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-アセスメントツール開発プロセスの検討-

資料シリーズ No.104
職業リハビリテーションのアセスメントにおける現代テスト理論の応用可能性に関する基礎的研究

  • 発行年月

    2022年03月

  • キーワード

    現代テスト理論 項目反応理論 アセスメントツール ツール開発 ワークサンプル幕張版 MWS 社内郵便物仕分

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    評価/支援ツールの開発

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
知名 青子 (障害者職業総合センター 研究員) 概要、序章、第1章、第2章第3節、第3章第1節~第2節、おわりに
國東 菜美野 (元障害者職業総合センター 研究員) 第2章第1節~第2節
清水 求 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第2章第2節、第3章第1節、巻末資料

研究の目的

職業リハビリテーションサービス対象者の状態像の多様化に伴い、障害特性や職業的な課題を的確・効率的に捉えることのできるアセスメントツールの開発が期待されています。

本調査研究では、アセスメントツールに関する現状の課題を把握し、将来、ツール開発を行う際に検討すべき事項を提示しました。また、テスト理論のアセスメントツール開発への応用可能性を検討するため、ワークサンプル幕張版の新規課題である『MWS社内郵便物仕分』を参考に探索的なデータシミュレーション及び解析を行い、テスト理論の応用の方法を提案しました。

活用のポイントと知見

  • 支援現場でアセスメントツールを開発・利用する際の留意事項について参考としていただけます。
  • 数式を用いず、数学的な知識があまりなくてもテスト理論を理解できるようわかりやすく解説しています。
  • テスト理論をツール開発にどのように応用するかの参考となります。

【テスト理論(項目反応理論)の応用可能性の検討に向けた探索的分析】

(1)模擬データの作成

本研究では、職業リハビリテーションの分野で用いられるアセスメントツールにおいて、項目反応理論をどのように利用できるか検討するため、ワークサンプル幕張版『社内郵便物仕分(簡易版)』を参考として、項目反応理論を実施したプロセスを提示しています。

現在、『社内郵便物仕分(簡易版)』に関して公開されている利用可能なデータは、記述統計(正答数、作業時間、年齢(各男女別)に関する平均値及び標準偏差)と一般参考値(年代ごとの平均正答率、平均作業時間のパーセンタイル順位)のみです。これらのデータでは項目反応理論が実施できないため、新たに模擬データを作成することで項目反応理論の実施を実現させることとしました。

図1は、模擬データ生成までのシミュレーションの手続をチャートで示しています。図の左半分は先行研究で行われたプロセス(母集団からサンプルとして生データが得られ、その生データから一般参考値を作成)を示しています。右半分は一般参考値に基づいて実施されたシミュレーションのプロセスを示しています。シミュレーションは、一般参考値から仮想母集団を生成し、その仮想母集団からランダムサンプリングされたサンプルに対して、正誤の補完情報を加え、模擬データを作成することで完結しています。本研究においては、この後、模擬データを項目反応理論に適用しました。

図1 シミュレーションの概要

(2)項目反応理論を用いた模擬データの分析

模擬データを用いて困難度と識別力を想定する2PLMによる項目反応理論を実施しました。図2のうち、左側には、『社内郵便物仕分(簡易版)』における20試行についての項目特性曲線を示しています。グラフの横軸は能力値(-4から4)、縦軸は各問に正答する確率(0から1)をそれぞれ示しています。項目特性曲線の形は、問題の特性を表しており、その問題に正答する確率が受験者によってどのように変わるかを読み取ることができます。グラフでは、20試行の曲線の位置はばらついており、グラフの左側に位置する曲線ほど困難度は低く、易しい問題であることを意味します。逆に、グラフの右に位置するほど困難度は高くなり難しい問題であることを意味しています。多くの項目において、横軸の-2付近に曲線の正答確率0.5の位置が集中していることがわかります。

また、図2の右側の曲線グラフの図は、『社内郵便物仕分(簡易版)』の20項目全体のテスト情報量曲線を示しており、テスト全体の推定の精度を表しています。横軸は能力(-4から4)、縦軸は情報量(0から6)をそれぞれ示しています。テスト情報量曲線は、横軸-2付近、縦軸4.5付近を頂点とした山型となっています。つまり、『社内郵便物仕分(簡易版)』の20試行は受験者の能力が-2であるかどうかを判別することに優れた課題であることが読み取れます。

図2 MWS『社内郵便物仕分(簡易版)』の模擬データを用いた項目反応理論(2PLM)による分析結果
※ 本書はダウンロード版のみであり、印刷物の配布は行っておりません。

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