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-手帳を所持しない障害者の雇用の実態と支援機関における支援の実態-

資料シリーズ No.75
手帳を所持しない障害者の雇用支援に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
根本 友之 (障害者職業総合センター 主任研究員) 概要、第1章第1節、第2章(第3節15を除く)、第3章、第4章
相澤 欽一 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1章第2節及び第3節
下條 今日子 (障害者職業総合センター 研究員) 第2章第3節15

活用のポイント

本研究は、障害者雇用促進法上の身体・知的・精神障害者に該当せず、障害者手帳(以下「手帳」という。)を所持しない発達障害者・難治性疾患患者・高次脳機能障害者等の事業所における雇用の実態と支援機関における支援の実態を調査したものであり、手帳を所持しない障害者の雇用の実態及び手帳を所持しない障害者に対する支援の実態を把握するための基礎資料となるものである。

研究の目的と方法

手帳を所持しない発達障害者・難治性疾患患者・高次脳機能障害者等の事業所における雇用の実態と支援機関における支援の実態を把握することを目的とした。

そのため、手帳を所持しない障害者を対象とした「発達障害者雇用開発助成金(発開金)」及び「難治性疾患患者雇用開発助成金(難開金)」の対象者を雇い入れた事業所及び、手帳を所持しない障害者をジョブコーチ支援を利用して雇用した事業所に対して、雇用継続・職場定着のために配慮している事項等の雇用の実態に関するアンケート調査を実施した。また、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、発達障害者支援センター、難病相談・支援センターの各支援機関に対して、手帳を取得していない理由の認識、支援における苦慮の状況等、雇用支援の実態に関するアンケート調査を実施した。

研究の結果得られた知見

1 事業所調査の結果から

  • 雇用継続・職場定着のための配慮として、障害や症状について事業所内での情報共有が多く実施されていた。
  • 回答数が最も多かった難開金対象者雇用事業所においては、対象者本人に限定して特別な配慮を講じているケースは少なかった。 雇用を継続している事業所が76.8%と多かったことから、従業員全体に対して実施している雇用管理の配慮を対象者本人に対しても適用 することで、難開金対象者本人への配慮も可能となり、雇用の継続につながっていることが示唆された。
  • 雇入れにあたって、障害・疾患についての詳細な情報が欲しいとの意見がみられた。 

2 支援機関調査の結果から

  • 全ての調査対象障害種別に共通して、各支援機関が手帳所持者に比べて支援に苦慮していた点は、企業による障害特性の理解や企 業への採用の働きかけといった支援であった。
  • 支援にあたって、手帳を所持しないことにより特に必要となる専門性について尋ねたところ、障害者雇用率制度に頼らず企業に採 用を促すためのノウハウが必要との回答があった。

1、2より、手帳を所持しない障害者の雇用支援にあたって、支援機関としては、障害特性に関する知識を身につけ、事業所に対して障害の 内容や配慮すべき点を的確に伝え、採用を働きかけるノウハウを工夫することが必要であり、そのことが事業所の求める支援にも応えられること につながると考えられる。

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