調査研究報告書 No.22
知的障害者の職業的生活技能の評価法開発に関する研究
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発行年月
1998年03月
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職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目
執筆者(執筆順)
執筆者 |
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石川球子 (障害者職業総合センター 研究員) |
(概要)
1.研究目的
知的障害者の就労及び職場定着にとって、職場の人間関係を円滑に保つことが重要であると国内外の多くの研究で指摘されている。そこで、本研究では、職場の人間関係についての評価法を開発することを目的とした。
開発にあたって、近年の職業評価の領域での多様な変化及び知的障害者の雇用促進のための評価ツールとしてのニーズを検討した。その結果、人間関係発達の評価に、職場におけるソーシャルスキルズ(以下、職業的生活技能という。)を「他者との関わりの場面」で測定する形式を加味した職場の人間関係についての質問票を開発することとした。
このような目的で本研究において、「職場の人間関係の質問票とユーザーガイド(知的障害者個別援助用)」(以下、質問票という。)を開発し、身体障害者を主な対象とした従来の職場内の物理的改造、整備による配慮に加え、障害者の人間関係面に対する配慮にウエイトを置くことによって、知的障害のある利用者にとって、よりバリアフリーな就労を目指した援助を計画することを目指した。
さらに、質問票による評価結果に基づいて個人別に援助内容のターゲットをしぼった段階で、援助を行うためのツールとしての「職場の人間関係のワークブック(知的障害者個別援助用)」(以下、ワークブックという)」を併せて開発することを目的とした。
2.開発の方法
(1)質問票の候補項目の作成のための予備調査
質問票の候補項目作成の過程で、次のような予備調査を行なった。予備調査の過程では、Goldfriedら(1969)の行動分析モデル(注)を参考にした。
- イ.予備調査1 就労や作業場面で問題となる、職業的生活技能などに関して、特に、援助が必要である点について通勤寮、授産施設、養護学校を対象に調査し、質問項目作成の資料とした。
- ロ.予備調査2 就労や作業場面で問題となる、職業的生活技能などに関して、特に、援助が必要である点について地域障害者職業センターを対象に調査し、項目作成の資料とした。
- ハ.予備調査3 できるだけ知的障害者の職業生活から抽出されたもので評価法の質問の選択肢を作成するために、職場での人間関係の重要な場面で、各自がとると思われる行動について、知的障害者からの記述式回答を得、項目作成の資料とした。
(2)質問票の作成と事業所調査
イ.質問票の作成、内容の決定
質問項目を作成するにあたり、雇用サービスの窓口を訪れる知的障害者の就労状況、職業的経験、人間関係の発達などについての個人差に配慮する必要がある。そこで、地域で就労する場合の「基礎的なことがら」を評価する「基礎評価編」と「一般就労」で特に強調されていることがらを評価する「フォローアップ評価編」の2部で質問票を構成することとし、予備調査1から予備調査3までを資料とし、各々の質問票の項目の候補を作成した。
ロ.事業所での聞き取り調査
質問票の項目の候補について;1その内容が、実際に事業所で重要であるかどうか;2事業所の管理者が好ましいとする選択肢がどれかについての聞き取り調査を行った。
(3)項目分析と項目の選択
予備調査の過程を経て作成した候補項目について項目分析を行い、質問票の項目を最終的に選択するために327名の利用者を対象に予備テストを実施した。この結果にもとずき、項目の尺度化及び最終項目の選択を行った。
3.結果及び信頼性
妥当性の検討 質問票は、「基礎評価編」と「フォローアップ評価編」の2部で構成される結果となった。「基礎評価編」は、地域で就労する場合の人間関係についての「基礎的なことがらについての意識」を「フォローアップ評価編」は、「一般就労」で特に強調されていることがらについての意識」を確認評価するためのものとなった。これら「基礎評価編」と「フォローアップ評価編」の双方について、信頼性の検討、妥当性の検討を行い、結果をまとめ、質問票を完成した。
質問票の他に、援助ツールとして「職場の人間関係のワークブック」も合わせて開発し、その効果について検証した。ワークブックは、各スキルについて、利用者の理解を深めてもらうために言語面の補助も兼ね、絵による説明を主体として構成した。「基礎評価編」による評価の後に、このワークブックを利用して援助を行い、「フォローアップ評価編」で最終的な評価を行うように構成した。また、これらツールの活用法について考察し、援助者のための手引きとなるようにまとめた。
- 注 : 評価法開発のための行動分析モデル : 評価法開発を次の様な手続きで行うモデルである;
- ① 職場で中・軽度の知的障害者が経験する問題場面、特に対人的な物を中心に分析する;
- ② 知的障害者からこれらの問題場面について対応の仕方を聞き、選択肢に取り入れる;
- ③ 作成された項目について職場の管理者から意見を聞く;
- ④ これらを参考に評価法を開発する;
- ⑤ 開発された評価法の評価を行う(Bullisら、1986)
目次
- 第1章 開発のための理論的検討
- 第2章 評価法の開発方法
- 第3章 質問票の実施結果と考察
- 第4章 具体的活用方法
- 第5章 ワークブックを活用した援助
- 第6章 まとめ及び今後の課題
- 文献
- 資料編
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