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-障害者就労支援に関する都道府県別雇用、福祉、医療等の統計データを収集-

資料シリーズ No.77
地域の障害者就労支援の実態に関する調査研究 -都道府県単位の指標を中心として-

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
鴇田 陽子 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1章~第3章
東明 貴久子 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第1章~第2章

活用のポイント

障害者就労支援に関する都道府県単位による統計データを収集し、地域別に障害者就労支援の実態を把握できる資料を作成した。さらに特定の側面で他県の参考となる実績をあげている5都県(長野県、福岡県、東京都、岡山県、岩手県)の詳細統計データを収集するとともにヒアリング調査を実施し、障害者就労支援における具体的な連携状況を把握した。統計データとしての活用及び就労支援ネットワークの具体例を参照する資料として活用が期待される。

研究の目的と方法

地域の就労支援機関の体制や就労支援の状況、連携の在り方等については、地域差が大きいという意見があるが、調査・研究としてデータに基づいた全国的な分析はなされていない。そこで、本研究では全国の雇用、福祉、医療等の統計データを収集・整理するとともに、厚生労働省において取りまとめられた「地域の就労支援の在り方に関する研究会」報告書の提言を踏まえ、5都県について詳細統計データの収集並びにヒアリング調査を行うことにより、今後の就労支援体制の整備を検討するための基礎資料を提供することを目的とした。

研究の結果得られた知見

都道府県別に社会資源、障害者雇用状況、ハローワークにおける職業紹介状況、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等就労支援機関の状況、福祉機関の状況、職業能力開発機関の状況、医療機関の状況、自立支援協議会の開催状況等の統計データを収集・整理した。

また、社会資源や就労支援機関の実績はその都道府県に在住する障害者に対して、どの程度充実しているものであるか比較、分析できるよう障害者千人対比の数値を算出し、全国順位を付した資料を作成した。その上でこれを基に障害者の雇用状況と就労支援に関わる7つの機関の活用実績を対比して捉えられる資料を作成した。

これによると、障害者の実雇用率またはハローワークの就職率が高い12県のうち10県では1つ以上の項目で就労支援機関の活用実績が全国10位以内にあり、中間順位(全国23位)まで広げれば、過半の項目で中間順位以内となっていた。

さらに、地域の就労支援の実態を把握するため、5都県を選定し、県別に詳細統計データを収集するとともにヒアリング調査を実施した。5都県は、「地域の就労支援の在り方に関する研究会」報告書の提言を踏まえ、中小企業における障害者雇用が進んでいる県(長野県)、地域障害者職業センターにおける助言・援助の実績が高い県(福岡県)、特別支援学校卒業生の就職率が高い県(東京都)、精神障害者の雇用実績等が高い県(岡山県)、全国バランスを考慮し東北地域において障害者雇用の実績及び就労支援機関の活用実績が高い県(岩手県)を選定した。ヒアリング調査は1県につき、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターの3箇所を基本とし、東京都については特別支援学校を加え4箇所とした。連携状況の取りまとめについては、対象機関が位置する障害保健福祉圏域の状況としてまとめた。

5都県は選定指標が異なっており、また県のなかでも具体的な連携状況は障害保健福祉圏域ごとに異なるものであるが、企業が障害者の訓練状況を見学できる機会を地域の社会資源にあわせて提供している(長野県、東京都)、企業ごとにニーズを把握し個別具体的な提案を行っている(長野県、東京都)、就労支援を担う人材育成が多様である(福岡県、東京都)、地域の労働市場や医療機関等のニーズを的確に把握し、ニーズに沿った新しい取り組みを工夫している(東京都、岡山県)、地域の関係機関が役割を明確にして連携している(長野県、岩手県)、関係機関において情報を共有し障害者一人一人を見守る体制を構築している(岩手県)などの特徴的な取り組みがみられた。

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