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調査研究報告書 No.42
知的障害者の学校から職業への移行課題に関する研究─通常教育に在籍した事例をめぐる検討─

執筆者(執筆順)

執筆者
望月 葉子 (障害者職業総合センター 研究員)

(目的・方法)

特殊教育諸学校を選択せずに通常学級への進学を希望する保護者が多くなってきており、通常学級を卒業し、入職に際して職業リハビリテーションサービスが必要となる知的障害青年の存在が無視できなくなってきている。しかしながら、彼らに対する支援の課題や方法が明らかになっているとは言い難い。通常学級から職業自立をめざす知的障害者に対する支援の課題・方法を検討することをを目的とした。

学校から職業への移行課題に焦点をあて、学校と職業リハビリテーションとの連携の課題の検討を行った。具体的には、文献研究並びにヒアリングを実施し、その結果の解析を行うことにより、①養護学校に在籍する生徒の進路問題との比較を通して、通常学級に在籍する知的障害児の進路問題に関する現状、問題点を把握した。②知的障害者の学校から職業への移行の課題に関する問題を整理した。

(結果の概要)

通常学級にはかなりの知的障害者が在籍していることが推計された。こうした若者が職業リハビリテーション・サービスを利用する場合には、学校卒業後に「一般扱いでは困難」という事態に直面し、障害と向かい合うことになる。

知的障害者の就職指導をめぐる現代的な課題とは、学校在学期間が長期化する環境にあって少子化傾向が進み、新規学卒システムでは雇用保障ができなくなった場合に検討すべき課題である。こうした課題は、教育歴の作り方とも関連しており、通常教育に在籍する知的障害者が多くなった時代の親子の障害の受けとめ方の問題でもある。

通常学級に在籍する知的障害者にとっては、職業的社会化が不十分なままで卒業していくことによる問題が大きい。こうした未達成課題については、障害の有無に関わらず、通常教育において個に対応する教育計画が成立していたかどうか、という問題とも関連がある。そして、現実に課題が未達成の場合には、卒業後の就労支援が必要になる。

事例に基づく検討からは、障害受容と職業的社会化の課題をあわせ持つ事例が多いこと、これらの課題は通常教育の中ではとりあげられてこなかったこと、などが明らかとなった。通常教育に在籍する障害生徒の進路指導では、職業リハビリテーションに関する理解を深めることが必要になるとともに、課題解決の方法を探るうえで通常教育と特殊教育との連携が求められており、通常教育を卒業後、就職に際して職業リハビリテーションを利用する生徒のために移行支援のモデルを検討することが求められる。

目次

  • 序論 知的障害者の学校から職業への移行をめぐって
  • 第1章 知的障害のある若者の教育の場の選択について:学校基本調査の結果が示唆すること
  • 第2章 通常学級に在籍した知的障害のある事例が示唆すること
  • 第3章 通常教育に在籍する知的障害者の移行支援の課題をめぐって

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