調査研究報告書 No.165
障害者の週20時間未満の短時間雇用に関する調査研究
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発行年月
2022年03月
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キーワード
週所定労働時間20時間未満 企業調査 就労継続支援事業所調査 雇用事例 多様な働き方 特例給付金
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職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目
執筆者(執筆順)
執筆者 | 執筆箇所 |
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岩佐 美樹 (障害者職業総合センター 研究員) | 概要、第1章、第3章、第4章、第5章 |
野澤 紀子 (障害者職業総合センター 主任研究員) | 第2章 |
永登 大和 (障害者職業総合センター 研究協力員) | 巻末資料3 |
研究の目的
週所定労働時間20時間未満で就労している又は就労を希望している障害者や、こうした障害者を雇用している又は雇用することを検討している企業のニーズや実態を把握し、週所定労働時間20時間未満での就業実態、支援の現場における工夫や課題等から週所定労働時間20時間未満での雇用の可能性等について探り、そのために必要な支援や制度のあり方を検討することを目的として実施しました。
活用のポイントと知見
- 調査結果をもとに、週所定労働時間20時間未満での障害者の就業実態、支援の現場における工夫や課題等を整理しています。
- 様々な理由により週所定労働時間20時間未満の雇用を希望している障害者の雇用又は週所定労働時間20時間以上から20時間未満の雇用への移行を希望している障害者の継続雇用のための支援に取り組む上での参考資料としてご活用いただけます。
- 就労継続支援事業所に対するアンケート調査結果のうち、利用者が週所定労働時間20時間未満の就職を希望する理由の選択結果を事業所別に、以下に記載します(図)。
週所定労働時間20時間未満の障害者雇用に対するニーズと雇用の実態
本調査研究では、就労継続支援事業所に対するアンケート調査及びヒアリング調査、事業所等に対するヒアリング調査等を実施し、週所定労働時間20時間未満の雇用に対するニーズ及び雇用の実態を把握し、支援のあり方等を検討しました。
本調査研究により得られた結果の概要を以下にご紹介します。
(1)障害者の週所定労働時間20時間未満の就労希望及びその背景について
アンケート調査結果において、週所定労働時間20時間未満での就職を希望する利用者がいる就労継続支援事業所の割合は、A型事業所においては8.7%、B型事業所においては16.2%であった。
週所定労働時間20時間未満での就職を希望する利用者がいると回答した事業所の事例(1事業所5事例を上限に回答:A型事業所300事例、B型事業所2,242事例)の障害種別は、A型事業所、B型事業所ともに「精神障害」が最も多く、次いで「知的障害」、「身体障害」であった。
週所定労働時間20時間未満の就職を希望する理由として最も多く選択されたのは、「体調の変動・維持」(A型事業所63.0%、B型事業所70.9%)であった(図)。
(2)週所定労働時間20時間未満の障害者雇用の実態等について
ヒアリング調査により把握された週所定労働時間20時間未満の障害者雇用については、事業主及び雇用されている障害者双方に利益をもたらすものであった。
また、障害者の週所定労働時間20時間未満の雇用の背景には、障害者雇用率や支援制度等の該当の有無にとらわれず、障害者の力を職場で活かそうとする事業主の姿勢や障害者雇用のための職務創出や障害特性等に対する様々な工夫や配慮がいずれの事例においてもみられた。
環境整備に関する事業主の重要な取組も把握された。多くの事業所においては、障害者雇用に対する周囲の理解を促進することにより互いに助け合い、働きやすい環境づくりがなされていた。職業生活全般にわたる支援を行うため、関係機関とのチーム支援がなされている場合もあった。
(3)週所定労働時間20時間未満の障害者雇用のために必要な支援や制度のあり方等について
ヒアリング調査においては、ジョブコーチ支援等の職業リハビリテーションサービスが適切に提供されることにより、週所定労働時間を延長することが可能な者もいることが確認されている。これらの者が必要な職業リハビリテーションサービスを必要な時に受けられるような体制づくりが必要と考える。ただし、どんなに適切なサービスを提供され、障害者及び事業主等が努力をしても、週所定労働時間20時間以上の就労が困難である者に対する配慮が必要であり、このような障害者が週所定労働時間20時間未満の就労を維持できるような支援体制を整える必要もあると考える。
さらに、現在は多くの自治体で認められていない一般就労移行後の就労継続支援事業の利用についても検討が必要と思われる。ヒアリング調査においては、就労継続支援事業所の支援を受けることにより、職業生活の安定や継続を図ることが可能となっている事例や、支援を受けられなかったことにより、離転職を繰り返している事例が確認されている。専門家ヒアリングにおいては、就労継続支援事業所などを利用する形で障害者雇用に係る企業のコストを低下させることで、障害者就労の社会的なメリットをもたらすことができるという指摘もあった。
※発表資料は、研修に参加された方向けの補助資料として作成したものです。
※本資料のご利用にあたっては、研究企画部企画調整室へご連絡いただくとともに引用元の明記をお願いいたします。
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