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調査研究報告書 No.43
知的障害者の職務遂行能力の加齢変化に関する研究─障害者の加齢に伴う職業能力の変化と対策に関する実証的研究報告書3─

  • 発行年月

    2001年04月

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    障害特性/課題の把握

執筆者(執筆順)

執筆者
松為 信雄 (障害者職業総合センター 主任研究員)
清水 亜也 (研究協力員 千葉大学大学院博士課程後期)

(目的・方法)

身体・精神機能を含む広範な職業能力などの加齢に伴う変化の様相を実証的に明らかにすることを目的とした、2種類の異なる研究成果をまとめた。

その一方は、身体・精神機能を含む広範な職業能力などの加齢に伴う変化の様相を実証的に明らかにすることを目的に、個々の障害者の実際の職務遂行能力とその構成要素としての心身機能を中心とした労働適応能力との関係を検討した。そのため、地域障害者職業センター利用の知的障害者に対して実施された種々の測定結果のうちで、実際場面での職務遂行能力の結果を真に反映している「職務試行評価」結果に加えて、労働適応能力の要素的な特性を反映している「知能検査」「作業検査」「社会生活能力評価」「職業準備訓練評価」の結果を収集し、それらの加齢変化の傾向についての横断的な分析を行った。

他方は、同一被験者の加齢に伴う心身機能の時系列的な変化を明らかにすることを目的に、「狩野運動能発達検査」結果の縦断的データを分析した。同検査の「A:平衡機能」「B:全身運動の協調」「C:手指運動」「D:分離運動・模倣運動」に分類される下位項目ごとに、その得点の加齢変化の傾向について回帰分析を行った。

(結果の概要)

後者の研究は、測定データが10年分以上ある37名(男性20名、女性17名)について、個人ごとに合計得点の加齢変化の傾向を回帰分析で求めるとともに、4種類の下位検査項目ごとに得点の加齢変化の傾向についても回帰分析を行った。その結果、知的障害者の運動能力の加齢に伴う変化は、「下降傾向」「上昇傾向」「傾向なし」といった形で類型ができたものの、知的障害者の全体として適用できる共通した傾向の存在は示されなかった。また、項目によっては加齢に伴って得点が上昇する傾向が数多く見られる場合もあり、職業能力に関わる各種能力は、加齢に伴って向上する場合もあることを示した。また、運動能力の下降が始まる年齢境界は特定できず、各被検査者間で大きく差があることが示唆された。従って、知的障害者の運動能力の加齢変化については、加齢変化=運動能力の低下という単純な図式では解釈できないことが示された。

目次

  • 第Ⅰ部 「職務遂行能力」と個別検査(評価)に見る知的障害者の加齢変化
    • 第1章 目的と方法
    • 第2章 知能検査の年齢別特徴
    • 第3章 作業検査の年齢別特徴
    • 第4章 社会生活能力の年齢別特徴
    • 第5章 職業準備訓練評価の年齢別特徴
    • 第6章 職務試行評価の年齢別特徴
    • 第7章 まとめと結論
    • 文献
  • 第Ⅱ部 「狩野運動能発達検査」に見る知的障害者の加齢変化
    • 第1章 問題の所在と目的
    • 第2章 方法
    • 第3章 結果
    • 第4章 考察
    • 第5章 まとめ
    • 文献
  • 第Ⅲ部 付表・付図

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