うつ病等の休職者に対する復職条件、企業の措置、復職率
データの読み方・考え方
- ここでご紹介するのは、『職場復帰支援の実態等に関する調査研究(調査研究報告書No.156)』において、障害者職業総合センターが2019年に調査時点における国内すべての上場企業3,740社を対象として実施した調査の一部です。
- 有効回答465社のうち、休職制度等(※脚注1)がある企業は457社(98.3%)でした。
- このうち、調査日から過去3年間に「連続1ヶ月以上の療養を必要とする社員がいなかった」と回答した58社を除く399社のうち、「復職判断には条件がある」と回答した企業は388社(97.2 %)でした。
- この388社に、復職判断の条件を自由記述方式で尋ねたところ、386社から下の表のような回答がありました。
復職判断の条件の種類 | 復職判断の条件の例 |
---|---|
復職意思 | 復職の意思がある(復職願が提出されている) |
生活リズム | 生活リズムが整っている |
意欲・思考の回復 | 職場復帰に対する意欲を示している 休職原因の振り返りができる 再発防止策の整理ができる |
試し出勤 | 通勤時間帯に一人で安全に通勤できる 定時勤務、試し出勤ができる 所定労働日を連続 20 日全日出勤できる |
試し勤務 | 短時間勤務ができる 決まった勤務日、所定労働時間の就労が継続して可能 休職中の事業所リハビリを 1 ヶ月間予定通り実行できる 連続 10 日間以上の勤務ができる 上司の指示に従って1日8時間、週5日健康に働くことができる 休職前の状態で労務が提供できる状態 |
医師の判断 | 主治医から復職可とする診断書が出ている 企業独自の診断書に医師が復職可である旨を記入できる 企業が指定する医師から復職可とする診断書が出ている 産業医による復職可(通常勤務可)の判断が出ている |
その他 | 家族の支援状況 職場の受入体制 復職支援プランの作成 |
- 386社が回答した復職判断の条件は、表に示す「復職意思」、「生活リズム」、「意欲・思考の回復」、「試し出勤」、「試し勤務」、「医師の判断」、「その他」の7種類のうち、1種類だけの企業もありますが、多くの企業では2種類以上に及んでいました。
- 休職制度等がある企業
457社 に対し、メンタルヘルス不調の社員の休職から復職までの各段階で行う措置について尋ねました。まず、「メンタルヘルス不調による休職等(※脚注2)の期間中、休職者等(※脚注3)に対して行った措置に当てはまる番号のすべてに○を付けてください。」と問い、結果は下の図1のとおりでした。図1の%値は、457社のうち、各選択肢を選択した企業の割合を示しています。

(457社による複数回答。図の%値は、457社のうち各選択肢を選択した企業の割合。)
- 1では、メンタルヘルス不調の休職者等に対する措置で最も多かったのは、「診断書の提出の指示」
(90.8 %)でした。 次いで多かったのは「定期的な連絡・状況確認・相談」で、その方法は「電話・メール」が88.6%、「訪問・面談」が59.3%で、「電話・メール」の方が多い傾向にありました。 - なお、図1の「事業場外資源」とは、企業における社員のメンタルヘルス不調の予防・改善や職場復帰を社外の立場から支援する機関を意味し、地域障害者職業センターの職場復帰(リワーク)支援、医療機関の復職支援(リワーク)プログラム、コンサルタント会社等の従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)等があります。本調査研究では、このような事業場外資源の利用状況についても調査しました。それによると、457社の約1/3(33.9%)が、企業又はその社員が事業場外資源を利用していました。
- 次に、休職制度等がある企業
457社 に対し、「復帰時または復職後に休職者に対して貴社または産業医等が行った措置に当てはまる番号のすべてに○を付けてください(ストレスチェック制度のように通常社員全員を対象とする措置を除く)。」と問い、結果は下の図2のとおりでした。図2の%値は、457社のうち、各選択肢を選択した企業の割合を示しています。

(457社による複数回答。図の%値は、457社のうち各選択肢を選択した企業の割合。)
- 図2では、「残業や休日勤務の制限または禁止」を実施した企業が67.6%で最も多く、次いで「就業時間の短縮」が61.9%、「定期的な面談」が60.2%、「本人の状況に応じた業務内容の調整」が53.0%という結果でした。
- また、社員の職場復帰の状況は、図3の通りでした。図3は、休職制度等がある企業
457社 のうち、連続1 ヶ月以上の療養を必要とする社員がいなかった58企業を除く399企業に対し、「過去3年間の休職者等のうち、復職できた方の割合はどのくらいでしたか(復職後すぐの退職は復職に含めずにお答えください)」と問い、選択肢から択一式で回答を求めた設問の回答で、399社のうち、 各選択肢を選択した企業の割合を示しています。

(399社のうち各選択肢を選択した企業の割合。四捨五入しているため合計は100%にならない。)
- 図3によれば、
11.3% の企業では休職者全員が復職しており、7~8割程度復職できたと回答した企業が24.1%で最も多い結果でした。 - 復職した社員が一人もいないのは6.5%でした。
障害者雇用への示唆
- 休職者等の社員に対して多くの企業で実施されていた「定期的な連絡、状況確認、相談」については、復職者調査で「役に立った」という回答が得られており、先行研究においても、再休職防止や職場再適応に効果があることが示されています。
- 復職者に対して多くの企業で実施されていた事業外資源や企業の担当者による「定期的な面談」については、社員の不安な気持ちの解消、自身の状態の客観的な把握、早期の問題解決など、面談を通し達成できるものは大きいことがうかがえており、先行研究においても、再休職防止や職場再適応に効果があることが示されています。
- 事業場外資源の活用については、保健師や産業医、産業保健スタッフといった専門スタッフがいない中小企業には支援内容等に関する情報が十分に行き届いていない可能性がありますので、より一層周知し、利用しやすくしていくことが必要と思われます。
※脚注
※1 休職制度等
この調査で休職制度等とは、「年次有給休暇以外で、連続して1ヶ月以上、メンタルヘルス不調を伴う私傷病の社員に適用し得る休暇・休職・休業・欠勤等の規定や慣行」を意味しています。
※2 休職等
この調査で休職等とは、「年次有給休暇以外で、連続して1ヶ月以上、メンタルヘルス不調を伴う私傷病の社員に適用し得る休暇・休職・休業・欠勤等」を意味しています。
※3 休職者等
この調査で休職者等とは、※1の休職制度等により仕事を休んでいる社員を意味しています。