調査研究報告書 No.53
知的障害者の就業と生活を支える地域支援ネットワークの構築に向けて
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発行年月
2002年12月
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職業リハビリテーション活動による課題領域の体系図・ICFによる課題領域の体系図 該当項目
執筆者(執筆順)
執筆者 |
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田中 敦士 (琉球大学教育学部:前障害者職業総合センター) |
根本真理子 (渋谷公共職業安定所:前障害者職業センター) |
陳 麗婷 (淑徳大学大学院 博士後期課程) |
小野 ルミ (福岡県障害者雇用支援センター) |
佐野 和明 (若竹障害者就業生活支援センター) |
角谷 勝己 (名古屋市障害者雇用支援センター) |
木村 俊彦 (キャベツの会) |
大形 利裕 (NPO法人 日本就労支援センター) |
城田 晴夫 (ほずみクリニック) |
柴田 珠里 (仲町台発達障害センター) |
松為 信雄 (障害者職業総合センター) |
(目的・方法)
知的障害者の雇用支援は就業面と生活面の一体的支援が不可欠である。そのためには、就職以前・就職時・就職以後の各時点に応じて教育・労働・福祉機関等の様々な分野の有機的な連携が必要となり、さらには、市町村等公共機関や当事者・事業主・労働者の各団体あるいはボランティアや民間組織などの支援も必要とされる。本研究は、こうした多様な支援機関や組織による地域ネットワークの構築に関するノウハウや手立てについて、事例を踏まえて明らかにすることを目的としている。
実施は、①訪問調査と②ヒアリングを中心に行なうとともに、各種の学会や研究会等への参加をとおして、地域ネットワークの実情に関する情報を収集した。訪問調査では、「障害者就業・生活支援の拠点づくり」試行的事業を受託した拠点施設10ヶ所と、その拠点施設のある都道府県の地域障害者職業センターに対して構造化面接を行なった。また、ヒアリングは、就労や生活支援などの援助に専門性と米国のリハビリテーションカウンセラー事情について、2名の専門家から行なった。
(結果の概要)
4部で合計14章からなる研究報告書の概要は、以下のとおりである。
第Ⅰ部
訪問調査の結果から、就業と生活支援を一体的に行なうためのノウハウの収集と分析を行った。第1章で訪問調査の目的や方法を、第2章では拠点施設での結果を、第3章では地域障害者職業センターでの結果をまとめた。第4章では、これらを踏まえて、就労に関わる支援者が就業と生活支援を一体的に行なうためのノウハウを「ヒント集」として要約し、また、地域の社会資源情報を把握しているキーパーソンとの連携を促進するために、「人的資源ノートブック」を試作した。
第Ⅱ部
就業と生活面の一体的支援を進める上での考え方や、地域支援体制の構築に向けた取り組みについて紹介した。第5章では施設設置型の障害者雇用支援センターの実践を踏まえたネットワーク論、第6章では「ネットワーク」の用語に感じる期待と不安の背景、第7章では支援ネットワークの構築と「IT」の活用について、第8章では地方自治体の市役所を実習先とした就労支援の実践活動、第9章ではマーケティングの視点を踏まえた福祉的就労と雇用との関連性を論じた。
第Ⅲ部
地域支援ネットワークの構築に向けたジョブコーチの活動について、米国の「援助つき雇用」とそこに従事するジョブコーチの職務からまとめた。第10章では就労や生活支援などの援助についての専門性について、第11章では米国のリハビリテーションカウンセラー事情についてまとめた。
第Ⅳ部
地域支援ネットワークの構築に向けたケアマネジメントについて、その考え方や手法を職業リハビリテーション領域で活用するための方策についてまとめた。第12章ではわが国のケアマネジメントの動向について概説し、第13章では障害者ケアマネジメントの技術的な方法についてまとめた。最期の第14章では、就労(生活)支援に焦点を当てた「ケアマネジメント」と、「ジョブコーチ」の活動は地域支援ネットワークの構築と維持を包括しており、今後の就労(生活)支援ではこれらの方法論を踏まえた地域支援ネットワークの構築が不可欠であることを指摘した。
目次
- 序章 問題の所在と本書の構成
- 第Ⅰ部 就業・生活面の一体的支援の先進地域からノウハウを学ぶ
- 第1章 目的と方法
- 第2章 拠点施設における地域支援体制
- 第3章 地域障害者職業センターにおける地域支援体制
- 第4章 地域支援の方法と「人的資源ノートブック」
- 第Ⅱ部 多様な地域支援ネットワークからアイディアを探る
- 第5章 施設設置型雇用支援センターの改革に向けて
- 第6章 「はたらく くらし」を支えるということ
- 第7章 ITを活用して
- 第8章 重度障害者の職場参加へ向けて
- 第9章 障害者就労支援はマーケティング—授産施設から就労支援を考える
- 第Ⅲ部 地域支援ネットワークの構築に向けての援助付き雇用とジョブコーチ
- 第10章 援助の専門性
- 第11章 米国のリハビリテーショカウンセラーとは—地域に根ざしたサービスのハブとして
- 第Ⅳ部 地域支援ネットワークの構築に向けてのケアマネジメント
- 第12章 わが国におけるケアマネジメントの動向
- 第13章 ケアマネジメントの技術
- 第14章 地域支援ネットワークの構築
- 資料 障害者就業・生活支援事業概要
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