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-発達障害者の事例化と職業性ストレス-

資料シリーズ No.100
就業経験のある発達障害者の職業上のストレスに関する研究 -職場不適応の発生過程と背景要因の検討-

  • 発行年月

    2018年04月

  • キーワード

    発達障害 職場不適応 職業ストレス

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    障害特性/課題の把握

執筆者(執筆順)

執筆者
知名 青子 (障害者職業総合センター 研究員)

研究の目的

近年、発達障害者の成人例の多くは一般の雇用環境下で職場不適応・メンタルヘルス不全となって事例化されています。本研究では文献整理と医療機関へのヒアリング調査を通して、発達障害診断における問題や当事者の職場ストレスを整理し、対象者理解のための枠組みを検討しました。職業リハビリテーションの専門支援における発達障害者の理解と支援の検討に役立つ資料を提供します。

活用のポイントと知見

  • 発達障害者支援法施行時点以降に診断体制整備は緊急性を指摘されたが未だに十分ではなく、確定診断が用意ではない問題が指摘されている中、発達障害は診断名でさえ診断機関や診断時期によって異なる現状があり、他の精神疾患を合併している、他の精神疾患として診断される場合があります。
  • 発達障害者においては障害特性がストレス脆弱性を高めていることが指摘されています。職場における発達障害者のストレスを検討する上では、障害特性を適切に評価することが重要であり、精神疾患を併存する場合にはその独特な現れ方や各併存症が複雑に影響しあう可能性について適切に評価することが必須です。
  • 職業性ストレスモデルで示される職場のストレッサー等の影響要因について、発達障害特性を持つ者においては、ストレス源への認識が健常者と質的に異なる可能性があるため、個別の事例について詳細な分析を要します(図参照)。
職業性ストレスが発生するプロセス図。個人が疾病に至った状態を結果とした上で、その原因となる職場のストレッサー、個人的要因、その他の外的要因の相互作用と、中間的状態である急性の反応、結果としての疾病という流れを図示している。
(1 )職場のストレス要因として、物理的環境、役割葛藤、曖昧さ、対人葛藤、仕事の将来の曖昧さ、仕事のコントロール、雇用機会、量的労働負荷、労働負荷の変動、人々への責任、技能の低活用、認知的要求、交代制勤務がある。
(2 )個人的要因として、年齢、性別、婚姻の状況、雇用保障、肩書、性格、自尊心がある。
その他外的要因として、(3 )仕事外の要因として、家族、家庭からの要求がある。
続いて、その他の外的要因として(4 )緩衝要因として、上司や同僚、家族からの社会的支援がある。
(5 )急性の反応として、仕事への不満や抑うつなどの心理的反応、身体的自覚症状などの生理的反応、事故、薬物使用、病気欠勤などの行動化が起こる。
(6 )疾病として仕事に関連する心身の障害や、医師の診断による問題が起こる。

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