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ー「就労支援のためのアセスメントシート」の開発ー

調査研究報告書 No.168
就労困難性(職業準備性と就労困難性)の評価に関する調査研究

執筆者

執筆者 執筆箇所
井口 修一 (障害者職業総合センター 主任研究員) 序章、第1章、第4章
武澤 友広 (障害者職業総合センター 研究員) 第2章、第4章、第5章
石原 まほろ (障害者職業総合センター 研究員) 概要、第3章、第4章、第6章

研究の目的

障害者の支援ニーズや就労能力の現状等を把握して適切な支援につなげていくための新たな評価ツールを開発することを目的としました。

活用のポイントと知見

  • 新たな評価ツールとして「就労支援のためのアセスメントシート」を開発し、「就労支援のためのアセスメントシート活用の手引」を併せて作成しました。
<就労支援のためのアセスメントシート>
  • 就労を希望する障害者ご本人と支援者が、就労に関する情報を協同で収集、整理する際にご活用いただけます。
  • ご本人のストレングス(長所)や成長可能性、就労するうえでの課題等を適切に理解し、就労に向けた必要な支援や配慮を検討する際にご活用いただけます。
<就労支援のためのアセスメントシート活用の手引>
  • 「就労のためのアセスメントシート」の目的、内容、アセスメント方法、使用上の留意事項について解説しています。
本研究で開発した、就労支援のためのアセスメントシートの外観と就労支援のためのアセスメントシートの構成要素の一つであるアセスメント結果シートの記載例。
<就労支援のためのアセスメントシート>
表紙とアセスメント結果シート
本研究で開発した、就労支援のためのアセスメントシート活用の手引の外観と就労支援のためのアセスメントシート活用の手引に掲載されているアセスメントの視点と望ましい環境や必要な支援や配慮に関する取組例の記載例。
<就労支援のためのアセスメントシート活用の手引>
表紙とアセスメントの視点と望ましい環境や必要な支援や配慮に関する取組例の記載例

本調査研究報告書の概要と主な結果

  • 本調査研究は、研究委員会等の設置に基づく専門家集団による検討内容、就労支援機関に対する質問紙調査、障害者雇用企業に対する質問紙調査及び就労支援機関における評価ツール(試作版)の試用評価の実施により「就労支援のためのアセスメントシート」を開発した経過についてまとめています。
  • 「就労支援のためのアセスメントシート」の開発コンセプト、強みと限界、今後の課題などについても記載しています。
  • 就労支援機関における評価ツール(試作版)の試用評価について、試作版を用いたアセスメントにおいて目的とした支援の実践度9項目を就労支援機関の利用者別に支援者に尋ねた結果(図1)を以下に示します。「かなりできた」と「すこしできた」の回答を足し合わせた割合は、9項目中7項目で全対象者の8割を超えていました。
  • 就労支援機関における評価ツール(試作版)の試用評価において、試作版を用いたアセスメントの目的の達成度5項目を就労支援機関の利用者に尋ねた結果(図2)を以下に示します。「かなりできた」と「すこしできた」の回答を足し合わせた割合は、5項目中4項目で全有効回答数の8割を超えていました。
帯グラフ。縦軸は支援の実践度を就労支援機関の利用者別に支援者に尋ねた9項目。9項目について「かなりできた」と「すこしできた」の回答を足し合わせた割合を項目別に示すと、支援者自身の価値観や思い込みにとらわれることなく、支援対象者の希望・ニーズを明らかにする(100%)、対象者の就労のための作業遂行に関する現状を具体的な情報に基づき明らかにする(82.6%)、対象者の就労のための職業生活に関する現状を具体的な情報に基づき明らかにする(82.6%)、対象者の就労のための対人関係に関する現状を具体的な情報に基づき明らかにする(80.4%)、対象者と支援者が異なる現状認識を持つ場合、その理由を具体的な行動レベルで話し合い、一致点を探る(80.4%)、就職や就労継続のために必要な支援や配慮のポイントを導き出す、ということを意識して情報収集を行う(84.8%)、対象者と環境の相互作用についての見立てに基づき、就労を継続するための望ましい環境を明らかにする(67.3%)、対象者と一緒に情報を整理する(97.8%)、対象者が出来ないことや苦手なこと、課題点よりも、ストレングス(本人や環境面の強み)に着目する(78.2%)。
図1 支援の実践度(n=46)
帯グラフ。縦軸は試作版を用いたアセスメントの目的を就労支援機関の利用者に尋ねた5項目。5項目について「かなりできた」と「すこしできた」の回答を足し合わせた割合を項目別に示すと、自分の将来の希望を支援者に伝える(89.3%)、就職するためや働き続けるために支援や配慮を依頼する必要があることを理解する(89.3%)、就職するためや働き続けるために自分が努力すべきことを理解する(80.8%)、働く上での自分の強みを理解する(84.8%)、自分の意見と支援者の意見が違っていた時に、自分の意見を具体的な情報をもとに主張する(57.8%)。
図2 目的の達成度

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