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-発達障害者の特性に工夫・配慮した雇用-

資料シリーズ No.88
発達障害者を中心とした職場における配慮と支援に関する資料

執筆者(執筆順)

執筆者
内木場 雅子 (障害者職業総合センター 研究員)

活用のポイント

企業が発達障害者の受け入れと職場定着のために行っている具体的な工夫や配慮(仕事・職務内容、働き方、職場の対人・コミュニケーション等)について参考にしていただきたい。

研究の目的と方法

発達障害者の就職は、平成23年に障害者基本法が改正され、また、雇用対策上、発達障害者が精神障害者に含まれたことで、精神障害者保健福祉手帳を取得した発達障害者が、「障害者の雇用の促進等に関する法律」の対象となっている。実際に、障害者基本法以降の全国のハローワークにおける精神障害者の新規求職申込件数と就職件数は、平成23年以降はともに増加傾向にある。しかしながら、発達障害の特性として、対人面、コミュニケーション、こだわり、常同行動、困難性、過敏性等があると考えられていることや、二次障害が生じやすいと考えられていること等から発達障害者の理解には、その特性を総合的に捉えることが必要となる。

そこで、本研究では、企業が発達障害者を受け入れ、その多様な障害特性の理解を深めながらその方に合わせた仕事や職務内容、働き方等を提供するための具体的な工夫や配慮を把握するために、企業からヒアリング調査を実施することで、今後の発達障害者の雇用促進とその定着を目指すことを目的としている。

研究の結果得られた知見

今回のヒアリング調査では、初めての障害者雇用が発達障害者である事例、雇用率とは直接関係なく、発達障害者を受け入れている事例、一般採用後、発達障害者であることを知った事例がある。

企業が発達障害者の職務遂行や働き方、対人面・コミュニケーション等に行う工夫と配慮としては、企業が全従業員の働きやすい仕事や職場環境を作り、発達障害者を働き手として活かすことや、本人が一人でスムースに職務を遂行できるように、対人面やコミュニケーション面で配慮をすること、また、本人が働くチームのリーダーが本人・家族との関係性を深めるもの等である。何れも企業が本人の状況やペースに合わせた職務内容や働き方を提供する他、職場環境全体を整えている。これらの共通点は、企業が本人のために仕事・職務内容等を特別に作り変えていないことや、職場の対人・コミュニケーション面と職務遂行上(働き方を含め)のフォローや指導に、現場担当者を配置していることである。また、クローズドで採用した本人に企業が熱心に歩み寄り、安心して働ける職場環境を本人に提供することで、両者の相互理解を深め、前向きな関係性に変化させた可能性のある事例がある。このように発達障害者を受け入れる企業の考え方は、様々な企業文化や価値観によって違うことが理解できるが、何れも企業が本人の職務遂行や職場における対人・コミュニケーション等に工夫や配慮を行い、働くことを実現している。また、現在、本人が問題なく安定的に働いている事例に、仕事と働くことや、職場のコミュケーションを生活の中心に置いているようにもみえるものがある。私的な仲間との語らいや趣味等のプライベートの充実が働くことに活かされるよう、「ワーク・ライフ・バランス」を目指すことも大切である。

今後の課題は、企業が発達障害者のために仕事・職務と働き方を合わせ、また、企業の職場環境を本人の状況に配慮したものとして整備できるようにすることだと考えられる。そのためには、就労支援機関が企業との連携を強化する他、JC支援を行う人材の育成、また、研究成果に基づく高い支援技術が求められてくるであろう。

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