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-障害のある中高年齢求職者を支援するために-

資料シリーズ No.64
障害のある中高年齢求職者の就職活動に関する研究

  • 発行年月

    2012年03月

  • キーワード

    障害のある中高年齢求職者 就職支援の留意点 事業所の配慮

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    就労支援に関する状況等の把握

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
沖山 稚子 (障害者職業総合センター 主任研究員) 第1章~第5章

活用のポイント

障害のある中高年齢者が求職活動する際に直面する課題やこれに対する支援の状況について、就職支援担当者に対する聞き取り調査やアンケート調査により明らかにし、採用についての支障を解決するための配慮と工夫の事例及び障害のある中高年齢求職者を支援する際の留意点を示した。就職活動をする障害のある中高年齢求職者、その採用に不安を感じている事業所、職業紹介や就職支援を担う担当者の問題解決に活用が期待される。

研究の目的と方法

1 目的

障害のある中高年齢求職者の就職活動を取り巻く事項に焦点を当て、求職者が直面する課題やこれに対する支援の状況について整理し、採用についての支障を解決するために中高年齢求職者、事業所、就労・就業支援者等が留意すべき事項を探り、それぞれの問題解決に資することを目的とする。

2 方法

就職支援担当者から聴き取りやアンケートにより事例を収集・分析し、内外文献の収集、分析を行った。

研究の結果得られた知見

就労支援機関8か所における聴き取り調査と障害者職業センター19か所のメールアンケート調査の結果、採用事例42例と不調事例18例を収集した。これらから得られた知見を求職者、事業所、就業支援者に分けて示す。

1 求職者に関すること

(1)処遇等雇用条件に対する現実的な対応

過去の職業経験が就職活動に有利な場合と、こだわりや固執となって就職機会を狭めている場合がある。実際の求人情報を基に可能な職種を選び、雇用条件と希望をおり合わせるために支援機関の活用が有効である。

(2)加齢に伴う体調変化や家族状況の変化への自覚

加齢に伴う二次障害の発生や障害の進行、新たな障害の発生等を踏まえた職種選択や働き方の調整が必要であり、さらに家族の高齢化に伴い日常生活の支援態勢が弱化することを視野にいれ就業生活への負担を勘案した就職活動が求められる。

2 事業所に関すること

(1)採用条件の緩和

当初の求人内容を変更するなど若年の求職者以上に柔軟な対応が必要であるが、就業可能となった中高年齢の障害者の事例は他社での受け入れに活用できる場合が多い。

(2)ジョブコーチ支援の活用

ジョブコーチ支援による求職者の加齢現象や障害状況をふまえた調整が効果的であった事例が複数確認できた。

3 就業支援者に関すること

(1)処遇等雇用条件への現実的な対応に関する情報提供

障害のある中高年齢求職者の過去の実体験が就職活動でこだわりや固執となって逆効果な場合もある。若い時期に就職したときの雇用条件や過去に経験した職種せず、実際の求人情報をもとに現実的選択ができるような情報提供、職業相談の実施に留意したい。

(2)就職意欲の維持に関する支援

若年者に比して厳しい求人状況の下で、障害のある中高年齢求職者が就職意欲を維持し続けることは容易ではない。職業経験・雇用条件へのこだわりやプライドがあることは中高年齢であるがゆえの特徴である。「人としての尊厳」を尊重しつつ、就職意欲を萎えさせない就職支援が期待される。

(3)求職者の加齢現象と家族状況の変化を踏まえた支援

グループホーム等の活用により就業生活が維持できている例もあり、特に単身生活の中高年齢求職者の就職支援においては、各種社会資源情報を収集し、本人や家族に利用した場合の利点等を示すことで安定就労をめざす視点、さらに周辺関係機関との役割分担を構築することなどが求められる。

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