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週20時間未満の就職希望と雇用の状況

データの読み方・考え方


  • ここで紹介するのは、「障害者の週20時間未満の短時間雇用に関する調査研究(No.165)」において、障害者職業総合センターが、2020年に実施した調査の一部です。
  • 週20時間未満で就労している又は就労を希望している障害者のニーズや実態等を把握することを目的として、就労継続支援B型事業所(※1)に対してアンケート調査を実施しました(回答事業所5,709所)。

※1 障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスの一つ。一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行っている。

 
  • 週20時間未満の就職を希望する者が「いる」と回答した927事業所を対象に、事例の詳細(1事業所最大5事例まで)について回答を求めたところ、2,242事例が得られました。
  • 得られた2,242事例の障害種別は、「精神障害」が多くの割合を占めました。【図1】
  • また、週20時間未満の就職を希望する理由として最も多く選択されたのは、「体調の変動・維持」であり、次いで「症状・障害の進行」でした。【図2】


就労継続支援B型事業所に対して行ったアンケート調査(回答事業所5,709所)の結果、週20時間未満の就職を希望する者が「いる」と回答した927事業所から得られた2,242事例について、その障害種別を円グラフで示している。回答は、精神障害68.7%、知的障害15.8%、身体障害8.4%、発達障害4.7%、高次脳機能障害1.3%、難病0.6%、無回答0.4%となっている。
図1【障害種別】週20時間未満の就職を希望する事例(単数回答)
就労継続支援B型事業所に対して行ったアンケート調査(回答事業所5,709所)の結果、週20時間未満の就職を希望する者が「いる」と回答した927事業所から得られた2,242事例について、週20時間未満の就職を希望する理由を横棒グラフで示している。回答は、「体調の変動・維持」70.9%、「症状・障害の進行」24.0%、「家庭の事情」12.0%、「加齢に伴う体力・能力等の低下」10.9%、「入院治療」1.0%、「その他」12.6%、「無回答」0.2%となっている。
図2【希望理由】週20時間未満の就職を希望する事例(複数回答)

  • また、週20時間未満の就職を希望する理由を障害種別に見てみると、「精神障害」では「体調の変動・維持」、「知的障害」では「家庭の事情」及び「その他」、「身体障害」では、「加齢に伴う体力・能力等の低下」及び「その他」が統計的に有意に多くなっていました。
  • 「その他」の理由としては、「知的障害」では「他事業所やサービスと併用しながら短時間就労を希望」、「身体障害」では「少ない日数を希望」といった内容が挙げられていました。
  • 次に、2017~2019年度の一般就労移行者のうち、労働時間が週20時間未満とする雇用契約を締結した者が「いる」と回答した345事業所を対象に、事例の詳細(1事業所最大5事例)について回答を求めたところ、486事例が得られました。
  • 得られた486事例の障害種別は、「精神障害」が多くの割合を占めました。【図3】
    また、労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した理由として最も多く選択されたのは、「体調の変動・維持」であり、次いで「症状・障害の進行」でした。【図4】
     
2017~2019年度の一般就労移行者のうち、労働時間が週20時間未満とする雇用契約を締結した者が「いる」と回答した345事業所から得られた486事例について、その障害種別を円グラフで示している。回答は、精神障害71.0%、知的障害19.8%、身体障害4.3%、発達障害3.1%、高次脳機能障害1.6%、無回答0.2%となっている。
図3【障害種別】週20時間未満とする雇用契約を締結した事例(単数回答)
2017~2019年度の一般就労移行者のうち、労働時間が週20時間未満とする雇用契約を締結した者が「いる」と回答した345事業所から得られた486事例について、労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した理由を横棒グラフで示している。回答は、「体調の変動・維持」61.9%、「症状・障害の進行」20.4%、「加齢に伴う体力・能力等の低下」6.0%、「家庭の事情」5.8%、「入院治療」0.8%、「その他」26.7%、「無回答」0.4%となっている。
図4【希望理由】週20時間未満とする雇用契約を締結した事例(複数回答)
 
  • 労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した理由を障害種別に見てみると、精神障害では「体調の変動・維持」、知的障害では「その他」、身体障害では「症状・障害の進行」が統計的に有意に多くなっていました。
  • 知的障害者の「その他」の内容としては、求人内容や雇用形態など会社側の条件であることなどが挙げられていました。
  • 労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した会社の規模は、「50人未満」が最も多く、企業規模で見ると300人未満の企業が約7割を占めていました。【図5】
  • 職業については、「サービス」が約3割と最も多く、次いで「運搬・清掃・包装等」が約2割と多くなっていました。【図6】


前の設問で、労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した会社の規模を円グラフで示している。回答は、「50人未満」47.3%、「50~99人」12.1%、「100~299人」13.2%、「300~499人」4.1%、「500~999人」3.3%、「1,000人以上」11.7%、「無回答」8.2%となっている。
図5【企業規模】週20時間未満とする雇用契約を締結した事例(単数回答)
前の設問で、労働時間を週20時間未満とする雇用契約を締結した職業について円グラフで示している。回答は、「サービス」33.7%、「運搬・清掃・包装」23.0%、「販売」10.9%、「生産工程」10.1%、「事務」7.2%、「専門・技術」5.8%、「その他」5.1%、「無回答」4.1%となっている。
図6【職業】週20時間未満とする雇用契約を締結した事例(単数回答)

なお、本稿では、就労継続支援B型事業所のみを取り上げましたが、同様の調査を就労継続支援A型事業所(※2)に対しても行っています。また障害種別の分析や企業ヒアリング等も行っております。詳しくは、報告書をご確認ください。

※2 障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスの一つ。一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行っている。
 
 

障害者雇用への示唆

  • 今回の調査では、就労継続支援事業所の利用者において、週20時間未満の雇用に対する障害者のニーズが少なからず存在することが把握されました。また、過去に就労継続支援事業所から一般就労に移行した者の中に、週20時間未満で働く事例が確認され、主に300人未満の企業で様々な業務に従事していることがわかりました。
    上記で一部紹介したアンケート調査とは別に実施した企業ヒアリング調査では、週20時間未満で障害者雇用を行った事例について聞き取りを行い、障害者の力を職場で活かそうとする事業主の姿勢や、障害者雇用のための職務創出や障害特性等に対する様々な工夫や配慮により、週20時間未満の障害者雇用が支えられ、事業主及び雇用されている障害者の双方にメリットをもたらしていることが見受けられました。
    本調査研究の終了後、2022年12月に「 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(法律第104号)」が公布され、2024年4月から、雇用義務の対象外である週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者について、就労機会拡大のため、実雇用率において算定できるようにするよう見直しが行われる予定です。
    また、2024年4月から障害者雇用率が段階的に引き上げられることも予定されています。 (2023年2月時点)
    今後は、週20時間未満で障害者を雇用する又は雇用しようと考える事業主及び就労を望む障害者のニーズを踏まえ、障害者の多様な働き方が推進されるとともに、障害者雇用の質の向上が図られることが望まれます。