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-医療・生活・就労支援の統合への現状と課題-

資料シリーズ No.71
医療機関における精神障害者の就労支援の実態についての調査研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
春名 由一郎 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1章~第5章
東明 貴久子 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第2章
清水 和代 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第3章

活用のポイント

本研究では、国内外の文献レビュー及びわが国の医療機関における医療、生活支援、就労支援の取り組みの実態調査結果から、精神障害者の効果的な就労支援の条件を明確にした。医療機関において就労支援に取り組む様々な専門職、就労支援機関において医療機関と連携する支援者等にとって有益な、わが国における医療・生活・就労を統合的に支えていくための具体的な取組のヒントとしても活用されたい。

研究の目的と方法

精精神障害のある人の就労支援のためには、医療・生活支援との密接な連携により就労と疾患管理の両立を支えることが必要である。精神障害のある人の就労と生活、疾患管理等を、社会全体でより効果的に支えるためのあり方を検討するため、近年、医療機関において活発に実施されている精神障害者の医療・生活・就労支援の取組の実態を明らかにすることを本研究の目的とした。

そのために、医療機関による就労支援に関する国内外の文献調査、また、わが国の精神科医療機関等を対象とした全国アンケート調査及びヒアリング調査を実施した。それらの結果を踏まえて精神障害のある人の就労支援における医療機関等の役割や労働関係機関との連携等について、有識者の議論をまとめた。

研究の結果得られた知見

文献レビューにより、精神障害のある人が就職し就業継続するための効果的な支援のあり方として、知的障害者等では効果的な、就職前から就職後まで個別的かつ継続的に支える就労支援だけでは十分な成果が上がっておらず、より医療・生活支援と密接に統合された就労支援が不可欠であることが明らかとなった。

全国調査により、わが国の精神科医療機関等において、精神保健福祉士、医師、作業療法士等が、デイケア等の医療や生活支援と併せて、様々な就労支援を日常的に実施している現状が把握された。それらの機関においては、自機関独自あるいは外部機関との連携により、就職前から就職活動、就職後の継続支援まで幅広い支援の実施がみられ、また、就労支援の実施がない機関も、それらの支援は患者のためには必要であると認識していることも明らかとなった。医療・生活支援の取組との密接な連携促進の取組も、これら就労支援実施機関では行われていた。また、労働側の雇用支援制度については、活用状況はまだ低いものの、認知は比較的多く、今後活用したいという意向が大きかった。就労支援の実施状況にかかわらず、精神障害者の就職前から就職後の様々な課題について、未解決な課題が多いとする医療機関が多かったが、様々な就労支援、疾患自己管理支援、生活支援、家族支援、さらに、医療・生活支援と就労支援の連携促進の取組が多いほど、課題解決可能と考えられている場合が多いことも明らかとなった。これらの結果に基づき、研究委員会にて、従来の医療と福祉、福祉と労働という連携体制ではなく、精神障害者の就労支援にはより医療と労働の密接な連携を可能とする仕組みが必要であることを提言した。

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