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障害者雇用の質の向上に向けた企業の取組と効果について~企業における障害者雇用の質の向上に向けた取組の現状と課題に関する調査研究の結果から~

2026年10月

一般企業及び特例子会社を対象とした調査から、障害者雇用の質の向上に向けた取組の現状及び取組の効果について紹介します。

1 はじめに

 民間企業で働く障害者の数は年々増加しています。一方、障害者雇用をさらに進めていくためには、雇用する人数を増やすだけでなく、障害のある従業員が能力を伸ばしながら働き続けられる職場づくりも重要です。2022年に改正された障害者雇用促進法では、障害のある従業員の能力を開発し、向上させることが事業主の責務に含まれることが明確にされました。企業には、障害者雇用の「質」を向上させるための取組が求められています。

 障害者職業総合センターでは、企業が障害者雇用の質の向上のために、現在どのような取組を行っているのかなどを明らかにするための調査研究を実施しました。そしてその結果を「企業における障害者雇用の質の向上に向けた取組の現状と課題に関する調査研究」(調査研究報告書No.184)として取りまとめ、2026年3月に公表しました。

2 調査方法

 障害者雇用の質の向上に向けた企業の取組の現状を把握するために、2つの方法で調査を実施しました。まず一般企業と特例子会社を対象としたアンケート調査を実施しました。有効回答数は、一般企業2,100社(有効回答率21.1%)、特例子会社195社(有効回答率32.6%)でした。

 次に、アンケートの回答企業等の中から、ヒアリング調査への協力に同意が得られた企業に対してヒアリングを実施しました。ヒアリングは13企業(一般企業8社、特例子会社5社)を対象に行いました。

 本稿では、これらの調査結果のうち、回答企業における①障害者雇用の方針、②能力開発、評価・処遇等の取組、③取組の効果、④能力開発、評価・処遇等の取組と効果との関連についてご紹介します。

3 障害者雇用の方針

 図1は一般企業の回答結果です。「法定雇用率の充足を目指している」を「重視している」と回答した企業の割合が最も高くなっていました。

 「障害者雇用を経営戦略の一つとして位置づけている」、「障害者の戦力化を目指している」、「障害者が社内のより中心的な業務(コア業務)に貢献できることを目指している」、「障害者の新たな職域や新規事業の開拓を目指している」の4項目については、「重視している」と回答した一般企業の割合はいずれも10%前後にとどまっていました。一方、特例子会社では、これらの4項目を「重視している」と回答した企業の割合は4割弱~6割弱となっていました。

障害者雇用の方針について、「重視している」「やや重視している」「あまり重視していない」「重視していない」の回答割合を積み上げ棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「重視している」、「やや重視している」、「あまり重視していない」、「重視していない」の順で示します。①法定雇用率の充足を目指している57.0%、31.8%、8.0%、2.0%。②法定雇用率を上回る人数を雇用することを目指している24.6%、39.0%、27.0%、8.0%。③障害者雇用を社会貢献の一つとして位置づけている32.1%、46.3%、16.5%、3.5%。④障害者雇用を経営戦略の一つとして位置づけている7.7%、24.0%、47.7%、18.6%。⑤障害者の戦力化を目指している13.0%、40.4%、35.0%、9.6%。⑥障害者が社内のより中心的な業務(コア業務)に貢献できることを目指している6.3%、27.2%、50.5%、13.9%。⑦障害者の新たな職域や新規事業の開拓を目指している5.3%、20.9%、48.7%、23.0%。⑧組織の理念や組織目標について障害者に伝えている24.0%、42.0%、25.1%、6.8%。⑨障害者を隔離せず一般社員と同じ部署に配置することを目指している48.1%、40.5%、7.7%、2.1%。
図1 回答企業における障害者雇用の方針(一般企業)

4 能力開発、評価・処遇等の取組

 回答企業の障害者雇用において、業務とのマッチング、教育訓練(OJT)、教育訓練(Off-JT)、評価・処遇、中長期的なキャリア形成に関する合計25項目の取組(「能力開発、評価・処遇等の取組」)を実施した実績について、正社員、非正社員別に尋ねました。

 一般企業(図2)において、業務とのマッチングに関する取組は「実施したことがない」の割合が比較的低く、多くの企業が取組を実施している一方、中長期的なキャリア形成に関する取組は、「会社の人材育成方針や身につけるべき知識・能力の伝達」を除き、「実施したことがない」の割合が半数以上を占めていました。

 ヒアリング調査では、様々な取組が把握されました。例えば一般企業において、障害のある従業員が一定の条件を満たせば指導を担当する者として認められ、給与にも反映される事例や、社内副業制度や資格取得の支援メニューを障害のある従業員も活用している事例などが見られました。特例子会社では、障害のある従業員が人事評価に基づいてトレーナーやリーダーに昇格する仕組みや、キャリア研修、社内インターンシップ制度、表彰制度を整備した事例などが見られました。

