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-職業上の困難さと障害認定の関係-

資料シリーズ No.67
職業上の困難さに着目した障害認定に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
白兼 俊貴 (障害者職業総合センター 統括研究員) 第1章、第3章
若林 功 (障害者職業総合センター 研究員) 第2章

活用のポイント

(1)行政機関については、その施策立案に資する基礎資料とする。

(2)企業については、海外進出時等における障害者雇用方針立案に資する基礎資料とする。

(3)障害者就労支援専門家については、その支援に資する基礎資料とする

研究の目的と方法

(1)現行の障害の範囲・等級と、職業上の困難さの関係の検証

障害の範囲・程度と職業上の困難さの関係については、「職業的困難度からみた障害程度の評価等に関する研究(2008年 資料シリーズ№43)」が、平成18年度単年度の全国のハローワークの障害者職業紹介データを分析しているが、 ①平成18年度分のみのデータに基づいているため不安定性を伴う可能性がある、②就職率のみを職業上の困難さの指標としている、という制約があった。そのため、

  • ① 複数年度(平成18~22年度)にわたる全国のハローワークの障害者職業紹介データを用い、
  • ②職業上の困難さの指標として、就職率、就職までの期間といった複数の指標を用い、現行の障害の範囲・等級と、職業的困難さの関係の検証を行った。

(2)ドイツ・フランスにおける、職業上の障害認定の具体的な実行方法の把握

先行研究においては、わが国と同じく障害者雇用率制度を実施し、かつ障害の「社会モデル」的側面も考慮しているとされるドイツ、フランスの障害認定の実施機関等が示されているが、それらの機関において具体的にどのように認定が行われているか明らかにされていない。 そのため、特にこれらの機関における具体的な障害認定についての実行面に焦点を当てた。

研究の結果得られた知見

  • 平成18~22年度の5年間の、新規に求職登録した障害者の「就職率」「就職までの平均日数」及び「不採用における事業主都合の割合」について障害種別・等級別に検討し、これら職業上の困難度を示す指標が概ね障害等級と対応していることが示された。 ただし、視覚障害は障害等級と対応していない傾向があるなど、一部の障害種類と等級の組み合わせによっては、障害等級と職業上の困難さを示す指標が対応していない場合が見られた。
  • ドイツにおいては、鑑定基準の「障害の程度」は、単に障害や症状の程度を示すものではなく、これまでの鑑定の経験、社会の変化を加味して定められるとされている。 ただし、例えば障害者が州を越えて居住地を移転した場合、有効期限以内であれば移転後の州においてもそのまま有効となるなど、その時々における個別的状況の要素よりも、障害認定結果の一貫性が強調される認定方法となっている。 フランスにおいては、障害労働者の認定は、各県において、障害当事者を含む委員会により、「障害と、仕事内容や職場環境等との関係」(“シチュエーション”と表現されることが多い)に基づいて行われ、同じ機能障害・症状であっても、シチュエーションによっては障害と認定されないこともある。 すなわち、障害認定結果の一貫性よりも、その時々における個別的状況の要素が強調される認定方法となっている。ただし、障害労働者として申請があった場合のうち認定されたのは93~98%と、申請者のほとんどが障害労働者として認定されるという状況である。

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