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-就労支援者に求められるスキル、企業の支援ニーズ-

調査研究報告書 No.120
地域の職業リハビリテーション・ネットワークに対する企業のニーズに関する調査研究

執筆者(執筆順)

執筆者
井上 直之 (障害者職業総合センター 主任研究員)
小池 眞一郎 (障害者職業総合センター 主任研究員)

活用のポイント

就労支援機関の在り方や支援者が備えるべき資質等を明らかにするためには、障害者雇用の一方の当事者である企業が就労支援機関に何を求めているのかを十分に理解することが必要である。本調査研究では、企業や支援機関に対するヒアリング調査、アンケート調査の結果に基づき企業の支援ニーズや支援者に求められるスキル等についてまとめている。現在障害者を雇用している企業や就労支援機関の支援者のみならず、新たに障害者を雇用しようとする企業においても、有用な資料として活用されることが期待される。

研究の目的と方法

目的

本調査研究の目的は、職業リハビリテーション・ネットワークに対する事業主のニーズを切り口として、必要な支援が効果的になされるためのコーディネート機能を含め、支援機関に求められている支援のあり方を明らかにすることである。

方法

 1 障害者雇用における支援の現状及び課題に関する資料の収集等
 2 企業・支援機関に対するヒアリング調査
 3 企業へのアンケート調査

研究の結果得られた知見

1 就労支援機関・施設の利用状況
事業所に対して障害者の採用、雇用管理、職場適応、キャリアアップなどに際して、企業外の支援機関等を利用したことがあるか質問したところ、「時々利用している」が32.1%でもっとも多く、次いで「よく利用している」が28.3%、「利用したことがない」が21.7%、「まれに利用している」が20.0%の順であり、各区分での大きな差がないことから、障害者の雇用を積極的に行っている企業であっても、支援機関・施設の利用頻度はまちまちである。

2 企業の支援ニーズをどのように理解するか
現状では知的障害者の採用当初及び職場定着後の課題が重要であるが、5年後には知的障害者の職場定着及び精神障害者の採用当初の課題が重要になると認識している企業が多数であることが明らかとなった。企業はまさにこれからの課題として精神障害者の雇用に目を向けはじめている。また、採用当初の課題から徐々に、定着後の継続雇用の課題へと軸足を移しつつある。

3 支援機関には何が求められているか
企業が支援機関を利用している理由では、採用や職場適応のための適切な支援、障害特性等についての専門的知識とアドバイスといった、支援の的確さや専門的知識の有用性に関わる項目が顕著に多い。迅速な支援、家族との連絡体制、中立的な立場など、支援の基本的なスタンスや体制に関わる項目も多く回答されている。
また、一元的に対応できる支援機関等の整備、様々な分野の機関等が協力した支援、ジョブコーチ等の人的支援の利用拡大など、支援機関・施設の支援のスタンスや制度に関する要望も少なからずあった。

4 職業リハビリテーション・ネットワークを機能させるための支援者のスキル
支援者には、①支援の継続と連携をしていくために調整役として支援サービスをコーディネートする力、②企業、福祉、医療、教育等の各分野の専門的なコンサルテーションを可能とする力、③関係各所と結びつくことができる力の3つのスキルが求められていると考えられる。

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