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調査研究報告書 No.68
職業リハビリテーションにおけるカウンセリングの特徴と課題

  • 発行年月

    2005年03月

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    支援方法の把握/紹介

執筆者(執筆順)

執筆者
依田 隆男 (障害者職業総合センター障害者支援部門 研究員)

(目的・方法)

職業リハビリテーションにおけるカウンセリング技法の実態を調査・分析し、特徴と課題を整理する。また、職業リハビリテーションの実践現場で効果的なカウンセリングのあり方についてまとめることを目的とした。

(結果の概要)

本報告書は平成14年度から平成16年度にかけて行った『障害特性に応じた職業リハビリテーションカウンセリングのあり方に関する研究』の報告書であり、2つの章から構成されている。

第1章では、先行文献を手掛かりに職業リハビリテーションカウンセリングと他のカウンセリングとの違いを解明することを通して、第2章の実態調査で扱うべきテーマを明らかにした。すなわち、職業リハビリテーションカウンセリングはその歴史的経緯から技法的な研究が立ち遅れており、その結果、「当事者による意思決定」や「インフォームドコンセント」といった職業リハビリテーションのトピックを面接の方法の視点から検討する基盤が整っていないことが明らかになった。

第2章では、職業リハビリテーションカウンセリングの実態を調査・分析した。すなわち、仮想事例による具体的な対話場面を用い、そこでのカウンセリングの技法の使われ方を分析した。その結果、職業リハビリテーションの面接技術には、一般のカウンセリングの技法の概念だけでは説明できない、クライエントの特性に応じた独特の側面があることが明らかになった。すなわち、一般のカウンセリングでは大きな重点が置かれることの多いクライエントの発言促進、クライエントの自己分析・自己理解の促進における技法の用いられ方は、他のカウンセリングと共通する側面があった。だがそれだけではなく、いくつかの技法の用いられ方に独自の側面が見られ、職業リハビリテーションカウンセリングは、問題解決に向け積極的に行動する応用分野のカウンセリングであることが示唆された。

なお、調査・分析で用いられた方法は、先行研究を基に工夫を重ね、独自に開発したものだが、これは他のカウンセリングや医療・保健・福祉・教育・産業等の多様な対人サービスにも適用可能であることから、今後の実態調査や実践研究等にも資するものとなった。

本研究を通して、職業リハビリテーションカウンセリングは、他のカウンセリングとの間に技法的に共通する要素を持つカウンセリングの一形態であることが明らかになると同時に、職業リハビリテーションカウンセリングは問題解決に向け積極的に行動する応用分野のカウンセリングであることが示唆された。だが一方では、様々な障害特性に応じたカウンセリングのあり方について体系的検討が行えなかったため、今後の課題として残された。

目次

  • 概要
  • 第1章 はじめに
    • 1.研究の背景
    • 2.研究の目的
  • 第2章 職業リハビリテーションカウンセリングの実態
    • 第1節 調査の概要
      • 1.目的
      • 2.調査の手続き
      • 3.分析の枠組
    • 第2節 カウンセラーの応答の特徴
      • 1.「基本的傾聴の連鎖」と「積極技法」
      • 2.採用された技法の特徴
    • 第3節 個別事例からみた特徴
      • 1.職業リハビリテーション計画策定に際しての相談・調整
      • 2.職業準備支援事業実施中の相談
      • 3.雇用後の相談等
    • 第4節 まとめ
      • 1.技法の用いられ方の特徴
      • 2.今後の課題
  • 第3章 補遺
    • 1.分析結果の一致度の評価
    • 2.Cohenのκ係数の採用について
  • 文献
  • 資料

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