(ここから、本文です。)
-離職した気分障害者に対する再就職支援の現状を初めて調査しました-

資料シリーズ No.63
気分障害を有する者への雇用促進・雇用継続支援技法に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
内田 典子 (障害者職業総合センター 研究員) 概要、第1章~第3章、終章
中村 梨辺果 (障害者職業総合センター 研究員) 第2章~第3章、終章

活用のポイント

気分障害によって離職した求職者(以下「離職者」という。)と、求職して職場復帰を希望する者に対する地域障害者職業センター(以下「地域センター」という。)や関係機関における支援状況等について、両者を対比して分析したものであり、支援機関における基礎資料として活用できるものである。

研究の目的と方法

本研究は、離職者に対して、地域センターが行っている支援の実態を把握すると共に、リワーク支援における休職者(以下「リワーク支援利用者」という。)のデータや関係機関での支援状況について把握し、これらを比較検討することによって、離職者に対する効果的な雇用促進と雇用後の職場定着にかかる継続支援の方策の検討に資することを目的とした。

【方法1】地域センターを対象に、離職者及びリワーク支援利用者に対する支援状況について、アンケート調査及びヒアリング調査を実施する。
【方法2】離職者に対する再就職支援を実施している関係機関に対するヒアリング調査を実施する。

研究の結果得られた知見

1.地域センターにおける支援の状況

①離職者とリワーク支援利用者のプロフィールは、疾病・障害等、様々な面で異なっていた。  
②離職者のうち、再就職した者に対する支援は、多様な職業リハビリテーションサービスを組み合わせ、手厚い支援内容であり、調査時点で求職活動中や他機関利用の者とは支援内容が異なっていた。  
③離職者支援の困難性には、“支援機関・支援スタッフの不足”、“発達障害等他の障害・疾病との併存(または可能性)”、“支援の長期化”、“継続支援に至らないこと”等がある。  
④離職者の再就職を可能とする条件として、“働く意欲や目的を持っていること”、“現実的な求人選択ができる程度に自己理解が深まっていること”が重要であることが示唆された。

2.関係機関における離職者の支援状況

①利用者の特徴として、「働くこと」等の理解や「人間関係のとり方」に関する未熟性が見られる。  
②再就職支援プログラムのうち、離職者と復職を希望している休職者を分けて実施することが望ましい内容と、合同で行うことが可能な内容に区別し、柔軟なプログラム運営を行っていた。

3.成果と今後の課題

①本研究の成果:地域センターと関係機関を比較すると、利用者像の違いがあること、支援プログラムの考え方に有効な示唆が得られたこと、求職活動のあり方は共通していたことが挙げられる。  
②今後の課題:ⓐ離職者自身、関係機関の支援者共に「気分障害者にもリハビリテーションが必要」といった意識改革が求められる、ⓑ地域センターでは、発達障害を合併している利用者が多いため、スタッフ間の知識・支援ノウハウの共有が必要である、ⓒ「働くとは何か?社会とは何か?」等、就労のための基本的な心構えも踏まえた新たな心理教育プログラムが必要と考えられる。

ダウンロード

全文

冊子在庫

あり