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-働きがいのある生活を目指す障害管理の手法-

資料シリーズ No.60
ディーセント・ワークの実現を視野においた「障害管理」に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者
石川球子 (障害者職業総合センター 主任研究員)

活用のポイント

本書は、障害者が障害や疾病からの回復に要する期間において、職業から切り離されることなく職業生活への復帰や就職を果すための障害管理(disability management)の理論と手法を障害者のニーズ、企業のニーズ、労働環境、法的責任の側面から就労支援者及び事業主向けに解説している。障害管理による速やかな介入手法は、身体障害のみならず、メンタルヘルス関連の障害を含むすべての障害をその対象としている。

研究の目的と方法

【目的】

ILOはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を図る手法の1つとして障害者の採用、昇進、継続、復職にかかる諸管理を体系的に扱う障害管理を挙げている。本研究もその視点に立ち、障害管理の必要性、障害管理の実施に関する実践綱領と三者構成、障害管理による個別支援計画作成のための手法、メンタルヘルスに関する国内実践例と障害管理、欧米諸国における障害管理による障害者雇用促進について分析し、就労支援機関関係者及び事業主の取り組みに資することとした。

【方法】

ネットワークを含む公開情報を活用するとともに国内外の研究機関を介して、欧米諸国における障害管理の実践についての最新文献(障害管理の国際認定基準に関するものを含む)を収集・分析した。

研究の結果得られた知見

【障害管理の必要性】

①障害管理の確立までの経緯:障害管理の手法の確立に至った背景としては障害による労働力の損失が多大なことが挙げられる。  
②障害管理が障害者権利条約と整合性のとれたものであることが確認された。  
③高齢化及びグローバル化における日本の職場におけるメンタルヘルスの問題への対応として障害管理は重要な役割を果たすことができる。高齢障害者の採用と雇用継続の推進方法の面でも有効である。

【障害管理による個別支援計画作成のための手法】

①障害管理プログラムの創出するためには10のステップがある。  
②障害管理の推進上の重要点である関係者の参画、職業生活への復帰に向けた速やかな介入、仕事の調整に関する手法、障害管理担当者のコミュニケーションスキルの有効性が指摘されている。  
③国際基準に則った障害管理の特徴の1つとして障害管理を効果的に進めるためのアセスメントツールが開発されている。  
④障害管理による従来の同一事業主で同一の職場への復帰が必ずしも可能ではない状況における効果的な合理的配慮・調整の方法が開発されている。  
⑤エルゴノミックスによる職場環境の調整の手法が必要となる。  
⑥対立の解決に向けたコミュニケーションスキルも重要性を持つ。

【メンタルヘルスに関する国内実践例と障害管理】

①障害管理の考え方に近い国内企業における実践例(本書第5章)がある。  
②うつ病に関する障害管理の有用性が考察された。  
③国内企業において、予防的側面を備えたメンタルヘルスの取り組みが少ないことが課題として挙げられる。

【欧米諸国における障害管理による障害者雇用促進】(ここでは3カ国に限定)

①ドイツ:一例として統合協定及びドイツ法定労災保険組合による障害管理の推進が挙げられる。  
②米国:障害管理がADA遵守を推進する上で役割を果たしている。  
③フランス:3者構成を基本とする障害管理を推進する上でフランスのいわゆる2005年法の理念はその基盤と位置付けられる。

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