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-障害のある本人からみた、課題と効果的取組-

調査研究報告書 No.100
障害者の自立支援と就業支援の効果的連携のための実証的研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
亀田 敦志 (障害者職業総合センター 統括研究員) 第1~3章、第6章、別冊資料1
春名 由一郎 (障害者職業総合センター 研究員) 第3~6章、別冊資料1、別冊資料2
田村 みつよ (障害者職業総合センター 研究員) 第5、6章

活用のポイント

この報告書は3分冊あり、①「No.100」は、研究目的、方法、障害のある本人に対するアンケートによる実態調査、難病及び発達障害についてのモデル事業の実施結果等を記載、②「別冊資料1」は実態調査の解説資料であり、障害の主な大分類の中からデータ数等を勘案して選択した障害について、調査結果の一部を記載、③「別冊資料2」は実態調査の障害・疾患別(分析可能なデータ数が得られたもの)の集計・分析結果を記載している。

研究の目的と方法

障害や病気のある人々が職業に就き、あるいは職業生活を続けていくためには、どのような課題があって、これを解決していくためには地域の支援機関や職場やあるいは本人のどのような取組が効果的であるかを明らかにすることが必要である。このため、障害者本人に対するアンケートによる実態調査、及び、難病と発達障害についてのモデル事業(先進的団体における支援事例の蓄積)を実施し、そこから得られたデータをもとに、取組のある場合とない場合の課題の解決状況について統計的手法を用いて取組の効果を数的に計測して、効果的な取組を明らかにしようとした。

研究の結果得られた知見

本研究は身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害及び難病といった多くの障害を対象とし、就職準備から就職後までの多くの職業的課題とこれに対する地域関係機関、職場及び本人の取組の把握と分析を試みたものである。報告書ではデータが得られた障害・疾患別について、多くの課題別に効果的な取組を明らかにしている。

1例として、統合失調症の場合の就職前の課題に対して効果的な取組の1つを下表に示す。

表の左の欄の「効果的な取組」がある場合に、右の欄に記載した課題が改善される状況を棒グラフに示したものである。グラフの目盛は課題がある人のうち課題が改善されている人の割合であり、灰色部分が現状の取組 (現状の取組率を( )内に記載)による改善割合を、白色部分が取組がある場合の改善割合を示している。

○統合失調症(就職前の課題に対する効果的取組の1例)
効果的な取組(注) この取組の有無で異なる職業的課題
「生活リズムや労働習慣の訓練」
(現状の取組率:49.5%)
  (一体的な取組:
  「生活リズムや労働習慣の訓練 (48.6%)」
  「就職面接や履歴書作成等の練習 (29.8%)」
  「資格取得支援や職種別の技能訓練(24.5%)」)
効果的な取組の一例として、生活リズムや労働習慣の訓練があります。現状の取組率は49.5%でした。これと同時に行われていることが多かったのは、生活リズムや労働習慣の訓練(48.6%)、就職面接や履歴書作成等の練習(29.8%)、資格取得支援や職種別の技能訓練(24.5%)でした。この効果的な取組がない場合は「企業に就職について連絡・申し込みすること」という職業的課題の解決状況は30%にも満たないのに対し、取組が実施された場合は60%近くに改善されていました。同様に「企業に対して職場で必要な配慮等を伝えること」及び「企業に対して自分をうまくアピールすること」といった課題は20%未満から30%以上に、「希望の会社についての情報を集めること」「障害と共存しての人生・生活の展望をもつこと」並びに「実際の職場の見学や職場実習・体験をすること」という課題は30%未満から40%以上に、「履歴書や応募書類を作成すること」という課題は50%未満から70%近くに、それぞれ改善されていました。

(注) 「効果的な取組」については、なるべく多くの職業的課題に影響しているものを選んで記載しており、また他の取組とあわせて効果がでているものがあると考えられるため、一体的な取組として、職業的課題への効果が同様にあり、かつ、当該取組と統計的に有意な相関のある取組についても記載している。

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