(ここから、本文です。)
-これからの事業主支援の標準的な実施方法-

資料シリーズ No.87
障害者雇用に係る事業主支援の標準的な実施方法に関する研究

執筆者(執筆順)

執筆者
野中 由彦 (障害者職業総合センター 主任研究員)

活用のポイント

障害者雇用が転換期を迎えようとしている中で、事業主支援のニーズはますます高まる一方、その実施方法については、まだまだ旧来の方法から抜け出せていない状況が見られる。この研究では、障害者雇用に係る事業主支援に先見性を持つ専門家、先駆的な事業主支援を進めている支援機関等から、今後は事業主支援の標準的実施方法としてどのような進め方が相応しいかについてヒアリングした結果をまとめた。また、事業主支援ニーズ等についての企業アンケート調査結果を掲載した。主として、今後事業主支援を充実させていこうとする支援機関や障害者雇用に取り組む企業において活用されることが期待される。

研究の目的と方法

この研究では、事業主支援のニーズや、実際に展開されている先駆的な事業主支援の実施方法について情報収集し、分析することにより、事業主支援の標準的な実施方法に関するガイドとして取りまとめることを目的して、事業主支援に関する文献調査、専門家ヒアリング、支援機関ヒアリング、企業へのアンケート調査を実施した。

研究の結果得られた知見

事業主支援は、対象者や実施の時期によって、また、企業の障害者雇用の経験の程度、雇用される障害者の障害種類、地域の事情等によって、そのニーズも求められる支援内容も大きく異なる。事業主支援を効果的に行うには、支援者は、その役割を明確にし、必要な準備を整えて臨むことが必要である。事業主支援のニーズの中で最も多いものは、障害や障害特性について正しく理解するための支援である。過去においては、職業評価の結果等を伝えるのが一般的であったが、個人情報の保護等の問題で難しくなっている背景がある。そうした中で、企業における実習を障害特性の理解や配慮事項の確認のための事業主支援と位置づけて実施し成果を上げているところが増えている。障害者が実際に働いてみる機会をつくることにより、企業はその人の障害特性や配慮事項を支援者のサポートを受けながら具体的に把握することができる。さらには就職後の定着のための支援が重要であるとの認識が広まっており、この部分が事業主支援の共通課題であることが示された。また、事業主支援の実施体制としては、過去には支援機関が単独で企業に関わっていくのが一般的であったが、地域の支援機関がネットワークを形成し協同して事業主支援にあたる形が増えており、役割を分散して相互に協力し合うことによって、それぞれの支援機関がその特徴を活かした形で事業主支援を行おうとする動きがみられる。また、事業主支援のためのツールを作成し活用するなど、事業主支援においてさまざまな工夫が積み重ねられている。

ダウンロード

全文

冊子在庫

あり