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調査研究報告書 No.23
重度障害者の職域拡大のための総合的就労支援技術の開発-その4-上肢障害者用大型・小型特殊キーボードの開発

  • 発行年月

    1998年01月

  • 職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目

    就労支援機器の開発

執筆者(執筆順)

執筆者
岡田 伸一 (障害者職業総合センター 主任研究員)
奥 英久 (岡山理科大学)
坊岡 正之 (兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所)
小畑 順一 (心身障害児総合医療療育センター)
相川 孝訓 (国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
畠山 卓朗 (横浜市総合リハビリテーションセンター)

(概要)

本報告書は、障害者職業総合センター適応環境研究担当が平成5年度から平成10年度までの予定で実施している特別研究「重度障害者の職域拡大のための総合的就労支援技術の開発に関する研究」の一環として平成6年度から3年計画で開発した、上肢障害者用大型・小型特殊キーボードの開発経過をとりまとめたものである。

第1章

本キーボード開発の目的と全般的な経過が述べられる。上記特別研究では、今日の職場において急速にコンピュータ利用が普及している状況をふまえ、障害者のコンピュータ・アクセスを改善して、その雇用の拡大を図ることを目的としている。本キーボード開発においても、上肢障害者の障害特性に合わせ、通常キーボードよりも大型及び小型で、種々の付加機能を備えたキーボードを開発し、上肢障害者のコンピュータ利用を可能にする、あるいはコンピュータ利用の能率向上と疲労軽減を目的としている。そのために、本開発では都合3回の試作を重ねた。大小5サイズを製作した平成6年度の第一次試作に始まり、平成7年度にはさらに3サイズを加えるとともに赤外線リモコン装置をはじめ種々の使いやすさに配慮した改良を加える第二次試作を行った。そして、第二次試作キーボードの詳細な評価を行い、その結果を踏まえ、製品化のベースとなる最終製作(第三次試作)を平成8年度に行った。

第2章

平成7年度に行った第二次試作の内容が述べられる。第一次試作で製作された大型、小型各2サイズと標準(通常サイズ)の5サイズに加え、大型1サイズ、小型2サイズが製作され、第一次と第二次を併せて計8サイズのキーボードが製作されたことになる。さらに、第二次試作では、サイズの追加に加えて、きょう体形状、テンキーの付加、キートップ形状、キー配列、赤外線リモコン装置の導入、そしてキー押下時間パラメータ設定ソフトウェアの開発など、多くの改善が施された。

第3章

上記8サイズのキーボードを用いた試用評価の結果が述べられる。本評価では、標準キーボードとは異なる形状のキーボードによって操作性が改善されるかどうかを評価の目的とした。特殊キーボードを必要とする肢体不自由者は二つのグループに分けることができる。一つは、標準キーボードを何とか操作できるものの誤押下などの発生で的確な操作ができない、一部の頸随損傷者や脳血管障害による片麻痺者などのグループである。もう一つは、より重度な肢体不自由により、これまで標準キーボードの操作が困難であった脳性マヒや進行性の神経筋疾患による肢体不自由者などのグループである。

本評価では、それぞれの障害内容に適した特殊キーボードを選択することによりコンピュータの操作性が向上するという結果を得た。このことは、すべての肢体不自由者に利用可能な単一のキーボードを開発することは非常に難しいが、サイズをはじめ、その特徴を数種類に分類した個別のキーボードを準備することにより、これまで標準キーボードの操作が困難あるいは不可能であった肢体不自由者も代替入力デバイスとして有効に操作できることが示されたものと考えられる。

第4章

上記の第二次試作キーボードの評価結果に基づき実施した最終試作の概要が述べられる。評価結果からは、大型、小型それぞれ1サイズといった機種を絞り込むのではなく、ユーザーの障害内容に合わせたサイズが選択できるように、8サイズすべてを製作した。これによって、今後各サイズのキーボードを製品化あるいは個人の注文に応じて個別に生産する場合にも、中枢となる回路や基板は開発済みであり、生産コストの低下が図れるものと考える。平成10年春には、山陽電子工業(株)が、本キーボードを製品化する予定である。

なお、第一次試作のための仕様の検討については、本調査研究報告書シリーズNo.7『重度障害者の職域拡大のための総合的就労支援技術の開発 -その2-』を参照されたい。また、上記特別研究では、本キーボードの他に、視覚障害者用Windows画面読み上げソフトウェアと下肢障害者用オフィス車いすも開発しており、それらについては、同じく調査研究報告書No.20『重度障害者の職域拡大のための総合的就労支援技術の開発 -その3-』及びNo.24『重度障害者の職域拡大のための総合的就労支援技術の開発 -その5-』を参照いただきたい。

目次

  • 第1章 開発の目的と経過
  • 第2章 第二次試作キーボードの概要
  • 第3章 二次試作の評価
  • 第4章 第三次試作キーボードの概要
  • 文献リスト

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