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テーマ13 高次脳機能障害・難病・若年性認知症

※ 発表資料を掲載していない方については、発表論文を参照してください。

1 札幌での社会資源の少ない国家公務員における高次脳機能障害者の復職支援 ~B型事業所が行った復職支援の1例~

発表者

伊藤 裕希(特定非営利活動法人コロポックルさっぽろ 就労継続支援B型事業所クラブハウスコロポックル 管理者・サービス管理責任者・就労(準備)支援コーディネーター)

発表概要

(国家)公務員が傷病等により休職した際に利用出来る社会資源には限りがある。厚生労働省が平成29年3月に休職期間中の就労系サービスの利用に関して通知して以降、休職中の利用に関して各市町村にサービス申請を行えるようになった。現状として全国的にサービスの支給決定に関して差があり、支給を認められないケースもある。本事例では札幌でB型のみ支給決定が認められたケースで復職支援を行った取り組みについて報告したい。

2 失語症者の復職支援における会話支援アプリの活用可能性の検討 ~聴覚障がい者向け会話支援アプリ「こえとら」活用事例から~

発表者

加藤 朗(名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部就労支援課 就労支援員)

発表概要

聴覚障がい者向け会話支援アプリ「こえとら」(スマホ上で動作するアプリ)は、定型文を登録し音声読み上げが可能。これを中重度の失語症者3名に対し、訓練~復職支援の過程で適宜活用、その効果を確認した。「社員名、取引先名を登録し音声読み上げで復唱練習」「あらかじめ登録した作業名を見本として、業務日誌に作業名を転記」等々、実際の活用事例を報告。「こえとら」等「会話支援アプリ」の今後の活用可能性を提案する。

3 高次脳機能障害の方の復職支援に向けた取り組みからわかる札幌市の現状と今後の展望

発表者

角井 由佳(特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ札幌 就労支援員(作業療法士))

発表概要

高次脳機能障害の方の復職支援は働き方改革の柱であると考える。昨年、札幌市での復職支援実現に向けて取り組み、高次脳機能障害の方の復職へのニーズが高いことがわかり、今年4月より札幌市でも就労系サービスを利用しての復職支援が可能となった。今回の取り組みの中で考えられた、札幌市の現状の課題を、研究結果をもとに報告するほか、復職の拡大に向けて、今後行うべき取り組みについて報告する。

4 極度の易疲労性を呈した高次脳機能障害のある方の復職支援の一事例

発表者

田中 淳子(特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ鳳)

発表概要

高次脳機能障害の復職支援について報告する。極度の易疲労性がある。訓練やグループワークを通じてご本人が理想と現実をすり合わせていかれた。復職に向け、妻同席の話合いを重ねた。また同時並行で企業とともに妻も交え、復職プランを検討する面談を実施。加えて、会社内で高次脳機能障害と本人特性について説明する場を設けていただいた。家族、会社との関わりのどちらかが欠けても今回の復職には至れなかった。

5 急性期から維持期のリハビリテーション専門職ができる復職支援 -理学療法士と社会福祉士の視点からの考察-

発表者

宮城 麻友子(医療法人清仁会 洛西シミズ病院リハビリテーション科 理学療法士)

発表概要

今回、当医療法人所属の療法士200名、社会福祉士8名に以下のアンケートを実施(回収率72.6%)。①退院後、就労に関するサービス利用をした者の有無、サービス名、②最終目標が復職であったが至らなかった原因。その結果①「利用した」は全体の22.5%、②「復職に至らなかった原因」として「高次脳・身体機能障害後遺症」が最多で15.2%であった。この結果から療法士が復職支援に関して留意すべきことを考察した。

6 クロスジョブ支援に基づく高次脳機能障害のある方への就労支援での気づき

発表者

村上 可奈(特定非営利活動法人クロスジョブ クロスジョブ阿倍野)

発表概要

今回、クロスジョブで携わった高次脳機能障害のある方への就労支援について、整理し報告する。事例の経過に関して、クロスジョブの支援のフローチャートを用い、第1~4期までの各期で得られた気づきや体験を整理した。その結果、対象となる方によって各期にかかる時間や訓練内容、関係機関との連携について異なる点を踏まえて、個別支援の大切さともに共通して必要となってくるものを考察する。

7 院内新規就労者に対する就労支援の取り組み ~ワークサンプル幕張版を用いた職能評価と環境調整が有効であった一例~

発表者

石川 篤(東京慈恵会医科大学附属病院 リハビリテーション科 作業療法士)