業務とのマッチングに関する取組について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の回答割合を棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の順で示します。①複数の手段による、障害者の能力や特性の把握(面接、作業観察、支援機関からの情報提供等)40.2%、39.4%、34.3%、2.0%。②入社前の実習やインターンシップ21.8%、29.7%、53.5%、1.9%。③担当職務についての障害者本人の希望の確認50.6%、45.8%、21.0%、2.1%。④個々の障害者の能力や特性に合った職務の創出又は再構成34.9%、36.0%、39.8%、2.0%。⑤障害者の能力や特性と業務とのマッチングの定期的な状況確認41.7%、42.4%、30.1%、1.9%。
教育訓練(OJT)に関する取組について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の回答割合を棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の順で示します。①多様な業務への取組機会の提供34.0%、25.1%、48.7%、2.7%。②担当する作業の手順やスケジュール等に関する、一定の責任や裁量の付与46.9%、30.9%、32.6%、2.6%。③障害者が指導役やチームリーダー役を経験する機会の提供26.4%、8.9%、65.3%、3.0%。④障害者の業務パフォーマンスに関する振り返り・フィードバックの定期的な実施36.2%、30.1%、42.6%、2.8%。
教育訓練(Off-JT)に関する取組について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の回答割合を棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の順で示します。①障害のない従業員と共通の研修57.0%、32.5%、26.2%、2.0%。②障害のある従業員に向けた独自の研修5.3%、5.7%、87.1%、3.2%。③自己啓発に関する補助金の支給16.6%、8.3%、77.3%、3.4%。④資格取得に対するインセンティブの付与23.8%、10.1%、69.5%、3.2%。⑤社内表彰制度33.1%、16.8%、57.6%、3.2%。
評価・処遇に関する取組について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の回答割合を棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の順で示します。①昇進・昇格・賞与等について、障害のない従業員と共通の基準の適用65.7%、37.9%、15.7%、2.5%。②障害に配慮した昇進・昇格・賞与等の基準の設定または基準の明確化18.4%、11.8%、71.8%、3.3%。③障害者の希望・能力を踏まえた業務目標の設定37.0%、27.0%、45.2%、3.2%。④業務実績等を踏まえた人事評価の実施55.9%、29.4%、28.3%、3.0%。⑤人事評価に基づく待遇の実施53.6%、27.3%、31.8%、3.1%。
中長期的なキャリア形成に関する取組について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の回答割合を棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「正社員に対し実施したことがある」「非正社員に対し実施したことがある」「実施したことがない」「無回答」の順で示します。①会社の人材育成方針や身につけるべき知識・能力の伝達47.3%、24.6%、34.7%、7.3%。②個別のキャリアプラン、教育訓練の計画等の作成25.9%、10.8%、61.1%、8.0%。③特定の仕事を極める、様々な業務を経験する、リーダーや管理職に昇進するなど、複数のキャリアパスの提示25.7%、6.8%、63.5%、7.9%。④キャリアラダー(職階や年次等の段階ごとに職務内容や必要なスキルを整理したもの)等の適用18.9%、4.8%、70.6%、8.2%。⑤障害者も参加可能なキャリアに関する研修の実施(キャリアデザイン研修等)19.0%、7.7%、69.7%、8.0%。⑥キャリアに関する相談の実施(上司、人事担当者、キャリアコンサルタント等)31.5%、17.4%、53.0%、7.4%。
図2 「能力開発、評価・処遇等の取組」(一般企業)

5 取組の効果

 能力開発、評価・処遇等の取組によりもたらされたと思われる効果に関する10項目について、「あてはまる」と「ややあてはまる」の合計で見ると、一般企業では、「障害者が元々有していた能力を適切に発揮できる機会が増加した」が43.5%と最も高く、次いで「障害者の業務や職場に対する満足度が向上した」が42.3%でした(図3)。

 一般企業では、職場や企業全体に対する効果に関する項目へのポジティブな回答は、いずれも20%未満でしたが、特例子会社では、30%~60%の回答割合でした。

 一方、ヒアリング調査では、一般企業において業務の見える化によって従業員全体が働きやすくなった事例や、障害者雇用のノウハウを外国人雇用に活用した事例なども見られました。

