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-事業主による合理的配慮提供の現状把握と課題提示-

調査研究報告書 No.105
雇用関係における障害者の均等待遇を実現するための諸方策に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者 執筆箇所
佐渡 賢一 (障害者職業総合センター 統括研究員) 序章第1節、第II部第1章、第2章第1節、第2節3、第3章第2節、終章
指田 忠司 (障害者職業総合センター 研究員) 序章第2節、第I部第2章第1節、第2節1
平川 政利 (障害者職業総合センター 主任研究員) 概要、第I部第1章、第2章第2節2、3、4
杉田 史子 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第II部第2章第2節1、2、第3章第1節
佐久間 直人 (障害者職業総合センター 研究協力員) 第I部第1章調査結果の集計と分析

活用のポイント

本書は、2部構成であり、第I部では、障害者を雇用するに当たって、事業主が行うさまざまな配慮や支援の実態をアンケート調査と聴取り調査を通じて明らかにしている。第II部では、障害者権利条約の背景にある差別禁止、合理的配慮、割当雇用制度に関するさまざまな施策をめぐるドイツ、フランスにおける最近の変化を踏まえて、障害者権利条約批准に向けた課題について論じている。

研究の目的と方法

欧州連合は2000年に雇用均等一般枠組み指令を発布し、障害を理由とする差別禁止や、雇用の場における合理的配慮の考え方を導入した。また2006年には国際連合で障害者の権利に関する条約が総会での採択に至り、差別禁止と合理的配慮をめぐる各国の対応が注目されている。わが国では、2007年にこの条約に署名し、目下、批准に向けた検討が進められている。

本研究では、こうした国内外の動向を踏まえ、雇用関係において障害者の均等待遇を実現するために採られているさまざまな方策について、民間企業等における実態を明らかにするとともに、国際的潮流に則した諸方策の実現に向けた課題について検討することを目的とする。

この目的を達成するため、民間企業において事業主が障害者の雇用促進のために実施している各種支援の実態について、アンケート調査及び聴取り調査を実施し、これを分析して課題を明らかにするとともに、欧米諸国における障害者雇用施策、判例等の最新動向について、専門家ヒアリング、内外文献の収集、分析を行い、課題を整理検討した。

研究の結果得られた知見

事業主が提供する各種支援には、①障害者採用時の支援、②雇用管理に関する支援、③職場環境整備に関する支援の3領域があるが、①については、企業規模との関係が、②及び③については障害種類との関係が顕著な違いとしてあらわれた。
雇用管理に関する支援において、職務に直結する業務遂行上の支援と健康管理に関する支援は、障害の種類に関係なく実施率が高かった。これらは実際に仕事をし、職業生活を送る上で不可欠な支援といえる。
各種支援の提供に際して企業側が感じる限界については、経済的・人的な負担が大きく影響すると考える回答のほか、経済的・人的な援助でできるならいくらでもするが、それ以外に職務とのアンバランスなど、解決の難しい問題があることを指摘する企業も見られた。
職場のバリアフリー化については、建物の所有権の帰属や、建替え時期の違いなど、費用にとどまらない制約が実施を妨げている実情が見られた。
ドイツとフランスは両国とも割当雇用制度を維持しつつ、障害者権利条約を批准しているが、EU指令や権利条約の法制化への対応には、それぞれ特徴が見られる。ドイツについては、割当雇用制度発足後の憲法判断を中心に法定雇用率をめぐる議論を検証し、その考え方の変化がわかった。フランスについては、救済機関(HALDE)が雇用率と非差別という2つの原則が両立するとの見解を示し、この2つのアプローチをつなぐために支援制度や枠組み作りが行われていることがわかった。

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