発表概要

当院では、人材派遣会社と連携を図り就労支援を展開している。症例(失語症)は、派遣先での就労を経て当院への採用が決定した。そこで、就労前に医学的な評価とワークサンプル幕張版での職能評価を行い、国際生活機能分類(ICF)を用いて周辺の情報を整理した。その情報を指導係に提供し、事前に就労環境を整えた。就労後も定期的な情報共有を行い、現在定着に至っている。症例を通じ、評価と職場定着について考察し報告する。

8 高次脳機能障害者の就労に関する研究 -「職業準備性」「仕事環境」の主観評価に着目して-

発表者

上杉 治(放送大学大学院文化科学研究科/社会福祉法人聖隷福祉事業団 浜松市リハビリテーション病院リハビリテーション部作業療法室 作業療法士)

発表概要

職業準備性と仕事環境を本人がどう感じているか分析した。対象は県西部の高次脳機能障害者21名。一般就労群14名、福祉的就労群7名。対象者に基本属性、MMSE、就労支援のチェックリスト、仕事環境影響尺度を実施し、統計解析をした。結果は一般就労群は福祉的就労群に対し、年齢が有意に高く、共同作業にポジティブな印象をもち、仕事課題には魅力を感じていないが、職場には物理的な快適さを感じていた。

9 記憶障害に対する体系的な学習カリキュラムの紹介 ~職業センターにおける試行状況~

発表者

三浦 晋也(障害者職業総合センター職業センター開発課 障害者職業カウンセラー)

発表概要

障害者職業総合センター職業センターでは、平成29年度の海外研修(オーストラリア)の際に情報を得た、Epworth Health Care(メルボルン)で行われているMemory Skills Trainingについて国内向けの改良を行っている。本発表ではその試行状況についての紹介を行う。

10 高次脳機能障害者の職場の上司や同僚等を対象とするコミュニケーションパートナートレーニング

発表者

土屋 知子(障害者職業総合センター 研究員)

発表概要

コミュニケーションパートナートレーニング(CPT)は、高次脳機能障害者の周囲の人的環境に対して、適切なコミュニケーションについての情報提供や助言を行い、練習の機会を提供する支援技法である。高次脳機能障害のある労働者の職場適応促進を目的とするCPTプログラムを開発し、高次脳機能障害者を雇用する企業等の従業員(上司や同僚、企業在籍型ジョブコーチなど)を対象として、プログラムの効果を検討した。

11 難病患者の就労支援の地域連携フローの明確化と職業リハビリテーションマニュアル開発に向けた現場支援者の実態やニーズの把握

発表者

春名 由一郎(障害者職業総合センター 副統括研究員)

発表概要

難病患者が就職前から就職後に経験する困難の解決には、仕事の身体的負荷と休日・休憩・通院等による回復のバランスのとれる仕事への就職と、体調変動等に対する職場の理解・配慮の確保が重要である。しかし、現場支援者からの声により、保健医療機関での難病患者の相談は就労支援につながりにくく、一方、就労支援機関側でも障害者手帳のない難病患者への支援や治療と仕事の両立支援のノウハウが不足していることが明確になった。

12 難病患者の就労・雇用状況からの就労支援の考察 ~調査・研究と現場の支援から見えてくる難病者の‘働く‘実像を考える~

発表者

中金 竜次(就労支援ネットワークONE 就労支援 代表)

発表概要

就労支援ネットワークONEの、独自調査・指定難病患者、難治性疾患患者へのアンケート・インタビューを実施。既存の自治体や研究者の難病患者の就労調査とあわせ、難病患者の就労と雇用の現状、障害者雇用枠から一般雇用枠へと多様な疾患患者が、どのように就労し、どんな支援や資源を必要としているのか、そこから見えてくる、今後の難病患者の就労支援と雇用のあり方を考察する。

13 若年性認知症の方の就労から定着までの支援

発表者

藤野 朗子(特定非営利活動法人ほっぷの森 就労支援センターほっぷ・就労定着支援センターほっぷの実 支援員・職場適応援助者)

発表概要

当就労支援事業所では高次脳機能障害をお持ちの方に多く利用をいただき、就労定着の実績を残してきた。その経験を基礎とし、2017年より新たに若年性認知症の方を受け入れている。当事業所を利用いただいた若年性認知症の方で、一般企業へ就職し、ジョブコーチ支援から定着支援まで行った事例を報告する。

14 東京障害者職業センター多摩支所との連携による若年性認知症の再就職の可能性

発表者

来島 みのり(高齢者福祉総合施設マザアス日野 東京都多摩若年性認知症総合支援センター 若年性認知症支援コーディネーター)

発表概要

再就職前から再就職後も東京障害者職業センター多摩支所と連携をはかっている。この連携による若年性認知症の再就職の可能性と障壁を、実践事例の分析をもとに明らかにする。

(注)発表概要は、各発表者から提出していただいた内容を転記しています。