率であった。

ドイツとフランスは両国とも我が国と同じ障害者雇用率制度を維持しつつ、EC指令や障害者権利条約の要請に対応するための法制化を進める中で、雇用における障害者の均等待遇を促進するために、各種助成措置や事業主向けの手引作成等合理的配慮に関する施策を推進している。

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