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調査研究報告書 No.55
多様な発達障害を有する者への職場適応及び就業支援技法に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者
刎田 文記 (障害者職業総合センター研究員)
須田 香織 (障害者職業総合センター職業センター職業カウンセラー)
戸田 ルナ (障害者職業総合センター研究員)

(目的・方法)

本研究では、職業リハビリテーションにおける指導・支援の方向性として、個々人のセルフマネージメント能力の向上を基軸として捉え、この能力の発達を効果的に促進する指導・支援のあり方について検討した。また、これらの検討に基づき、①さまざまな発達障害を有する者達への効果的な指導・支援技法について整理すると共に、②指導・支援の効果を明確に評価する方法を明らかにすることを目的とした。

(結果の概要)

本報告書は、「第Ⅰ部 セルフマネージメントスキルをめぐる考察」と「第Ⅱ部 セルフマネージメントスキルの向上に向けた支援の実際」の2部構成となっている。

第Ⅰ部

職業リハビリテーションにおけるセルフマネージメントについて、セルフマネージメントスキルの基礎となる理論的背景やその発展の過程に関する考察を行った。また、本研究で得られた結果を整理し、「セルフマネージメント・トレーニング・マトリックス」による系統的な指導・支援技法とセルフマネージメント能力の向上にむけた職業リハビリテーションサービスのあり方、必要性、応用可能性について提案した。

第Ⅱ部

職業リハビリテーション・サービスの様々な場面で、セルフマネージメント・トレーニング・マトリックスに基づくセルフマネージメント・スキルの向上のための指導・支援を行った事例をまとめ、各段階でセルフマネージメント・トレーニング・マトリックスの活用について検討した。第1章では、セルフマネージメント・トレーニング・マトリックスを活用し、複数の作業種目を有する高度な職業準備訓練を構造化し、その中で個々の対象者の個別的課題に対し、セルフマネージメント訓練と併せて個別的な指導を行った経過と結果についてまとめた。第2章では、セルフマネージメント・トレーニング・マトリックスを基礎とした指導方法を、地域障害者職業センターへも応用できること、その訓練結果と継続的に行われる職業リハビリテーションサービスとの関係性について検討した。第3章では、職業準備訓練からジョブコーチ支援への移行過程で、セルフマネージメント・トレーニングの成果と般化と、職業リハビリテーション・サービスの効果的な連携のあり方について検討した。第4章では、職域開発援助事業における指導経過をセルフマネージメント・トレーニング・マトリックスの視点から分析し、指導の質的な変化からJob Coach支援におけるセルフマネージメント支援のあり方や、Natural Supportへの移行について検討した。

本研究の結果、職業リハビリテーション・サービスによって、障害者の職業的自立を促進するためには「セルフマネージメント・スキル」の発展という視点を持って「セルフマネージメント・トレーニング・マトリックス」を活用し、様々な指導・支援技法を組み合わせていくことが可能であること、また、様々な場面で行った指導・支援の効果は、従属変数として定義した行動を数量化すること等により、継続的に把握することが質的な分析を行いうることも示唆された。

目次

  • 概要
  • 序章
  • 第Ⅰ部 セルフマネージメント・スキルをめぐる考察
    • 第1章 職業リハビリテーションにおけるセルフマネージメント
    • 第2章 セルフマネージメント・スキルの向上支援と職場定着サポート
  • 第Ⅱ部 セルフマネージメント・スキルの向上に向けた支援の実際
    • 第1章 多様な訓練コースにおける試行・・・タイムトライアルとセルフモニタリング
    • 第2章 多様な障害を念頭においた試行・・・作業課題の再構成とセルフマネージメント訓練
    • 第3章 帰趨からみた支援の効果・・・職業準備訓練からジョブコーチへの効果的移行
    • 第4章 職場が求めるセルフマネージメントレベルと支援効果・・・職場開発援助事業におけるセルフマネージメント

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