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-オンライン支援の現状と効果的な実施方法-

調査研究報告書 No.174
オンラインによる就労支援サービスの提供に関する調査研究

  • 発行年月

    2024年03月

  • キーワード

    オンラインによる就労支援 障害者の就労支援 オンライン支援 オンライン相談 オンラインアセスメント 支援実施上の課題 支援実施上の工夫 支援実施上の配慮事項 Web会議システム

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    就労支援に関する状況等の把握

    支援方法の把握/紹介

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
髙木 啓太  (障害者職業総合センター 上席研究員) 概要、第1章、第4章
中山 奈緒子 (障害者職業総合センター 研究員) 概要、第2章第1節~第4節、巻末資料
布施 薫   (障害者職業総合センター 研究協力員) 第2章第3節、巻末資料
秋場 美紀子 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第3章

研究の目的

本調査研究は、就労支援機関におけるオンラインによる就労支援の現状、支援の実施に当たって必要な配慮事項や条件整備、支援実施上の課題等を把握して、今後のオンラインによる就労支援のあり方や効果的な実施方法等の検討に資することを目的に実施しました。

活用のポイントと知見

・本報告書では、就労支援機関へのアンケート調査やヒアリング調査の結果として、オンラインによる就労支援の実施に当たって必要な配慮事項や条件整備等について整理しました。

・アンケート調査を行ったことによって明らかになった、オンラインによる就労支援の現状を紹介しています。

・ヒアリング調査を行ったことによって明らかになった、支援実施上の課題や工夫などを紹介しています。

・オンラインによる就労支援を行う就労支援機関の方々にご活用いただけます。

オンライン支援を実施する際の工夫についてのグラフ。障害者就業・生活支援センター、自治体単独の障害者就労支援センター、就労定着支援事業所、地域若者サポートステーションそれぞれに対し、オンライン支援の際に実施している工夫について回答を求めたものです。いずれの種別の就労支援機関も「事前に通信テストを行った」、「話す際の声のトーンやスピードに留意した」の選択率が50%を超えています。
(図1) オンライン支援を実施する際の工夫【複数回答】

調査研究の方法

2022年10月に、障害者就業・生活支援センター、自治体単独の障害者就労支援センター、就労定着支援事業所、地域若者サポートステーション(合計2,008所)を対象に、調査対象事業におけるオンラインによる就労支援の現状、支援の実施に当たって必要な配慮事項や条件整備、支援実施上の課題等を把握するためアンケート調査を実施しました。
 また、2023年2月中旬から5月中旬にかけて、アンケート調査で「ヒアリング可」と回答のあった事業所のうちオンライン支援を積極的に行っているなど特徴的な取組が見られた15事業所を対象としたヒアリング調査を実施しました。

調査結果より

(1)オンライン支援の実施状況

アンケート調査の有効回答数は807件、有効回答率は全体で40.3%でした。調査時点(2022年10月)では、回答のあった約5~8割の事業所が利用者(障害者本人)に対して、障害者就業・生活支援センターと自治体単独の障害者就労支援センターの約6割、就労定着支援事業所の約3割が利用者と企業の両方に対してオンライン支援を実施しており、多くの事業所がオンライン支援に取り組んでいました。
 オンライン支援の実施率は支援内容及び利用者の障害種別によって異なっており、支援内容では「定着支援(本人との面談)」や「支援機関同士の打ち合わせ、会議」での実施率が高く、「標準化された作業を伴う検査」や「場面設定法などによる行動観察」の実施率は低い状況が見られました。また、障害種別では全体的に精神障害のある利用者へのオンライン支援実施率が高く、支援内容によって実施率の差はあるものの、知的障害や発達障害のある利用者に対しても一定数行われていました。

(2)オンライン支援のメリット

オンライン支援には移動負担の軽減、日程調整のしやすさ、利用者の心理的負担の軽減といった様々なメリットが見られました。

(3)オンライン支援の課題

一方、オンライン支援には、機器の問題、非言語的な手がかりの把握の難しさやアセスメントの困難さ、話すタイミングが難しいといったコミュニケーション上の課題、作業検査や行動観察のようなアセスメント実施の難しさといった課題が見られました。

(4)課題を軽減する取組・工夫

オンライン支援の際に実施している工夫について、アンケート調査では、いずれの事業も「事前に通信テストを行った」、「話す際の声のトーンやスピードに留意した」の選択率が50%を超えていました(図1)。
 ヒアリング調査からは、準備面とコミュニケーション面について、以下のような取組が見られました。
 準備面では、オンライン支援用にマイクやカメラ、イヤホンマイク等を準備した事業所が複数見られたほか、操作マニュアルを作成したり、動画を作成してウェブサイトに掲載している例が見られました。
 コミュニケーション面では、リアクションや表情等をいつもより大きくする、言葉による確認を行う、相手の話をさえぎらないよう間の長さを変えて話す、支援者側も自分のことを意図的に話す、チャットの活用、画面共有の活用、グループワークでグループに職員も入る、疲れないよう面談時間を短くするなどの工夫が見られました。

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