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-心の病の多様化と重複障害に対応する事業主支援-

資料シリーズ No.66
職場における心の病の多様化と事業主支援に関する研究 

執筆者(執筆順)

執筆者
石川 球子 (障害者職業総合センター 主任研究員)

活用のポイント

近年、とりわけ若年層及び働き盛りの勤労者について、職場における心の病の多様化と重複障害が問題となっている。こうした中、障害をもつ従業員の復職や障害者の新規採用等で事業主が直面している課題と就労支援者による事業主支援ニーズに変化がみられる。本書は、こうした職場における変化に対応しつつ、事業主支援を推進する就労支援者が活用できるようにまとめた。

研究の目的と方法

目的

・職場における心の病の多様化と障害の重複の現状と就労支援者・事業主が直面する課題の把握
・心の病の多様化と重複障害に対応する障害別支援方法の分析
・就労支援者に求められる事業主支援の考察

方法

・若年層及び働き盛りの勤労者の職場における心の病の多様化と重複化の現状と課題を従業員のキャリア形成等の側面から分析するための文献調査  
・支援方法(障害別)に関する文献調査  
・地域障害者職業センターの心の病に関する事業主支援実践事例調査  
・地域障害者職業センターと連携した企業における総合的な心の健康づくり推進に関する聞き取り調査

研究の結果得られた知見

1.職場における心の病の多様化と障害の重複に関する現状と課題

産業精神保健の領域では、社会的要請の変化に伴い、専門職に求められる役割の変化が急速である。職場における心の病の多様化及び重複障害の発生が増加する中、とりわけ将来を担う若年勤労者、働き盛りの勤労者が、近年における厳しい環境の中で、受障後も、継続してキャリアを積み上げられる対策の構築が必要となる。このため、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」による総合的な心の健康づくりを職業リハビリテーションと産業精神保健の専門職が協働し、事業主と連携して推進することが急務である。

2.職場における支援ニーズの変化

若年勤労者や働き盛りの30歳代から40歳代の患者数の増加、職場における多様な「抑うつ状態」、職場不適応症の増加、産業構造の変化による旧来とは異なるうつ病の発症状況、重複する障害や発達障害の二次障害への対応が必要となる。さらに、職業性ストレス予防、長時間労働の予防のためのディーセント・ワーキングタイム、ワーク・ライフバランス支援等を含めた支援ニーズの変化を第1章にまとめた。

3.多様化する障害と重複障害に対応する支援方法

支援(対応)方法は、障害別に異なることから、的確な診断と早期発見、個別の支援が必要となる。障害別の支援方法の詳細を気分障害、適応障害、不安障害、境界性人格障害、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、発達障害、摂食障害、アルコール依存症、解離性障害を主に採り上げ第2章に、重複障害及び二次障害については第3章にまとめた。

4.地域障害者職業センターによる障害の多様化と重複障害に対応する事業主支援の推進

地域障害者職業センターの期間を限定した、目標指向のリワーク支援及びジョブコーチ支援では事業主支援を推進している。障害の多様化、重複障害に対応する事業主支援として、医療や事業主との連携をとりながらの支援を特に必要とするうつ病を伴う重複障害、強迫神経症を伴う重複障害、双極性障害をもつ若年勤労者、発達障害の二次障害に関する実践例とその成功要因についても第4章にまとめた。

5.地域障害者職業センターとの連携による企業における心の健康づくりの推進

発病及び受障の時期から、労働者が職場から切り離されることなく、就業の継続を果たすには、受障した勤労者が同じ事業主のもとで同じ仕事に復帰することが困難である場合等も含め、職業リハビリテーション機関との連携がとりわけ重要となる。第5章では、こうした企業の実践例についてまとめた。

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