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-若年支援機関と職リハ機関の連携の課題を探る-

調査研究報告書 No.112
若年者就労支援機関を利用する発達障害のある若者の就労支援の課題に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
望月 葉子 (障害者職業総合センター 特別研究員) 概要  序章  第Ⅰ部第1章
第Ⅰ部第2章  第Ⅰ部まとめ
第Ⅱ部第3章  第Ⅱ部まとめ  総括
向後 礼子 (近畿大学 教職教育部 准教授) 第Ⅰ部第3章
知名 青子 (障害者職業総合センター 研究員) 第Ⅱ部第1章
西村 優紀美 (富山大学保健管理センター 准教授) 第Ⅱ部第2章

活用のポイント

若年者の就労支援に携わる者のみならず、多様な機関の関係者が、発達障害のある若者のための連携支援のあり方を検討する際の基礎資料としての活用が期待される。

研究の目的と方法

目的

若年支援機関(若年者就労支援機関※、高等教育機関)の利用者における発達障害者の現状と就労支援の課題を把握したうえで、専門的支援への「つなぎ」や関係機関との連携、特に、職業リハビリテーション機関との連携の現状と課題を明らかにする。

※:ここでは、若年者就労支援機関とは、若年コミュニケーション要支援プログラム実施ハローワーク、新卒応援ハローワーク、地域若者サポートステーション、ジョブカフェをさす。

方法

若年支援機関・職業リハビリテーション機関へのアンケート調査、ヒアリング調査、専門家ヒアリング。

研究の結果得られた知見

・若年者就労支援機関利用者の5.6%に発達障害の「診断」があり、「疑いあり」や「判断しかねる」を含めると22.2%にのぼる(高等教育機関の相談関係部署では36.3%)。
高等教育機関の相談関係部署計71所から得た計1799人の利用者の診断に関する回答の内訳は、発達障害の「診断あり」が5.9%、「疑いあり」が13.6%、「判断しかねる」が16.8%、「それ以外」が63.7%でした。一方、若年就労支援機関計130所から得た計14928人の利用者の診断に関する回答の内訳は、発達障害の「診断あり」が5.6%、「疑いあり」が8.5%、「判断しかねる」が8.1%、「それ以外」が77.8%でした。
  • ・発達障害者や発達障害が疑われる者のための就労支援体制整備における留意事項として、以下の6点があげられる。
  • ① 自己理解の深化や障害受容の課題があれば、「紹介先専門支援に適応できない」「専門支援を継続して利用するための相談支援が必要となる」という事態を想定した対応が必要である。
  • ② 物理的距離が支援機関の利用可能性を左右しており、これに心理的距離の大きさが加わると、利用可能性がきわめて限定される。
  • ③ 若年就労支援機関で重視すべき活動として、職業適性検査等の結果を解説する中で職業生活設計の見直し(専門支援の選択)を促すことが必要であり、そのために職業適性相談に基づく支援体制の整備が必要である。
  • ④ 高等教育機関をはじめ教育機関では、学校卒業までの、すなわち、最初の職業選択で躓かない支援体制の整備が必要である。
  • ⑤ 支援のための機関連携において、「つなぐ」は「送り出す」「任せる」ではなく、「共有して連携支援を継続する」という認識が必要である。また、「つなぐ」タイミングは障害理解の深化が「鍵」となる。
  • ⑥ 発達障害者支援のための支援者の専門性の確保(人材育成)が必要である。

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