テレワーク希望者が望む働き方とテレワークを望まない者のその理由
データの読み方・考え方
- ここで紹介するのは、「テレワークに関する障害者のニーズ等実態調査(調査研究報告書 No.171)」において、ICT(情報通信技術)を活用したテレワークに対する障害者のニーズを明らかにすることを目的として、障害者職業総合センターが2021年に実施した調査の一部です。
- web調査会社が保有するモニター会員を対象に、スクリーニング調査で回収見込み件数を算出した上で、「雇用されている」人1,000人、「雇用されていない」人1,000人の合わせて2,000人の障害者を対象に本調査を行いました。
- 「雇用されている」人1,000人の年代は、「40代」(31.9%)が最も多く、「40代」と「50代」で全体の6割程度を占めていました。
- この2,000人のうち、テレワークの希望がある人(「雇用されている」人677人、「雇用されていない」人627人)に、希望する働き方を尋ねたところ、結果は図1のとおりでした。

※図の%値は各選択肢を選択した人の割合
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テレワークの希望がある人の希望する働き方は、「雇用されている」人及び「雇用されていない」人ともに「テレワークと出勤の組み合わせ」が最も多い結果でしたが、その割合は、「雇用されている」人では7割近く(66.6%)が選択している一方で、「雇用されていない」人は4割程度(41.0%)の選択にとどまっており、「雇用されていない」人では、「テレワークのみ」(32.1%)又は「わからない」(25.5%)を選択した人が、合わせて過半数を占めていました。
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次に、テレワークを希望しない人(「雇用されている」人178人、「雇用されていない」人169人)に、希望しない理由を複数回答で尋ねたところ、結果は図2のとおりでした。

※図の%値は各選択肢を選択した人の割合
- 「テレワークの希望がない」人のテレワークを希望しない理由は、「雇用されている」人では、「仕事内容が向いていない」(66.9%)が6割を超えて最も多い結果でした。「雇用されていない」人では、「テレワークができるスキルがない」(42.0%)が最も多く、次いで「自宅の環境が整っていない」(32.0%)が多い結果でした。
障害者雇用への示唆
- 今回のアンケート調査の結果から、「雇用されている」人と「雇用されていない」人では、希望する働き方やテレワークを希望しない理由に、異なる傾向があることが分かりました。
- 今後希望する働き方については、アンケート調査後に行った「雇用されている」人に対するヒアリング調査でも、テレワークと出社の併用を希望する人が多くいらっしゃいましたが、その理由としては、テレワークと出社の双方の利点をいかして働きたいという思いがうかがえています。
- テレワークから職場への揺り戻しも見られる昨今ではありますが、業務の特徴や障害特性を踏まえて、働き方を柔軟に考えることは、今後も求められることと思われます。「雇用されていない」人のテレワークを希望しない理由を踏まえると、障害者のテレワークを推進するためには、スキル不足の懸念を払拭するための研修や訓練等を充実させることや障害状況を踏まえた環境整備等の支援を充実させることが求められていると言えるでしょう。
- 本調査研究では、障害者アンケート調査、当事者ヒアリング調査及び企業ヒアリング調査の3つの調査を実施しており、その結果から、障害のある方がテレワークに期待する内容、企業が障害者雇用にテレワークを活用する背景、そしてテレワークを巡る課題に対する企業や障害がある方の取組などを明らかにしています。障害がある方をテレワークで雇用している企業の方々や障害がある方のテレワークを検討されている企業の方々のほか、テレワークで働く障害がある方を支援する方々にご活用いただければ幸いです。