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障害のある従業員の上司・同僚の意識

データの読み方・考え方

  • ここで紹介するのは、「障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究(資料シリーズNo.105)」において、障害者職業総合センターが、2021年に実施した調査の一部です。
  • 障害のある従業員の上司・同僚に調査を行うため、web調査会社が保有する18歳から69歳のモニター会員(12,642名)を対象としたスクリーニング調査で、「①配慮が必要な障害者と同じ職場で働いている」かつ「②障害者の採用に関わる立場にない」という条件を満たす対象者を選定し、条件に合致した1,117名のうち、本調査の回答をすべて完了した1,000名を対象に集計を行いました。
  • 回答者1,000名の平均年齢は50.2歳(最小値19.0歳、最大値69.0歳)で、50代の回答者が最も多く(41.6%)なっていました。
  • 回答者1,000名に、障害のある従業員に「障害がある」と判断した理由を尋ねたところ、結果は図1のとおりでした。
回答者1,000名に、障害のある従業員に「障害がある」と判断した理由を尋ねた結果を横棒グラフで示している。
回答は、1,000名による複数回答で、図の%値は1,000名のうち各選択肢を選択した人の割合である。
上から順に「職場(人事や上司)から説明があった」50.5%、「普段の勤務の様子から判断した」35.3%、「その方から聞いた」16.6%、正式な説明ではないが噂で聞いた」11.1%、「その方が休職していた」1.8%、「その他」4.9%となっている。
図1 障害があると判断した理由(複数回答)
(1,000名による複数回答。図の%値は1,000名のうち各選択肢を選択した人の割合。)
  • 同じ職場の従業員について、「障害がある」と判断した理由で最も多かったのは、「職場(人事や上司)から説明があった」(50.5%)で、次いで多かったのは「普段の様子から判断した」(35.3%)でした。
  • 「職場(人事や上司)から説明があった」又は「その方から聞いた」を選択しなかった回答者の割合は39.0%であったことから、障害の有無に関する正確な情報を得ていないけれども、普段の様子等の周辺情報などから「障害がある」と認識している回答者が4割程度いらっしゃることがわかりました。
  • 次に、障害のある従業員の方と働く上で課題に感じていることについて、当てはまるもの全てを選択していただいたところ、結果は図2のとおりでした。
障害のある従業員の方と働く上で課題に感じていることについて、当てはまるもの全てを選択していただいた結果を横棒グラフで示している。
回答は、1,000名による複数回答で、図の%値は1,000名のうち各選択肢を選択した人の割合である。
上から順に、「困っている様子はみられるが、自分が何をすればよいかわからない」14.8%、「障害のある方のフォローのために自分の業務量が増える」11.5%、「日常的な接し方がわからない」10.5%、「会社から受けた説明と、実際の障害のある方の状況が違う」3.6%、「その他」1.4%、「特になし」64.9%となっている。
図2 障害のある従業員と働く上での課題(複数回答)
(1,000名による複数回答。図の%値は1,000名のうち各選択肢を選択した人の割合。)
  • 障害のある従業員と働く上で課題に感じていることとして最も多かったのは、「特になし」(64.9)で、半数以上の方は課題を感じていないことが示されました。
    課題の内容では、「困っている様子はみられるが、自分が何をすればよいかわからない」(14.8%)が最も多く選択されており、対応の仕方がわからずに戸惑われている様子がうかがえます。
  • また、この設問で何らかの課題があると回答した方は351名でした。その351名の方々に対して、課題を解決するために行ったことについて、当てはまるもの全てを選択していただいたところ、結果は図3のとおりでした。
前の設問で、何らかの課題があると回答した351名の方々に対して、課題を解決するために行ったことについて、当てはまるもの全てを選択していただいた結果を横棒グラフで示している。 
回答は、351名による複数回答で、図の%値は351名のうち各選択肢を選択した人の割合である。
上から順に、「障害のある方と課題について共有し、話し合いを行った」20.8%、「会社に相談した」13.7%、「対応方法に関する勉強会に参加した」10.5%、「支援機関の支援を受けた」3.6%、「その他」2.0%、「特に何もしていない」55.6%となっている。
図3 障害のある従業員と働く上での課題を解決するために行ったこと(複数回答)
(351名による複数回答。図の%値は351名のうち各選択肢を選択した人の割合。)
  • 課題を解決するために行ったことについて、「特に何もしていない」(55.6%)が最も多く、半数以上の回答者が課題を感じていても特に解決のための行動を行っていないことが示されました。
  • 一方、課題解決のために行った内容としては、「障害がある方と課題について共有し、話し合いを行った」(20.8%)が最も多く選択されました。
     
  • さらに、何らかの課題があると回答した351名に、課題を解決するために会社に求めることがあるかどうか、当てはまるもの全てを選択していただいたところ、結果は図4のとおりでした。
何らかの課題があると回答した351名に、課題を解決するために会社に求めることがあるかどうか、当てはまるもの全てを選択していただいた結果を横棒グラフで示している。
回答は、351名による複数回答で、図の%値は351名のうち各選択肢を選択した人の割合である。
「職場の配置前に配慮事項について説明をしてほしかった」37.0%、「障害特性等について、専門家による研修をしてほしかった」25.1%、「専門の職員を配置してほしい」20.8%、「その他」2.6%、「特になし」31.1%となっている。
図4 課題解決のために会社に求めること(複数回答)
(351名による複数回答。図の%値は351名のうち各選択肢を選択した人の割合。)
  • 課題を解決するために会社に求めることについて、「職場の配置前に配慮事項についての説明をしてほしい」(37.0%)が最も多く選択されましたが、「特になし」(31.1%)も一定の割合がありました。
  • 図3と図4の二つの設問を合わせて集計したところ、23.4%の回答者が、課題を感じていても課題を解決するための行動は特に何もしておらず、会社に求めることは特にないと回答していました。
     

障害者雇用への示唆

  • 先行研究では、障害のある方の上司や同僚との人間関係の悪化が、障害のある方の離職理由の一つとなっていることが明らかとなっており、離職を防ぐための雇用管理として、人間関係に配慮することが必要であることが指摘されています。
  • また、障害のある方の雇用継続における同僚の影響や役割に関する研究からは、上司・同僚がサポートを提供することも、同僚が障害のある方の雇用継続に果たす役割として挙げられているところです。
  • サポートに関して本稿では取り上げていませんが、今回の調査では、障害のある従業員に対して提供したことのあるサポートについても調査していますので、ぜひ『資料シリーズNo.105 障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究』をご覧ください。ちなみに、障害のある従業員に対して提供したことのあるサポートについては、「特に何もしていない」(43.7%)が最も多い回答となっていますが、半数以上の回答者が何らかのサポートを提供していることが示されています(提供しているサポートとして最も多く選択されていたのは「障害のある方に声をかけている」(31.2%)でした)。
  • 今回の調査では、障害のある従業員と働く上での課題について、「特になし」の回答が最も多い結果でしたが、課題の内容として「困っている様子はみられるが、自分が何をすればよいかわからない」や「日常的な接し方がわからない」といった回答もみられているところです。
  • さらに、課題解決のために会社に求めることとして、「職場の配置前に配慮事項について説明してほしい」や「障害特性等について、専門家による研修をしてほしい」といった回答が一定程度あることを踏まえると、特定の従業員のみならず社内の幅広い従業員に対して適切な情報提供や研修の機会を提供することで、障害のある従業員と一緒に働く上司や同僚が障害特性や配慮事項を理解することにより、仕事上の適切な配慮の提供と職場の良好な関係構築につながることが期待されます。