障害者雇用の質の向上に向けた取組の効果について、「あてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」「無回答」の回答割合を積み上げ棒グラフで示しています。以下に、各項目について、「あてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」「無回答」の順で示します。障害者の業務や職場に対する満足度が向上した10.7%、31.6%、39.8%、3.5%、6.6%、7.9%。障害者の早期離職が減少した16.7%、21.9%、37.1%、4.4%、11.2%、8.8%。障害者の生産性が向上した8.2%、26.9%、43.6%、4.4%、8.0%、8.9%。障害者の職業能力やスキルが向上した8.7%、31.0%、39.8%、4.2%、7.6%、8.8%。障害者が元々有していた能力を適切に発揮できる機会が増加した11.0%、32.5%、36.2%、4.4%、7.4%、8.4%。障害者の処遇(昇給・昇格など)が向上した6.4%、20.6%、44.8%、6.9%、12.3%、9.0%。障害者の正社員登用が進んだ6.4%、8.8%、36.0%、10.3%、29.4%、9.0%。職場全体の士気が向上した3.1%、13.0%、51.7%、9.3%、13.4%、9.4%。障害者雇用の経験やノウハウの蓄積を、他の従業員群にも応用することができた3.0%、11.1%、43.3%、11.9%、20.8%、10.0%。社会における自社の評価や企業イメージが向上した2.8%、10.7%、50.2%、9.6%、17.2%、9.5%。
図3 取組の効果(一般企業)

6 能力開発、評価・処遇等の取組と取組の効果との関連

 上記の5でご紹介した取組の効果10項目について、因子分析※1という手法を用いて分析した結果、大きく分けて「障害のある従業員の能力や満足度に対する効果」、「障害のある従業員の処遇に対する効果」、「職場全体への波及効果」の3つの効果があると分かりました。
上記の3つの効果と、「4 能力開発、評価・処遇等の取組」でご紹介した25項目の取組との関連について、重回帰分析という手法を用いて分析した結果、効果につながる取組は図4のとおりでした。

 障害のある従業員の能力や満足度に対する効果には、障害のある従業員の能力や特性に合った業務とのマッチングや、教育訓練(OJT)、評価・処遇、中長期的なキャリア形成に関する9つの取組が関連していました。障害のある従業員の処遇に対する効果には、評価・処遇に関する取組を中心に、6つの取組が関連していました。職場全体への波及効果には、上記2つの効果につながる取組と共通の、5つの取組が関連していました。

 本分析から、図4に示されている各取組は、障害者の能力や満足度の向上、処遇の改善、そして職場や会社全体への良い影響につながる可能性があることが示唆されました。障害者雇用の質の向上に取り組むことは、障害のある従業員だけでなく、企業全体にとっても良い効果があると考えられます。
 
 因子分析及び重回帰分析の結果表は、調査研究報告書No.184のp.105~112をご参照ください。
障害者雇用の質の向上に向けた取組による効果と、それに関連する取組を整理した概念図です。図は「能力や満足度に対する効果」「処遇に対する効果」「職場全体への波及効果」の3区分で構成されています。

「能力や満足度に対する効果」に関連する取組として、業務とのマッチングでは、能力・特性の把握、実習・インターン、職務の希望の確認、特性に合った職務設定、適性の定期的な確認を示しています。教育訓練(OJT)では、責任・裁量の付与、指導役の機会提供を示しています。評価・処遇では、希望を踏まえた目標設定を示しています。中長期的なキャリア形成では、キャリアに関する相談を示しています。

「処遇に対する効果」に関連する取組として、業務とのマッチングでは、職務の希望の確認、適性の定期的な確認を示しています。教育訓練(OJT)では、責任・裁量の付与を示しています。評価・処遇では、障害のない従業員と共通の処遇、障害に配慮した処遇、人事評価に基づく待遇を示しています。

「職場全体への波及効果」に関連する取組として、業務とのマッチングでは、実習・インターン、特性に合った職務設定を示しています。教育訓練(OJT)では、責任・裁量の付与を示しています。評価・処遇では、障害のない従業員と共通の処遇、障害に配慮した処遇を示しています。
図4 「取組の実施」と「効果」の関連※2
※1 多くの項目の中から、その背景にある共通の要素である「因子」を見つけるための統計手法。
※2 取組は略称で記しています。正式な項目名との対応は調査研究報告書No.184のp.109をご参照ください。

7 まとめ

 一般企業及び特例子会社を対象としたアンケート調査、ヒアリング調査により、障害者雇用の質の向上に向けた企業の取組の現状について把握することができました。加えて、効果につながる取組について明らかにすることができました。上記の調査結果を基に、パンフレット「障害者雇用の質の向上に向けて」(マニュアルNo.86)を作成しました。パンフレットでは、アンケート調査に回答した企業の「自社における質の高い障害者雇用」に関する考え・イメージの自由記述分析の結果や、ヒアリング調査で把握された企業5社の取組事例などもご紹介しています。障害者雇用の質の向上に取り組む際の参考としていただければ幸いです。

 本稿の元となる調査研究報告書No.184はホームページからご覧いただけます。

※本ページのイメージ画像は、生成AIを活用して作成しています。