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資料シリーズ No.32
障害者就業支援におけるカウンセリングの技法と障害への配慮

  • 発行年月

    2005年03月

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    支援方法の把握/紹介

執筆者(執筆順)

執筆者
依田 隆男 (障害者職業総合センター障害者支援部門 研究員)

(目的・方法)

職業リハビリテーションの現場スタッフが直面するコミュニケーションや面接の課題に取り組むため、カウンセリング技法、社会福祉援助技術、精神科医療面接等に関する文献・資料から取りまとめることを目的とした。

(結果の概要)

第1章では、利用者との面接やコミュニケーションのあり方を考えるための基本的な枠組みについてまとめた。基本的カウンセリング技法は、障害者就業支援業務の様々な場面で役割を果たすことができる。そこでのカウンセリングの役割は、「信頼関係の形成と再形成」、「クライエントの自己理解の促進」、「問題解決の支援」の大きく3つに分けることができる。第1の信頼関係の形成には、支援者自身の自己理解と、それを支えるスーパービジョンが不可欠である。第2のクライエントの自己理解のためには、対話を促進・抑制したり、発言を掘り下げたり、異なる視点から物事を見ることができるよう支援することが重要である。第3の問題解決のためには、合理的な問題解決方法の限界を踏まえ、段階的に問題に取り組むことが有効である。

第2章では、障害者就業支援の課題のうち面接やコミュニケーションに関わりの深い4つを取り上げた。第1は意思決定に関する課題である。ここでは、クライエントの意思の尊重と、意思決定能力の限界との関係をどのように捉えるかが大きなテーマとなる。すなわち、第1章で挙げたカウンセリングの3つの役割を基本とし、1対1のコミュニケーションの質を高めながら、そのニーズを育て、探求する働きが、支援者とクライエントとの二者関係にはある。第2は感情のコントロールである。ここでは特に利用者の怒りの8つのカテゴリーと、それへの対処についてまとめた。第3は疾病管理である。統合失調症とうつ病に配慮した面接やコミュニケーションのあり方について、特に病気の再燃と自殺念慮を取り上げてまとめた。第4はクライエントの家族との連携である。障害を持つ人の家族の心理と支援者の役割についてまとめた。

なお、本書のカウンセリングは心理療法ではなく、障害者の職業生活を支え、その力を引き出す上で最も効果的な対話のあり方、関わり方の総称である。このため、社会福祉援助技術、精神科医療面接等の知見についても実用的な観点から随時引用し、実践に役立つものを目指した。

目次

  • 概要
  • 第1章 障害者就業支援におけるカウンセリングの技法
  • 第1節 信頼関係の形成と再形成
    • 1.信頼関係とは何か
    • 2.信頼関係の形成方法
      • 関係形成の起点/傾聴/受容的態度/支援者の自己理解/支援者のメンタルヘルス管理とスーパービジョン
    • 3.相互作用の実現
  • 第2節 クライエントの自己理解の促進
    • 1.対話をするために-発言の促進と抑制-
      • 発言の促進/発言の抑制と展開の促進/質問法の使い分け
    • 2.発言を掘り下げるために
      • クライエントに共感する/クライエントの話を段階的に掘り下げる/感情を反映した応答を返す
    • 3.異なる視点から物事を見ることができるようになるために
      • 視点の転換—リフレイミング—/リフレイミングの3つの方法
  • 第3節 問題解決の支援
    • 1.カウンセリングの合理性
    • 2.指導的な6つのカウンセリング技法
      • 助言/自己開示/指示/フィードバック/直面化/叱責
    • 3.問題解決のプロセスと構造
      • Systematic Approachの4段階/コーチングの6段階
    • 4.合理的問題解決の限界と克服
      • 依存型コミュニケーションのクライエント/依存型コミュニケーションの支援者
  • 第2章 課題への対処と障害への配慮
  • 第1節 意思決定
    • 1.意思決定の本質
    • 2.意思決定の課題
      • 他者依存型への対応/希望の具体化や現実化/クライエントと周囲の人々との意識の乖離/見通しの確かさとリスク
    • 3.カウンセリングでの留意点
      • 自己洞察と行動を好循環させる/クライエントと支援者のコミュニケーションの質を高める/ニーズを探求する
  • 第2節 感情のコントロールと怒り
    • 1.怒りの特性
      • 感情の自己管理と問題解決/怒りのカテゴリー
    • 2.カウンセリングでの留意点
      • 合理的な批判の怒りを受けとめる/専門家一般への過度の信望または不信の怒りを受けとめる/情報の混乱からくる怒りを受けとめる/障害を引き受けなければならない不安からくる怒りを受けとめる/脳損傷による易怒性を受けとめる/転移と抵抗による怒りを受けとめる/投影及び同一視による怒りを受けとめる/境界性人格障害による怒り
  • 第3節 疾病管理-精神障害者の場合-
    • 1.統合失調症の再燃
    • 2.自殺念慮の把握と対処
  • 第4節 クライエントの家族との連携
    • 1.障害者の家族の心理
    • 2.カウンセリングでの留意点
  • 文献
  • 索引

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